日本に影響受けた作曲家「ジョン・ケージの日本」第2弾『龍安寺』

(c) Ayumi Sakamoto
ニューヨークで日本関連の文化を紹介するジャパン・ソサエティー(以下JS)は、20世紀を代表する作曲家、ジョン・ケージがテーマの舞台公演「ジョン・ケージの日本」シリーズを実施中。

『4分33秒』などで知られる作曲家、ジョン・ケージ。アメリカではその死後も多くのファンがいるが、彼が生前、日本から多くのインスピレーションを受けた芸術家であったことはそれほど知られていない。

10月21、22日にJSで行われたシリーズ第2弾『龍安寺』は、レクチャーとライブの2部構成で展開した。

まずレクチャーでは、ケージを研究するジェームズ・プリチェット氏が、実験音楽とも呼べるケージ作品について、禅や俳句の世界から大きく影響を受けたことを解説した。

Ryoanji (1985) by John Cageとは?

ケージは1962年の初訪日の際、京都の龍安寺を訪れた。彼はそこで石庭の石のカーブ、配置、静けさ、禅や俳句に着想を得て図形楽譜による作曲をした。それが『龍安寺』(1985)だ。

1時間のレクチャー後、参加者はJS内のライブ会場へ移動。ステージ上ではインターナショナル・コンテンポラリー・アンサンブルの奏者3人、そしてオンライン上で金沢市の21世紀美術館で演奏する篳篥(ひちりき)奏者とボーカリストの計5人が共演した。

金沢はケージに大きく影響を与えた禅の識者、鈴木大拙(だいせつ)の出身地でもある。

最先端のIT技術により、距離も時差も感じないほど音響が良く、この2人の奏者も実際にステージ上にいるようだった。(c) Ayumi Sakamoto

ライブ公演は、静けさ(サイレント)が印象的な第一部と躍動感(エなジー)が印象的な第二部から成る構成だった。実験音楽とも称されるケージの世界は決して万人ウケするわかりやすいものではないが、満員の会場に集まったファンは皆、ケージの世界に没入した。

ケージ関連の公演があると知りライブに足を運んだJS会員の男性は、「抽象音楽である意味チャレンジングなライブだった」と印象を語った。金沢の奏者の後方に一般人が歩く日常生活が映し出されたことについて「あのような(予定に入っていない)チャンス(機会)も歴とした公演の一部になっていて良いね」と話した。

ロサンゼルスの文化研究機関で働くナンシー・パーロフさんは、「ケージ自体はよく知られる作曲家だが、日本に影響を受けたことはほとんど知られていないので、レクチャーがあって良かった。禅とスズキ(鈴木大拙)の繋がりの話は特に興味深かった」と感想を述べた。


「ジョン・ケージの日本」シリーズ

日本をはじめ世界の前衛芸術界に多大なる影響を与えたケージ。62年の初訪日は「ケージ・ショック」とも表現されるほどだったが、衝撃を受けたのはケージ本人も同様だった。「ジョン・ケージの日本」シリーズは日本がケージに与えた芸術的影響に着目し、4プログラムで構成されている。

第1弾『ケージ・シャッフル(Cage Shuffle )』(9月)


第2弾『龍安寺』

作曲:ジョン・ケージ

構成・演出:足立智美

演奏:

(NY)インターナショナル・コンテンポラリー・アンサンブル

(金沢)中村仁美(篳篥)、太田真紀(ボーカル)

レクチャー:ジェームズ・プリチェット

Text by Kasumi Abe, Photo by Ayumi Sakamoto

© 安部かすみ