勝海舟ら筆跡から人物像独自診断 吉兆庵美術館「文字は人なり」展

「貴族のようなおっとりとした気質」をうかがわせるという勝海舟の書

 勝海舟、与謝野晶子、三島由紀夫ら歴史に名を残す人々の筆跡に着目した展示が、岡山市北区幸町の岡山・吉兆庵美術館で開かれている。「文字は人なり」と題し彼らの直筆を学芸員が独自に筆跡診断。浮かび上がった“人物像”は、あなたのイメージ通り?それとも―。

 同館が所蔵する政治家、芸術家、小説家、詩人ら35人の書や手紙、俳句約60点をピックアップし、文字から想像される性格や好みなどを説明している。

 まずは幕末、明治に活躍した勝海舟。江戸城無血開城を成し遂げるなど意志の強い印象を受けるが、縦長の文字から「貴族のようなおっとりとした気質」がうかがえるという。

 歌人・与謝野晶子はもっと意外かもしれない。情熱的な恋愛歌を多く残しているが、はねが弱くはらいが短い文字で「切り替えが早い。感情に流されず実務的」との分析だ。

 装飾文字を使っていて「おしゃれでダンディー」と評されたのは作家の夏目漱石と三島由紀夫。漱石は英留学中に妻に宛てた手紙の「大丈夫」の「大」、三島は「神」としたためた書に本来はない「、」を加えている。二人とも線と線のつながりが細く「優美なものを好み繊細」とも。

 初代首相の伊藤博文は名前の「文」のはらいが大きな弧を描き「並では収まらない大物」。版画家・棟方志功はへんとつくりの間隔が広く「社交的で包容力がある」としている。恋多き人生を送ったとされる詩人・北原白秋と作家・谷崎潤一郎は改行が早かったり、字の大きさが大小に乱れたりして「飽きっぽい」らしい。

 岡田直子学芸員は「書家ではない人が書いた字には性格がにじみ出ていると考えられる。抱いていたイメージとの一致や違いを楽しみながら鑑賞してほしい」としている。

 11月12日まで。午前10時~午後5時。入館料は一般600円、小中学生300円、65歳以上480円。同6日は休館。問い合わせは同館(086―364―1005)。

本来はない「、」を加え「おしゃれ」と診断された三島由紀夫の書
はらいが大きな弧を描き「大物」と分析された伊藤博文の書の一部
「社交的で包容力がある」と評された棟方志功の書

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