物価高に円安、さらには増税も…苦しい生活のなか、今、政府に強く求める“生活支援策”とは?

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜6:59~)。「激論サミット」のコーナーでは、経済の専門家を交え、今政府に求めるべき“生活支援策”について議論しました。

◆必要なのは減税か?給付か?補助金か?

円安などの影響で値上がりが続くガソリン価格。電気料金も大手電力10社が10月請求分から、都市ガスも大手4社全てで値上げされました。

帝国データバンクによると、原材料高の影響で9月の食品値上げ数は2,000品目以上。10月には4,500品目を超え、物価高の波が続いています。

さらに、負担となるのは物価高だけでなく、財務省によると昨年度の国の一般会計税収は3年連続で過去最高。所得税や法人税、消費税などの税収は増え続けています。政府は追加の経済政策をまとめるとしていますが、世間からは賃上げや減税を求める声が上がっています。

そんななか、今、国民に必要なのは"補助金”か"現金給付”か"減税”か。政府はどんな生活支援策を行うべきなのか。

まずは経済の専門家、第一生命経済研究所 首席エコノミストの永濱利廣さんに聞いてみると「理論上は"減税”がいいが(行うためには)法改正などが必要になるので(時間がかかる)、緊急のときには給付、"補助金”にならざるを得ない」との見解を示します。

さらに、永濱さんは「お金を使った人が得になるような政策をもっとやらないといけない」とも。例えば、補助金や給付だと使わなくてもいいため、世間に還元できるか分からないということもあり「使った人が得をするような政策で経済を回すことが足りない」と私見を述べます。

◆最低賃金の引き上げの裏に潜む問題とは?

国際社会文化学者のカン ハンナさんは、「東京より地方、大手企業より中小企業」とシンプルに弱いところへの支援を熱望。

永濱さんも「これは重要な政策」と賛同しつつ、「税制なども含めてもっとじっくりやったほうがいい」と補足。

そして、前明石市長の泉房穂さんは「重すぎる負担の軽減」を憂い、「私の子ども時代は国民負担率が2割程度、今は5割ぐらいある。中長期的には別の論点があると思うが、物価を下げるのも大事なものの、今の時点では(国民の)負担を調整するのもアリだと思う」と語ります。

永濱さんは、泉さんの意見に頷きつつ「国民負担率はG7諸国と比較するとこの20年で日本だけ圧倒的に上がっている、こうした状況では経済成長はしない」と警鐘を鳴らします。

さらに泉さんからは「減税もひとつの選択肢で、私は(生活支援策を)全部やったらいいと思う」との大胆な意見が。ちなみに、泉さんが市長を務めた兵庫県・明石市では市内でしか使えない地域商品券を大量に発行。すると使用された97%の商品券全てが市内の消費に回り経済が活性。市民だけでなく事業者側にも恩恵があったそうです。

一方、アフリカの紛争問題を研究する東大院生の阿部将貴さんが訴えたのは「最低賃金引き上げ」。現状の物価高対策はほとんどが補助金で「それはその場の一時凌ぎ的な傾向が強い」とし、「負担が増えても賃金が上がれば問題ない。賃金も上がってはいるが物価高に追いついていないのが問題で、物価高を上回る、もしくは同程度の最低賃金の引き上げが必要」と主張します。

永濱さんはこれも「非常に重要」と認めるも、ひとつ課題が。それは「130万円の壁」と言われる社会保険の扶養に入れる年収基準で、「最低賃金を引き上げるとそれを超えてしまうということで、労働時間を減らしてしまうことがある。最低賃金の引き上げは大事だが、セットで130万円の壁をなだらかにすることなども必要」と問題点を指摘します。

すると阿部さんは「例えば、正社員や給料を増やした分、社会保険料を下げるなど(会社の)負担を軽減すれば経営者としてはやりやすいのではないか」と新たに提案すると、永濱さんも頷き、「今は賃上げの税制優遇策をやっているが、それは黒字の起業しか恩恵を受けていない。社会保険料を下げるほうが効果は大きいと思う」と話します。

◆できることなら軽減税率の引き下げを…

さまざまな生活支援策が考えられるなか、永濱さんが最も手っ取り早く、効率的な策として挙げたのは「消費税減税」。しかし、前述の通り法改正などが必要ですぐにはできず、「社会保障の財源に結びついていたりするので、そういう意味では実現の可能性は低い」と言及。

