スーパー耐久ST-Qクラスでさらなる進化続けるBRZ CNF Concept。『NA版アンチラグ』とは!?

 10月21〜22日、岡山県の岡山国際サーキットで開催されるENEOS スーパー耐久シリーズ2023 Supported by BRIDGESTONE第6戦『スーパー耐久レースin岡山』。このレースにのST-Qクラスに参戦するTeam SDA Engineering BRZ CNF Conceptについて、スバルは第6戦岡山に向けた車両アップデート内容を発表したが、非常に興味深いアップデートも行われている。

 Team SDA Engineering BRZ CNF Conceptは、スーパー耐久機構(S.T.O)が認めた開発車両が参加できるST-Qクラスに2022年から参戦。カーボンニュートラルフューエルを使いながら、これまでも非常に興味深いさまざまなトライが行われており、市販のクルマづくりに活きる挑戦が続けられている。

 今回の第6戦岡山のST-Qクラスは、ライバルでもあるORC ROOKIE GR86 CNF Conceptが“お休み”ではあるものの、MAZDA SPIRIT RACINGが走らせる2台が速さを増している状況。Team SDA Engineering BRZ CNF Conceptもさまざまな改良を行い改善を進めてきたが、スバルから第6戦岡山の改良点がメディアに向けて公表された。

 改良点は多岐に渡り、ブレーキABSの制御変更、クラッチのマスターシリンダーのフルードキャビテーション対策、さらにレーシングカーでの活用が進められているアイサイトのフラッグ認識ソフトの修正、ショックアブソーバーの調整段数細分化、フロントアンダーパネルを装着するなど空力改良が行われている。

 さらに非常に興味深い内容として記されていたのは、エンジン制御についてだ。『NA版アンチラグのトライ』という内容が書かれている。通常、アンチラグシステムと言えば、ターボ車においてターボラグを抑え、レスポンスを向上させるためのものだ。しかし、BRZはNA=自然吸気エンジン。いったいどんな機構なのか、スバル研究実験センター長で、Team SDA Engineeringを率いる本井雅人監督に聞いた。

「コーナーのエイペックスからの立ち上がりを狙った制御で、そのレスポンスをできるだけ上げたいという狙いのものです」と本井監督。

「スロットルを開くと、燃料を吸って圧縮して……という行程があるので、その分必ず遅れてしまいます。そこで、パーシャルのところで事前にスロットルを開け、トルクが出ないようにリタード(点火時期を遅らせること)し、その点火だけで加速していくようなものです」

 このNA版アンチラグはECUの制御で行うもので、排気温度が上がるなどのデメリットはあるものの、十分に武器として使用できるところにあるという。立ち上がりの加速レスポンス向上に繋がれば、レースでは強みになるはずだ。

「まだ適合が煮詰められておらず、良いところと悪いところがありました。そのため予選からは使用していません」というが、プロドライバーからは「スーパーGTでも欲しいくらい」と非常に高い評価があったとのこと。ただ、社員ドライバーにとってはまだ「レスポンスが良すぎる」状況で、そのアジャストを行うことで、誰もが気持ち良く使えることを目指していく。

 そのNA版アンチラグをトライした井口卓人は「ものすごく良かったです」と高評価を下した。「もう少し合わせ込みなどテストが必要ですけど、パッと乗った瞬間的な加速については、スーパーGTでも使っているアンチラグのような感覚でした。踏んだときのレスポンスがすごく良かったです」と井口。

 こういった開発が行えるのもST-Qクラスならでは。非常にユニークな試みで、アクセルレスポンスの良さはドライビングの気持ち良さにも繋がる。実用に至ったときには、ぜひとも市販車でも試してみたい武器だろう。

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