内戦、大地震…混乱のシリア、孤児に住まいと教育を 神戸の団体、施設建設へ寄付募る「笑顔取り戻したい」

シリアとの国境付近で、難民キャンプの子どもたちに囲まれる佐々木美和さん=8月、レバノン(神戸国際支縁機構提供)

 今年2月に大地震に見舞われたシリア北部アレッポに孤児施設を建設しようと、一般社団法人「神戸国際支縁機構」(神戸市垂水区)が寄付金を募っている。シリアでは2011年から内戦が続き、戦禍に災害が追い打ちをかけた。現地を訪れた同機構のスタッフは「路上での暮らしを強いられている孤児もいる」として対応を急ぐ。(上田勇紀)

 同機構は牧師で代表の岩村義雄さん(74)が01年、米同時多発テロをきっかけに立ち上げた。世界各地で難民支援に取り組み、東日本大震災の被災地では農作業を通じて住民と交流を深めている。

 16年以降に力を入れてきたのが、ベトナムやガーナなど世界10カ所以上での孤児施設建設だ。市民からの寄付金を基に、建設費約100万円で孤児数人が生活できる施設を造ってきた。

 シリアのアレッポにも18年、幼稚園跡に孤児施設を整備。だが、内戦による爆撃や銃撃が激しさを増し、世話役を担ったシリア人女性が首都ダマスカスへの避難を余儀なくされた。施設も被害を受け、わずか4カ月で閉鎖に追い込まれた。 ### ■68人入居予定

 トルコ・シリア大地震は2月6日、トルコ南部を震源に発生した。午前4時17分(日本時間同10時17分)ごろマグニチュード(M)7.8、午後1時24分ごろM7.5の地震が起き、トルコ国境に近いアレッポは大きな被害を受けた。

 トルコ側で5万700人超、シリア側で6700人以上が死亡したと伝わるが、政情不安も影響し、シリアへの支援の手は行き渡っていない。

 「孤児70人が暮らせる施設を造ってほしい」

 つながりのあるシリア正教会から、岩村さんに打診があったのは今夏のこと。

 8月、岩村さんと事務局長の佐々木美和さん(31)は飛行機を乗り継ぎ、50時間かけてアレッポへ向かった。

 現地入りした2人は、多くの石造建築が崩れているのを目にしたという。「旧市街地を中心に、爆撃で焼け焦げた建物が、地震でさらに被害を受けていた」と佐々木さんは話す。

 孤児施設の建設候補地は、アレッポ中心部から2~3キロ離れた300メートル四方の空き地。学校や病院に近く、地震や内戦で親を失った10代以下の68人が入居を予定する。シリア人夫婦が世話役を引き受け、食事を提供する計画だ。

 大規模な施設ゆえ、建設には約800万円が必要だが、まだ半分ほどしか集まっていないという。「孤児たちのためにも、年内の着工を目指したい」と佐々木さん。施設が完成した後も、寄付を基に孤児1人当たり月3千円を送り、教育支援に充てたい考えだ。 ### ■少女との出会い

 滞在中、岩村さんらはシリアの子どもたちの厳しい境遇に触れ、何度も心を痛めた。

 隣国レバノンとの国境付近では、内戦で家を失い、シリアから逃れた人々が暮らす難民キャンプがあった。2人が訪れると、外国人が珍しいのか、粗末な小屋から子どもたちが次々と顔を出したという。

 そこで、12歳の少女と出会った。

 人懐こい笑顔を見せるが、学校に通わず、農作業に従事して1日2ドルを稼いでいた。少女の家族は、母ときょうだい数人という。

 「自分より家族のことを気にかけていた。けれど、彼女の将来のことは誰も考えていない。これからどうなるのか心配になった」と佐々木さんは言う。

 同機構は、孤児施設の建設に限らず、シリアの子どもたちへの支援の必要性を感じている。

 岩村さんは少女の顔を思い浮かべ、「公的支援から取りこぼされた子どもたちの笑顔を取り戻したい」と力強く語った。

 活動の詳細などは同機構の国際部「カヨ子基金」のホームページで確認できる。佐々木さんTEL080.4267.4820

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