ドライバーズタイトルはどちらの手に?トヨタ、WRC初開催のCERにフルメンバーで挑む

 10月26日(木)から29日(日)にかけて開催されるWRC世界ラリー選手権第12戦『セントラル・ヨーロピアン・ラリー(CER)』はドイツ、チェコ、オーストリアの3カ国にまたがって行われる初開催のラリーだ。既報のとおり、このCERに向けてTOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム(TGR-WRT)は4台のトヨタGRヤリス・ラリー1をエントリーさせた。

 4台のうち3台のワークスカーには、69号車にカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組、33号車にエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組、17号車にはセバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組が搭乗する。非ワークスノミネートの18号車、4台目のGRヤリスを駆るのは勝田貴元/アーロン・ジョンストン組だ。

■ドライバーズタイトルはロバンペラとエバンスの一騎打ち

 前戦ラリー・チリで2021年、22年に続き3年連続となるマニュファクチャラーズタイトルを獲得したTGR-WRT。迎える“未知”の第12戦CER、チームの目標は2023年シーズン9度の優勝だ。

 シーズン残り2戦となった段階で、ドライバーズタイトルの行方はランキング首位のロバンペラと、同2位につけているエバンスのふたりによる争いとなっている。

 第11戦ラリー・チリ終了時点でのロバンペラとエバンスの差は31ポイントだ。1戦で獲得可能な最大ポイントは30であり、残り2戦で獲得可能なポイントは60となることから、今回のCERでロバンペラがエバンスを上回る順位でフィニッシュした場合、最終戦を待たずしてロバンペラがタイトル防衛に成功し、2年連続のチャンピオンとなることが確定する。一方、今大会でエバンスがロバンペラより多くのポイントを獲得した場合、“最終決戦”は11月のラリージャパンに持ち越されることとなる。

 レギュラードライバー2名がタイトル争いを演じる一方、過去8度のチャンピオン経験を持つオジエもラインアップに復帰する。ターマックラリーを得意とし、初開催のラリーでも経験に裏打ちされた強さを発揮することが期待されるベテランは、CERで2023年シーズン4回目の優勝を狙っている。また、TGR WRCチャレンジプログラムからの出走となる勝田はCERをホームイベントであるラリージャパンの“前哨戦”と位置づけ、大きなモチベーションを持って初開催のターマック(舗装路)イベントに臨む。

 2023年シーズンのWRCは5月から10月にかけてグラベル(未舗装路)イベントが7戦続いたため、ターマックラリーは4月に行われた第4戦クロアチア以来とひさびさの実施となる。今回WRC初開催となるCERは、半世紀の歴史を持つシリーズにおいて史上初めて3カ国のステージを走行する画期的な一戦だ。

 ドイツでのWRC開催は2019年のラリー・ドイチェランド以来であり、オーストリアでの開催はWRC創立初年度の1973年以来、実に50年ぶり。さらにチェコでのWRCは今回が初となっている。

談笑するTGR-WRTのドライバーたち。左から勝田貴元、カッレ・ロバンペラ、エルフィン・エバンス

■「自由かつフェアな戦いを」とラトバラ代表

 ラリーの中心となるサービスパークが置かれるのはドイツ南東部の都市パッサウ。25日(水)のシェイクダウンはパッサウ近郊のティットリンクで行われる予定だ。競技がスタートするのは26日(木)からで、この日はチェコの首都プラハで昼過ぎからセレモニアルスタートが行われる。その後プラハ郊外の競馬場ヴェルカー・チュクレでSS1としてスーパーSSが実施された、さらに夕方にはSS2としてクラトヴィー周辺のサーキットでもう1本のスーパーSSが予定されている。

 27日(金)のデイ2はすべてのステージがチェコ国内で行われ、プラチャティツェに設定されるタイヤフィッティングゾーンを挟んで3本のステージを2回ずつ走行する。この6本のステージの合計距離は121.8kmとなっており、デイ2が今回のラリーでは最長の一日に。28日(土)のデイ3はサービスパークを中心に午前中はオーストリアで2本、ドイツで1本のステージが行われる。その後ミッドデイサービスを挟み、午後に行われるのは午前のステージ3本の再走ステージだ。

 最終日となる29日(日)のデイ4はサービスパークを起点にドイツで1本、オーストリアで1本のステージが行われ、ミッドデイサービスを挟まずにその2本を再走。4本のステージを走行後、サービスパークが置かれるパッサウでの表彰式でフィナーレを迎えることとなる。3カ国にまたがる4日間のラリーは計18本、距離にして310.01kmのSSで争われ、リエゾン(移動区間)を含めた走行距離は都合1690.70kmとなる。

 TGR-WRTを率いるヤリ-マティ・ラトバラは、初開催となるCERを前に次のようにコメントしている。

「最後の2戦を前にマニュファクチャラーズタイトルを獲得できたのは素晴らしいことだし、これからはカッレ(・ロバンペラ)とエルフィン(・エバンス)によるドライバーズタイトル争いに焦点が当たることになる。彼らが自由かつフェアな戦いを展開し、ベストなドライバーが勝利を獲得できるように、我々はふたりを全面的にサポートするつもりだ」

「今回はセバスチャン(・オジエ)がラインアップに復帰するが、彼の勝利への情熱はこれまでと変わらず大きいだろうし、タカ(勝田貴元)はチャンピオンシップのために走るというプレッシャーから解放されたので、さらなる表彰台獲得を目指してこれからの2戦を戦ってくれることを期待している」

「CERは誰にとっても初めてのラリーだし、この時期の道はウエット路面だったり、ぬかるんでいたり、落ち葉が多かったりと非常に厳しくなることが予想される。ドライバーにとっては簡単なことではないが、我々のクルマはこれまでそのようなコンディションでも非常に強かった。彼らが攻めの走りをできるように勇気づけたいと思う」

ドライバーズランキングをリードするカッレ・ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2023年WRC第11戦チリ

© 株式会社三栄