九州高校野球 異色の経歴を持つ多田龍ノ介(大分舞鶴2年)がセンバツ出場に挑む 【大分県】

第153回九州地区高校野球大会に出場する大分舞鶴に、異色の経歴を持つ選手がいる。同大会県予選では不調から脱せず、決勝では9番右翼で起用されるも途中交代となった多田龍ノ介(2年)だが、「九州の強豪校がそろい、センバツ甲子園の参考資料となる大会。しっかりと準備をしてベストの状態に戻し、ベスト4を目指したい」と復調を誓った。

物心つく前から水泳教室に通い、中学ではバタフライの選手として九州大会に出場するなど、多田は県内で名をはせた水泳選手だった。高校でも活躍が期待されたが、中学3年の夏に肘を故障し、記録が伸びなくなった。それでもいくつかの高校から誘いがあったが、「他の競技で新たな挑戦をしようと思った。やるからには高いレベルの環境に飛び込もうと思った」と、野球をするために大分舞鶴を受験する。

長打力のある多田龍ノ介

多田の野球歴は、小学生の頃に2年間プレーした程度。「通用するか分からなかったが、挑戦することに意義がある」と、中学3年の秋から、硬式球に慣れるために中学3年生を対象にした硬式野球教室に通い、下地をつくった。高校入学当初は周りのレベルの高さに面食らうも、水泳で鍛えた筋力と肩甲骨の可動域の広さでパワフルな打撃が開花し、1年秋の県選手権にベンチ入りするまでになった。しかし、その年の冬に新型コロナウイルスの影響で入院を強いられ、3カ月休部する。急激に成長を遂げた分、失うものも多かったが、挑戦することをやめなかった。

新チームとなった今年7月からは体力が戻り、秋の県選手権、九州地区県予選では先発メンバーに名を連ね、2度の準優勝を経験した。最近は打撃の調子は悪くないが、守備、走塁で伸び悩みを感じている。河室聖司監督は「パワーがあり、当たれば飛ばす力はチームの1、2位を争うが、他が中学レベル。経験がないので仕方ないが、いい経験を積んでいるので、その中からいろんなことを吸収すればいい」と見守る。多田は「仲間の野球に取り組む意識は高く、アドバイスもくれる。団体競技の素晴らしさを感じている。甲子園に行きたい気持ちは同じ。九州大会で結果を出したい」と目標を定めた。豪快なバッティングに迷いはない。

甲子園出場が明確な目標となった

(柚野真也)

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