もうひとつ効果がある支援策が「軽減税率の引き下げ」。なぜなら「今、消費者物価は3%上がっているが、そのうち2%分が食料品の値上げ」、さらに永濱さんは「消費税も今、軽減税率8%だが、これを仮に0%にしても年間必要な財源は4兆円。消費税を5%から段階的に10%に引き上げ13兆円の財源が確保されたが、社会保障に結びついているのは8兆円。5兆円は使えるので軽減税率の引き下げに使えば効率的」と解説するも、これも法改正などが必要。

泉さんは「軽減税率の引き下げに大賛成」と強調。「食料品は海外でも消費税が入っていない国が多い。日本だけ一律でとってしまうから最低限の生活すらしんどくなる。食料品は軽減税率を適用すべき」と声を大にします。

◆政府のお金の使い方、どう思う?

2022年度の一般会計税収は71兆円超、3年連続過去最高で所得税、法人税、消費税、全てが増えていますが、すでに2024年度の適切な時期に防衛費の財源として法人税、たばこ税の引き上げが決定。さらには異次元の少子化対策のため社会保険料を月500円増。そして16~18歳の扶養控除は縮小される予定になっています。

年々税収が増えるなか、泉さんは「今の時代にあった使い方を」と望みますが、財務省なり、財政局の管理が厳しいのが現実。泉さん自身、明石市長時代に何かをしようとすると財政局から止められたそうですが「それでも市民のためにやるのが政治家。政治家の問題」と熱弁。永濱さんも「(財務省を)変えるのは政治しかない」と話すも、「そこが日本は弱い」と嘆きます。

カンさんによると韓国でも同様の問題はあり、生活支援も行き届いていないものの、日本と違い「市民の声が大きい」と言います。というのも、韓国は大統領、そして政治家が定期的に変わることが多いため、市民の声が届きやすいとか。

この意見に泉さんは大きく頷き、「実は明石は韓国(の政治)を見ている。政策は韓国を参考にしている」と明かします。例えば、泉さんが明石市長時代に真っ先に行った給食費の無償化は、先んじて韓国・ソウルが実施しており、さらに養育費の立て替えも韓国の政策を参考に進めたと泉さん。

◆いま政府がやるべき生活支援策は?

最後に、今回の議論を踏まえ、政府が今、進めるべき生活支援策を聞いてみると、阿部さんは当初の意見にプラスアルファし「年収の壁を見直し、賃金引き上げ」と提言。

そして、泉さんはあらゆる手段を使って支援するとともに、なかでも子育て費用をはじめとする無償化の拡充を熱望します。

「各自治体は今、一気に(支援を)やっていて、なぜかといえば市民の悲鳴が聞こえるから。市民の声を受けて自治体は思い切って方針転換をしている。国民が頑張り、地方も頑張っているのに国だけがサボっている。国の政治家がちゃんと国民のほうに向いた政治をすべき」と力説。

カンさんは「国がいろいろな立場の人たち、例えば中小企業、地方の自治体、市民の声をしっかり聞いて、そこから何ができるのか、何をすべきなのか1回見直していただけたら」と国民の声を聞くことを望みます。

永濱さんは、喫緊の問題である「物価高策延長」に言及。現在、岸田政権は物価高対策延長を示しているものの、細かく見ると疑問点が多いとか。例えば、ガソリンは175円まで下げるとしていますが、去年は168円まででした。また、電気やガスも負担軽減の延長を決めるも9月に負担軽減が半減され、それが続行となるので、実質的には8月に比べると負担軽減は少なくなっています。

永濱さんは「予想では今年度の税収は昨年を超え約79兆円。大幅に上がるので出口に向かうのではなく、もっと大きな支援を」と切望。この増額分で軽減税率の引き下げも余裕で可能になるそうで、それを聞いた堀からは「すぐにやってください!」との声が。

堀は、今回の議論で賃上げ、減税、軽減税率などさまざまな案が出てきたことから、政府に対しても「私たちが要求を具体的に」と提案。

キャスターの豊崎由里絵は、国民の負担が政治家には全然伝わっていないのではないかということで「私たちがもっと声をあげるべき!」と訴えていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 6:59~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組X(旧Twitter):@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

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