「たとえあなたを忘れても」主演の堀田真由が、美しくもはかないラブストーリーの魅力を語る。役者の道に進むことを決めた“青春の記憶”も明らかに

ABCテレビが4月から新設し、日曜夜10時の全国ネット連続ドラマ枠の第3弾としていよいよ10月22日から放送がスタートする新ドラマ「たとえあなたを忘れても」。脚本家・浅野妙子さんが手掛ける本作は、夢を失った女性と、記憶を失った男性が奏でる切なくも美しいヒューマンラブストーリーです。

本作で主演を務めるのは、地上波連続ドラマ初主演となる堀田真由さん。浅野さんが手掛ける作品の魅力を丁寧に言葉に紡ぎながらも、4度目の共演になる萩原利久さんには「安心感があります」と恥ずかしそうに笑顔を見せます。主演作への意気込みや役作りの中での葛藤、さらに学生時代の堀田さんの心を動かした“記憶”について、たっぷりとお話を伺いました。

――地上波連続ドラマ初主演になりますが、お話が来た時には率直にどんなことを感じましたか?

「やりたいと思ってできるものではないので、『主演』と言ってくださる気持ちがすごくうれしかったです。今回はラブストーリーということで、夢に破れたりと現実でも誰かに起きているような等身大のキャラクターのラブストーリーは初めてで。これまでのラブストーリーは『こうなりたい』という目的や、『彼女はどういう人ですか?』と聞かれた時に一言で必ず答えられるようなキャラクターが多かったんです。自分でも、その役が悩んでいても心(しん)が通っていて、お芝居を通して答えを出す方がやりやすかったのですが、今回演じる河野美璃は自分にはない感情を持っているキャラクターになると思ったので、いろいろな人が想像できるからこそ、すごく無限大な可能性を持っている女の子だと思っています。何にでもなれる要素と、その選択肢がある役は初めてなので、『このキャラクターを私が愛せるのかな。もっとよくできるかな』というところで、実は不安に感じるところもありました」

――そんな中でも、今作のキーパーソンでもある青木空を演じる萩原さんとは4度目の共演になりますね。情報解禁時の「戦友」という言葉が印象的です。

「10代の時に『あの日のオルガン』(2019年)という作品で初めてお会いして、その時は作品の中でも全く関わりがなかったのですが、それから『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(日本テレビ系)で共演して、その時は席も前後だったので、すごく仲良くなって。そこから『ラジエーションハウスⅡ』(フジテレビ系)では幼なじみとして、萩原さんの役が私を好きになるけど、私の役は彼に対して幼なじみの感情しかないような関係だったので、4度目にしてようやくお互いの矢印が同じ方向に向きそうだなと感じています(笑)。いろいろな関係性をやらせていただいているのですごく楽しみでもあり、今回はオリジナルストーリーなのでどう話が進んでいくか分からない中で、作品に対していろいろなことを話せる人だと思うと、萩原さんと一緒でよかったと思います」

――ドラマのビジュアル撮影時には、堀田さんが顔を赤らめることもあったと伺いました(笑)。

「いやぁ、恥ずかしいですね(笑)。共演した作品の中でも『3年A組-今から皆さんは、人質です-』が撮影期間として長かったので、同級生と恋しているような感覚なんです。同級生と大人になって再会して恋が始まったような(笑)。萩原さんも『1回目、2回目ぐらいだったらいけそうなのに、2周ぐらい回って逆に恥ずかしい』みたいに言っていました。変に意識してしまっている感じもありましたね」

――この作品で久しぶりに再会した時は、どんなお話をされたんですか?

