福井県のサウナ事情…セルフロウリュや熱波師サービスも 銭湯が次々導入、全国から「サ活」客

越のゆ鯖江店に新設されたセルフロウリュが可能なサウナ室=福井県鯖江市神中町2丁目

 サウナ施設整備に力を入れる温浴施設や銭湯が福井県内で増えている。人口減少による銭湯の利用者減、光熱費高騰といった逆風の中、全国的なサウナブームにより遠方からの来客や若年層の新規顧客が増えてきたという。さらなる利用者増に向け、各施設は設備の改修やサービス向上に汗を流している。

全国から「サ活」

 スーパー銭湯「越のゆ」など運営のイワシタ商事(本部福井市円成寺町、岩下大介社長)は9月30日、鯖江店に「セルフロウリュ」ができるサウナ室を新設した。客が自らサウナの熱源に水をかけて蒸気を発生させるもので、同社によると県内温浴施設では初導入という。「サウナを強化することで全国から客を呼び込める」と、岩下太士常務は狙いを語る。

 ここ数年のサウナブームにより、口コミサイトを見て全国の人気サウナを巡る「サ活」が活況。同社は2021年末、越のゆ富山店を全面改装。サウナ発祥の地フィンランドをイメージした「北欧サウナの家」をコンセプトにリブランドし、「売り上げが10~20%上がった」(岩下常務)という。「遠方の客はサウナ後の食事がセットの場合も多い」

広がる可能性

 「サウナブームで若いお客さんが増えた」と語るのは、福井市足羽2丁目の銭湯「たきのゆ」の長谷川多聞社長。昨年5~6月にかけての設備改修工事で、サウナの熱源に自動的に水をかける「オートロウリュ」を導入し、好評を博している。

 長谷川社長によると、銭湯の商圏は半径約500メートル、スーパー銭湯は半径5キロ程度。たきのゆはその中間の3キロ程度を見込む。商圏が限られる上に自宅に風呂があるのが当たり前となり、入浴料の上限も決められている銭湯が生き残るのは容易ではない。ただ、サウナは別料金で自由に価格設定ができ、長谷川社長は「非日常感の提供に対して料金をいただき、客単価アップにつながる。特徴のあるサウナを設置すれば遠方から集客できる可能性も広がる」と語る。

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客層に変化

 宿泊施設を備えた天然温泉リゾート「ゆけむり温泉ゆ~遊」(福井市渕2丁目)は2007年ごろから、サウナ室内の客を大うちわであおぎ、発汗を促す「熱波師」サービスを展開してきた。しかし「コロナ禍で客数は4分の1、売り上げは5分の1まで落ち込んだ」と加藤裕史支配人。アルバイト数を減らすなどで対応してきたが、ここ数年のサウナブームにより経営が回復してきたという。「お年寄りや宴会客は減ったが、その一方で若者が増えた」。外気浴スペースを拡張するなどの積極投資を行い、現在の客足はコロナ禍前の8割まで回復した。

 加藤支配人は「地道にやってきたことが功を奏した」と振り返り、「今後も選択と集中でサウナ関連のサービスを充実させていきたい」と力を込めた。

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