【MLB エンゼルス大谷翔平 シーズン総括】日本人選手初の本塁打王に、確実視される2度目のMVP それでも遠かったポストシーズン

■二刀流の真骨頂を見せたその日から負傷に悩まされ……

またしても歴史に残るシーズンを過ごした。FA前最後のシーズンとなった今季は、ケガのリスクを恐れずにWBC日本代表に参加。大会MVPに輝く活躍で日本代表に3度目の優勝をもたらした。決勝のアメリカ戦、最終回の同僚マイク・トラウトとの対決は、今後も野球界で語り継がれるであろう名シーンとなった。

WBC決勝からわずか9日後の3月30日には、開幕投手兼3番打者としてレギュラシーズン開幕戦に出場。逆転負けで勝ち星こそつかなかったが、初戦から6回無失点という好投を披露してみせた。6月に入ると打撃面でキャリア最高のパフォーマンスを披露し、球団新記録となる月間15本塁打で月間MVPを受賞すると、7月にも9本塁打の活躍で2カ月連続の月間MVPに輝いた。

7月には、今季の大谷のすごみを象徴するような日もあった。7月27日のタイガース戦、ダブルヘッダー1試合目に先発登板し初完封を記録すると、同日の2試合目には打者として2本塁打。まさに二刀流の真骨頂という1日だったが、この試合で2本目の本塁打を放った際に異変が生じて途中交代。これ以降、度重なるけいれんに苦しめられるようになった。

8月23日のレッズ戦に先発登板したが2回途中で降板。その後、右ヒジ靭帯の損傷のため今季は投手としてプレーしないことが発表された。それでも野手として出場を続けていたが、9月4日の試合前に練習で脇腹を痛め、復帰を目指すも同16日に故障者リスト入りし完全にシーズンを終えた。同19日には右ヒジの手術を受け、来季は打者のみの出場、二刀流としては2025年シーズンからの復帰が見込まれる。
 

■MLB史に残る存在ながらポストシーズンは未経験

今季の大谷の投手としてのパフォーマンスは、昨季に比べて低下していた。奪三振力や被打率は変わらず高水準だったが、与四球率が6.7%から10.4%、被本塁打率が2.1%から3.4%と、制球面と被弾割合が悪化。故障の影響もあったのかもしれない。それでも規定投球回未到達ながら防御率3.14で10勝を記録するなど、十分にエースと言える投球内容だった。

一方で打者としてはキャリアハイの出来だった。日本人初の本塁打王に加え、出塁率、長打率、OPSでもリーグ最高の値をマークした。2度目のシルバースラッガー賞はもちろん、各リーグで1人ずつしか選ばれないハンク・アーロン賞の受賞も現実的だ。打者としては最高の栄誉であり、受賞すれば本塁打王と同様、日本人選手初の快挙となる。

投打の活躍により2度目のMVPも確実視されており、残る問題は満票受賞できるかどうかだ。しかし、これほどの活躍を見せた大谷に、またしてもポストシーズンでのプレー機会は訪れなかった。エンゼルスは大谷のラストイヤーになる可能性があった今季に懸け、ポストシーズン進出の可能性が低くなっていたトレードデッドラインでルーカス・ジオリトらを補強。しかし、今季多発していた主力の故障者続出に歯止めがきかず、補強した選手らもうまく機能しなかった。結局エンゼルスは地区4位に終わり、8年連続の負け越しが決まった。

今オフにFAになる大谷は、MLB史上最高額のFA契約を手にする可能性がある。故障により来季は打者一本になるが、それでもなお4億ドル(約599億円)規模の契約を得られるかもしれない。エンゼルス残留なのか他球団移籍になるのかはまだわからないが、大谷が勝利を渇望しているのは間違いないだろう。渡米から6シーズン経つが、大谷はまだMLBでのシャンパンファイトを味わっていない。

MLBの歴史に残るほどのスター選手が、全盛期にポストシーズンに出られないというのはもったいない話だ。どこでプレーするにせよ、来季の大谷が10月に熱い戦いを繰り広げていることに期待したい。

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