「久々にお会いしたのがこの作品の衣装合わせの時で、その時も全然しゃべれなかったんです(笑)。私は一度ご一緒した方でも、ちょっと期間が空くとまた(関係が)ゼロに戻ってしまうようなタイプといいますか。今作の関係を組み立てていく作業は、以前お会いしていることもあってスッと早かったのですが、久々に会ったファーストコンタクトは変な感じになってしまって、監督の皆さんにも『なんかしゃべりたいことないの?』と聞かれたのですが、『いや…何もないです』とちょっとよそよそしく帰っちゃいました(笑)。これまでのキャラクターの関係性とはまた違うので、初めましての感覚もあるけど同級生と恋に落ちるような、ずっとつながっているような感覚があるんですね。だから、ビジュアル撮影の時にカメラマンさんから『手をつないで見つめ合ってください』と言われた時は、『いやいや、ちょっと…!』みたいな感じでした(笑)」

――共演を重ねるごとに距離もだんだん近づいている気もするのですが、やっぱり恥ずかしさのようなものも?(笑)。

「学園ものの作品をやると、共演したみんなが友達のような感覚になるんですよ。だからこそ、“お芝居の共演者”というより“学生時代の友人”のような感覚がすごく強くて、時間が空いて会ってしまうと『あ、元気だった?』というところから始まるんです(笑)。初めて共演する方だったら『頑張りましょう!』というスイッチが入るのですが、昔から知っている方だと『が、頑張ろうね!』とよそよそしくなってしまって…。でも、今回は神戸での撮影で、撮影していても『みんなで頑張ってるぞ』というチームになれている感覚があるので、すてきな環境で撮影させていただくことでグッと距離も縮まるのではないかと思っています」

――クランクアップの時には今の距離感がどうなっているのか楽しみですね(笑)。共演を重ねてきた中で、役者としての萩原さんにはどんな印象を持たれていますか?

「同い年でありながら、私よりも前からお仕事もずっとされているので、役者としても先輩なんです。お芝居も、声のトーンがすごく柔らかい印象があるので、今作で美璃を包み込むような空というキャラクターはピッタリだなと思います。どちらかというと、派手さのあるお芝居よりも繊細なお芝居が私はすごく好きで。それは『ラジエーションハウスⅡ』の時も『病を抱えている』という自分の中では分からないところに近づく作業をしている時に、お芝居で受け止めてくださっていた印象があります。4度目というのもそうですし、萩原さんのお芝居は常にキャッチボールをしてくれているような感覚があるので、本番で違うことをしても、きっと返してくれるという安心感を持っています。そこは作品の見どころにもなるのかなと思います」

――美璃は「ピアニストになる夢」に破れて東京から神戸に引っ越してきた役どころ。その背景もかなり複雑なものが入り乱れているとのことですが、そんな美璃をどのように捉えていますか?

「第1話ではまだ描かれてはいないのですが、だんだん彼女のことが分かってくる描写もある中で、美璃にとっては母親と話せる共通のものが“ピアノ”で。母が喜んでくれることがうれしくて、それに応えたいという思いもあって、だからこそ自分ファーストではなく『誰かのために』と生きてきて、自分がどうしたいのか分からない中で生きているような女の子なのかなと思っています。美璃にとって、神戸という地は初めこそ自分から逃げるための場所だったのかもしれませんが、新しい地で自分とはちょっとかけ離れた場所にいるような空と出会って、彼女自身が変わって成長していく物語になるのだろうなと感じています」

――生活のためにアルバイトを始めたり、ピアノ講師という仕事の現実に葛藤する美璃に共感できる部分もありますか?

「私は早くから自分の夢が決まっていたタイプだったので、学生の頃からこの仕事をしていますが、実際に友達が就職活動を頑張っていた時の話を聞いていると、『自分がやりたいことってなんなんだろう?』と悩んでいる友達がたくさんいて。私の世界がちょっと違うだけで、もし自分が決まった職種に就いたとしたら、同じように『これで良かったのかな?』と悩むのだろうかと考えたこともあります。作品をお届けする時って、どこかきらびやかな世界に現実逃避できる時もあったり、『こういう世界いいな』と憧れるのもエンタメとしての一つの魅力だと思うのですが、今回のお話は『好きなことがやりたいけれど、その前に生活を安定させなければいけない』という現実や、『好きな人への思いよりも働く時間の方が大事』という葛藤があって、そういった等身大の悩みに寄り添うことや問題提示が、浅野さんの脚本ならではなんだろうなと思っています」

――本作の脚本を手掛ける浅野妙子さんの世界観にはどんなことを感じられましたか?

