アイス、クレープ、パン…兵庫・姫路発「別腹」ブランド全国へ Z世代の双子兄弟「映える」経営、徹底したSNS戦略

別腹グループを展開する岡本拓也さん(左)と直也さん=姫路市本町

 「○○は別腹」というお店を目にしたことはありませんか? 基幹業態の「アイスは別腹」は姫路城のお膝元、本町商店街で2021年11月に1号店がオープンして以来、兵庫県内は明石・魚の棚商店街や神戸・垂水駅前、県外は東京・渋谷にまで店舗網を拡大。「クレープは別腹」「パンは別腹」などへ業態も広げた。事業を手がける双子の兄弟、岡本拓也さん(24)と直也さん(24)に業容拡大の秘けつを聞いた。(井上 駿)

 -別腹グループとして現在の店舗展開は。

 創業者で弟の直也さん「(基幹業態の)『アイスは別腹』は10店舗に達しました。県内は姫路のほかに神戸・垂水と三田、明石。県外は東京・渋谷や大阪、静岡、福島にも出店しました。アイスのほかに、パンとサンドイッチ、ドーナツの業態でも計3店を展開。イベントに出店できるジェラートのキッチンカーも導入しました」

 兄の拓也さん「私自身もクレープ2店舗と、ワッフルとクロワッサンを掛け合わせた『クロッフル』の1店舗を運営しています。クレープのキッチンカーも取り入れました」

 -「アイスは別腹」の1号店を出した経緯は。

 弟直也さん「大学で食や健康について学んでいた時にコロナ禍が始まり、授業がなくなりました。時間ができたので半年かけて準備し、21年春に淡路島でフルーツサンドとアイスの店を出しました。ところが緊急事態宣言もあって振るわず、半年で撤退。今度は、東京や大阪ではやり始めていた夜間にパフェを提供する業態『夜パフェ』に商機を見いだし、『アイスは別腹』を地元・姫路に出しました。店名は若者に刺さり、『別腹だから食べてもいいか』と誘惑に乗ってほしいとの思いで付けました」

 兄拓也さん「事業を手がける親の影響もあり、私たち兄弟2人には『いつか経営者になりたい』との夢がありました。僕は学習塾を開くなどしていた中、弟が姫路で店を立ち上げる運びとなり、手伝うことにしました」

 -Z世代と呼ばれる10~20代に照準を合わせ、アイスの盛り付けや店内装飾で「写真映え」を意識した。

 弟直也さん「淡路での経験を通して『映えるスイーツ』に手応えを感じました。(ハロウィーンなどの装飾と一緒に)パフェを撮影してもらえる『映えスポット』を店内に設けています。Z世代はインスタグラムやTikTok(ティックトック)などSNS(交流サイト)で発信し、情報を拡散させる力も強い。お客さんの投稿から客層が広がっていったので、広告費は一切かかっていません」

 兄拓也さん「写真映えするように、例えば盛り付けでは原色系の明るい色の果物を多用しています」

 -姫路の飲食店を紹介するインスタグラムのアカウント「ヒメグル」はフォロワーが3万を超す。

 兄拓也さん「弟が淡路に出店する時に、『いつか弟は地元の姫路に帰ってくるだろうから、先にファンを増やしておこう』と、アカウントを作ったんです。ローカルな情報に特化したウェブサイトはあったけどインスタはなかった。ちなみに、兵庫県内のお店を紹介する『ヒヨグル』も手がけていますよ」

 「姫路の店を紹介する活動には市場調査としての側面もあり、その中で気付かされたのが、若者向けの店の少なさです。『大阪にあって姫路にないもの』を取り入れれば売れるんちゃうか、と思いました」

 -「アイスは別腹」はなぜヒットしたのでしょう?

 弟直也さん「話題性を狙って『逆張り』したことが成功しました。1号店を出した21年11月は、コロナ禍によって飲食店が夜の営業を控え、新たな出店も低調でした。そんな中で『テイクアウト専門店』として出店し、あえて夜間に営業しました。しかも、アイスなのにオープンした時期は冬でした。駅前ではないけれど、お城に近いので観光客も来てくれます」

 -若者たちのトレンドを捉えたり、心をつかんだりするコツは。

 弟直也さん「インスタとティックトックからX(旧ツイッター)へ情報が流れるのがバズる(広く話題が拡散される)流れです。流行の起点となることが多いインスタとティックトックに、情報の収集と発信では重きを置いています」

 -今後の夢は。

 弟直也さん「まずは『アイスは別腹』を全国で出店する。1号店には『姫路城ソフト』など観光客向けメニューもあるので、観光客を引きつける店に育てたい。構想段階ですが、ラーメン店も出したい」

 兄拓也さん「弟に負けないよう、『クレープは別腹』を全国で100店出したい。また、食のフェス(祭典)を開いて姫路を盛り上げられたら、と思います」

【兄の岡本拓也さん】姫路東高から県立大工学部に進学。在学中に中高生向けの学習塾を立ち上げた。弟が姫路に出店すると知り、手伝うように。「情熱のかけ方がすごく、運もある」と弟に一目置く。 【弟の岡本直也さん】琴丘高サッカー部時代に健康や栄養に興味を持ち、大手前大の健康栄養学部に進学し、管理栄養士の資格を取得。兄を「冷徹だけど先を見通す力がある」と慕う。

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