吉田屋社長「慢心、油断」駅弁集団食中毒で謝罪 会見まで1カ月以上「被害者対応を優先」

会見の最後に再度謝罪する吉田社長=21日午前、八戸市内

 青森県八戸市の駅弁製造・販売業「吉田屋」の駅弁による集団食中毒で、同社の吉田広城社長(55)は21日、八戸市内で記者会見を開いた。「全国で健康被害に遭われた皆さまやそのご家族に、つらい、苦しい思いをさせてしまい、本当に申し訳ない」と謝罪。外部に製造を委託した米飯の管理が不適切だったとの八戸市保健所の指摘に対し、「経営者として慢心と油断があったと痛感している」と語った。

 9月16日の食中毒発生後、吉田社長が公の場で説明するのは初めて。1カ月以上経過したことについては、事態の全容把握や再発防止策、被害者への対応を優先させたと説明し、今月18日付で同保健所に改善報告書を提出したと明らかにした。

 吉田社長によると、9月は全国の小売店などで開かれる駅弁販売の催事のピークで、3連休に向けて同月15、16日に同社が製造した駅弁は平日の3倍の1日当たり約1万8千個だった。

 14日夜に委託米飯が届いた際、温度を測定せず、盛り付け時に担当者が高温に気づき、予定になかった冷却作業を行ったと経緯を説明。吉田社長は「不適切な温度管理では菌が増殖する恐れがあることを十分理解していなかった当社の責任は大きい」と反省した。

 再発防止のため「今後、外部のご飯は二度と使わない」と強調し、製造個数を1日1万5千個以下に制限する方針を示した。予定外の作業や臨時従業員への健康管理を行った記録も確実に取るとした。

 商品回収の連絡が一部の販売店に届かず、16日に約3300個販売されたことには、「きめ細かな連絡網がなかった。しっかりとした緊急連絡網を組みたい」と語った。

 被害者には販売店の協力を得ながら返金処理を進めていると説明。営業休止が1カ月以上続くが「社員の給料カットはせず、一丸となって原因究明と再発防止に当たっている」と述べ、自身の経営責任については「市民やお客さまの信用を得ることが私の責任」と辞任を否定した。

 同保健所によると、集団食中毒は9月15、16日に吉田屋が製造した21種類の駅弁が原因で、29都道府県の521人が体調不良を訴えた。患者などから黄色ブドウ球菌とセレウス菌が検出され、同保健所は9月23日に食中毒と断定し、同社を営業禁止処分とした。

© 株式会社東奥日報社