「すごくセリフが温かいといいますか、キャラクターたちが迷いながら今という瞬間を生きている中でも、弱音だけはなく、浅野さんが描く力強いメッセージから勇気づけられる言葉がたくさんあると、作品を読ませていただいた時に感じて。劇中でナレーションが多いのですが、その言葉が本当に美しくてはかなくて、『どういう気持ちで言えば、こんなにもすてきな贈り物を届けられるんだろう』と思っていますし、浅野さんの描かれる神戸という街の描写も本当にすてきなので、本を読んでいても『きっとこういった画になるんだろうな』とイメージがしやすくて、『この後はどうなっていくんだろう』と続きが気になりながら読んでいました」

――美璃の恋物語やそれぞれの人間模様もかなり丁寧に描かれていますよね。

「自分が生きている中で、今SNSなどの普及で、人と比べてしまって自分自身が小さく見えてしまう瞬間って、私もすごく分かるんです。自分自身を大切にするよりも、周りと比べることをすごく感じてしまう世の中でこの物語を全部読んだ時に、特に空は過去でも未来でもない“今”という瞬間をすごく大切に生きている人なので、自分がのんびりしている気がしてしまっても『きっと今日という日は全然無駄な1日ではなかったんだな』と、すごく前向きになれる作品だと感じています。それぞれのキャラクターたちが、大切な人と出会って自分の居場所を見つけていくように、見ている方にも希望となる作品になることを意識しながら美璃を演じられたらと思っています」

――浅野さんの脚本を読んだことで、役作りへの意識にも何か変化はありましたか?

「生活苦で自分がやりたいこともなかなかできなくなったり、セリフの中でも『自分は社会の役に立っていない』というセリフが出てくるのですが、クランクインする前に本読みをさせていただいて、『社会の役に立っていないという言葉がちゃんと似合うような人であってほしい』と言っていただいたんです。私自身、早くに上京したこともあって、意識せずとも生きることへの心(しん)の強さが出てしまうというか、美璃が抱えている弱さみたいなものをどうしても自分の中で出しづらかったので、最後は『美璃はすごく成長したよね』と言っていただけるように、今でも監督とも相談しながら役を作っています」

――本作の舞台は神戸ということで、撮影も現地で行われているそうですね。撮影中の楽しみは何かありますか?

「行きたいお店がたくさんあるので、実はかなりリストアップしています(笑)。ご飯がすごく好きなので『行けたらいいな』というお店がいくつかありますね。神戸に日本最古のコーヒー屋さんがあることを聞いたことがあって、カフェなども多いので行きたいですし、ギョーザもすごくおいしいみたいなので食べられたらいいなと思いつつ、神戸に行かれた方や神戸に住んでいる方にリサーチして送ってもらって、行きたいお店を見定めています(笑)」

――ラブストーリーだけでなく、生きる大変さや葛藤、登場人物の繊細な心情の変化が見どころの本作ですが、日曜日の夜に放送されるにあたって、この作品が持つ“メッセージ性”をどう感じていますか?

「この作品は伝えたい要素がたくさんあるので、2人のラブストーリーにも注目していただきたいのですが、それぞれのキャラクターの背景がしっかり描かれているので、それぞれの人生に着目すると、いろいろな人がいて、いろいろな生き方があるんだなと脚本を読んでいて感じています。私が学生の時に『この曜日にこのドラマがあるから頑張ろう』『今日帰ったらこの作品が見られるから頑張ろう』というタイプだったので、日曜日が週の始まりだとすれば、見てくださる皆さんが月曜日から『また1週間頑張ろう』と思っていただけるような、ホッとできる居場所のような作品にしたいので『この作品を見るために頑張ろう』と思ってもらえるように、私も頑張りたいです」

――学生時代はどんな作品をご覧になっていたんですか?

