「北海道コーン茶」の原料となるトウモロコシを掲げ杉谷拳士さんが笑顔 伝えたい生産者や職人との協働 ポッカサッポロ

北海道夕張郡、秋晴れの空の下で高らかにトウモロコシを掲げる杉谷拳士さん。巨大なトラクターの上で、収穫したてのトウモロコシを手に笑顔を見せた。

このトウモロコシは、ポッカサッポロフード&ビバレッジが販売中の「北海道コーン茶」の原料。じっくりと直火で焙煎することで、香ばしい香りと甘みを引き出し「北海道コーン茶」が完成する。

冒頭は、10月13日に行われた収穫実演会での一幕。

「北海道コーン茶」とその原料に欠かせない生産者・職人にスポットライトを当てる目的で開催された。

「北海道コーン茶」で使用されるのは、子実(しじつ)コーンの一種のデントコーンという品種。

でん粉の含有量が少なく糖分の含有が高く、火を入れた際に焦げ付きの原因となる糖分が程よくでんぷんに変化し焙煎が行いやすい特性から、原料に採用されている。

側面に厚みがあることで、じっくり熱を入れ香ばしい香りや風味を引き出しやすい点も特徴に挙げられる。

「北海道コーン茶」(写真左奥)と「1L 業務用北海道コーン茶」(写真右奥)、焙煎前のデントコーン(手前左)と焙煎後のデントコーン(手前右)

デントコーンの生産を手がけるのは、北海道子実コーン組合。そもそもトウモロコシの生産を始めたきっかけは、連作障害だったという。

「元々は米を生産していたが、消費量が減ってきたこともあり徐々に畑作に転換した。麦と大豆を作っていたが、特定の養分が畑からなくなってしまう連作障害に苦しんだ」と振り返るのは柳原孝二代表理事組合長。

その状況を救ったのがデントコーン(子実コーン)だった。

デントコーンは、実の部分のみが収穫され、残りの葉や茎、根の部分は畑に還元される。還元された部分は畑の中で養分となり麦や大豆の栽培にもいい影響を与えるとされる。

「デントコーンの生産によって畑の状態が良くなる。自分たちだけが得をするのではなく、『北海道コーン茶』が作られることで、焙煎業者さんやメーカーさんなど携わる人全員にメリットがある。コーンを前面に押し出している商品というのも嬉しい」と語る。

デントコーンの焙煎を手がける福玉米粒麦の正木健司取締役製造部長は「当社では麦茶となる大麦の焙煎をメインに行っており、コーンの焙煎は初めてだった」と述べる。

デントコーンは、大麦とは焙煎温度や仕上がりも異なることから、最初は勝手がわからず焙煎できずに燃えてしまったこともあったという。

原料のデントコーンを栽培している畑。手前にある収穫されなかった茎や葉は、畑の養分となる

理想の香りや甘味を引き出すために協議を重ねて課題をクリア。「コーンの焙煎という新しい取り組みを続けたことで技術力も上がった」という。

「北海道コーン茶」の反響を聞かれると、「焙煎した真っ黒なコーンがペットボトルの飲料になって売られているのを見て従業員も喜んでいる」と顔をほころばせる。

原料であるコーンは、年度によって品質にばらつきも生じる。

ポッカサッポロフード&ビバレッジの鶴谷哲史マーケティング部ブランドマネジメント部担当部長は、「品質のばらつきに合わせた焙煎をしていただくことで『北海道コーン茶』の安定供給が可能となっている」と感謝の意を表する。

左からポッカサッポロフード&ビバレッジの安田剛史マーケティング本部ブランドマネジメント部アシスタントマネージャー、北海道子実コーン組合の柳原孝二代表理事組合長、福玉米粒麦の正木健司取締役製造部長、杉谷拳士さん

「北海道コーン茶」は「TOCHIとCRAFT」ブランドのひとつで、2021年の発売以来伸長を続けている人気商品。

「TOCHIとCRAFT」は、ただ国産の素材を使うだけでなく、その原料の魅力をパートナーとより引き出して伝えていく活動を行っている。

ブランド名の通り、その土地の文化や製法にもこだわった商品づくりが特長。「北海道コーン茶」以外の商品でも、普段なかなか表に出ることのない生産者や職人にフォーカスしたイベントを多方面で展開している。

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