終わりよければ全て良し…熊谷で40年超愛された焼き鳥店「鳥正」が閉店 来月、味継ぐ新たな「鳥正」誕生へ

焼き鳥を提供する根本明さん=埼玉県熊谷市本町2丁目の「鳥正」

 埼玉県熊谷市本町2丁目の焼き鳥店「鳥正(とりまさ)」。40年以上にわたって地域住民などから親しまれてきたが、惜しまれながら20日でのれんを下ろした。店主を務めた根本明さん(77)は「いろいろあったけど、終わりよければ全て良し」と笑顔を見せた。

 根本さんは千葉県市川市出身。高校卒業後、東京都新宿区四谷の料亭で2年修業し、実家の焼き鳥店に戻った。店を手伝っていた妻が旧妻沼町(現熊谷市)出身だったことから、熊谷に引っ越してきて同店を始めることになった。

 しかし、熊谷はホルモン焼きの人気が高かったことから、焼き鳥店の客の入りは芳しくなかった。「最初は店を開けても来るのがゼロとか1人とかで、家賃も払えなかった」と根本さんは当時を振り返る。徐々に人気が広がっていったものの、開店した当初は苦労が絶えなかったという。

 庶民的な価格で味わる焼き鳥は絶妙な焼き加減で提供されて、絶品だった。実家から持ってきた焼き鳥のたれは秘伝の味で、継ぎ足しながら味を守ってきた。閉店の1カ月前からは満席が続いて、「ゼロからのスタートだったけど、最後はいい形で終われた」と充実した表情を浮かべた。

 一方でうれしい話もあった。閉店を知った小宮根(こみね)光さん(46)が「この味をなくしてはいけないし、受け継ぎたいと思った」と6月から弟子入りした。小宮根さんは11月11日に同市筑波3丁目に新たに「鳥正」をオープンさせる予定で、当分は根本さんも手伝っていくという。

 根本さんは小宮根さんについて「本当に真面目なので、いい加減な料理を出すことはない」と評価している。市民から愛されてきた伝統の焼き鳥の味は、新たな鳥正で受け継がれていく。

 根本さんは23日午後8時から放送されるコミュニティーFM「FMクマガヤ」の「須永公人の週刊フードラボ」に出演する。

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