「そのクールに放送されるドラマをいろいろと見ているような学生時代で、特に私の学生時代って、学園ものの作品がすごく盛り上がっていた印象があって。それこそ萩原くんが出ていた『真夏のシンデレラ』(フジテレビ系)のように『月9といえばこれ!』という作品がたくさんあって、学校でも『来週どうなるんだろうね』と話したりしていました。『花より男子』(TBS系)、『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜』『メイちゃんの執事』(ともにフジテレビ系)、学園ドラマの延長で『学生でこんなのは憧れるよね!』みたいな話をすごくしていた記憶があります。特に『花より男子』はすごく盛り上がっていましたね」

――堀田さんが学生の頃の作品だと、「リッチマン、プアウーマン」、「SUMMER NUDE」(ともにフジテレビ系)などもありますね。

「見てました! 私、石原さとみさんの作品が好きで、ほとんど見ていると思います。『ディアシスター』(フジテレビ系)だったり、『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系)はファッションやメークがすごくかわいくて、女の子たちの間ではその話でも盛り上がっていました。地方出身の楽しみって、そのクールに放送されるドラマをみんなが見ていることもあって、ドラマの存在がすごく大きいんですよ。東京に来てからは、放課後は竹下通りに行ったり原宿に行ったり楽しく遊ぶ場はあったのですが、滋賀にいた時は決まったファッションセンターに行ったり、プリクラを撮ってカラオケで歌ってボウリングをやって、帰ってからドラマを見る、それが一つの青春でした。ドラマって、地方の人たちの憧れが詰まっていると思うんです」

――「ドラマの話をみんなでする」という光景は、今ではあまり見られなくなった光景なのかなとも思います。

「ないかもしれないですよね。特に、私は高校2年生から芸能のコースに行ったので、芸能の学校だとそういうことは全くなかったんですよ。でも滋賀にいた学校の時は、みんなでお弁当を食べている時にドラマや映画の話しかしない環境だったので、『こんなにも心が動かされて、日常の中に入ってくるものに携わりたい』とその時から思っていました」

――本作も学生の話の中心になるといいですね。

「そうなっていただけたら本当にうれしいですね。神戸での撮影なので、東京とは違った奇麗な景色が私自身もすごく楽しみなので、お芝居はもちろん、神戸の街並みの描写をお届けできることが楽しみです」

【プロフィール】

堀田真由(ほった まゆ)
1998年4月2日生まれ。滋賀県出身。主な出演作にNHK連続テレビ小説「わろてんか」、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」、「3年A組-今から皆さんは、人質です-」「CODE-願いの代償-」(ともに日本テレビ系)、「風間公親-教場0-」(フジテレビ系)、「オカルトの森へようこそ」(WOWOW)、「大奥」(NHK総合)、「いとしのニーナ」(FOD)、映画「ハニーレモンソーダ」(2021年)、「バカ塗りの娘」(23年)など。11月23日公開の映画「翔んで埼玉〜琵琶湖より愛をこめて〜」、24年1月12日公開の映画「ある閉ざされた雪の山荘で」、1月26日公開の映画「劇場版 君と世界が終わる日に FINAL」への出演を控える。

【番組情報】

「たとえあなたを忘れても」
10月22日スタート
テレビ朝日系
日曜 午後10:00〜10:54
※放送終了後、TVerで最新話を見逃し配信
※TELASA、U-NEXTでは全話見逃し配信

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取材・文/平川秋胡(ABCテレビ担当) 撮影/尾崎篤志 ヘアメーク/中山友恵 スタイリング/有本祐輔(7回の裏)
衣装/TOGA ARCHIVES(TOGA 原宿店) shoes/HENRI EN VARGO TOGA 原宿店(03-6419-8136)HENRI EN VARGO 株式会社アポロ(03 3806 6571)

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