世襲批判打ち破る 金子氏「県北の未来、一緒に」 衆院長崎4区補選

笑顔で花束を受け取る金子容三さん=22日午後10時25分、佐世保市八幡町の選挙事務所

 与野党が激突した衆院長崎4区補選は22日、自民新人の金子容三さん(40)が勝利した。物価高対策など山積する課題に「命懸けで取り組みます」。真面目な語り口で支持は次第に広がった。一方「政治を変える」と訴えた立憲民主前職の末次精一さん(60)の陣営は敗戦に言葉を失った。
 投票箱が閉じ、2時間を過ぎたころ。「どうなんだ、いけるのか」。重く、じりじりとした空気に包まれる選挙事務所に「当選確実」の報が飛び込んだ。会場は一気に支持者の歓声に包まれた。
 金子さんは支持者とともに何度も万歳。「県北の未来を皆さんと一緒につくっていきたい」。これからの責務の重さをかみしめるように語った。
 人口減少問題を底流に農林水産業や観光、インフラ整備などで課題が山積する県北。選挙戦では「ふるさとの未来のために皆さまの声を国に届け、必ず成果を持ち帰る」と訴え続けた。
 小学校から始めた空手は大学まで続け、高校時代はキャプテン。大学時代の寮生活では責任ある委員長を任され、選挙中に寮の友人が応援に駆けつけてくれた。政治家一家に生まれたことを特別と思ったことはなく、等身大の学生、社会人生活を過ごしてきた。
 選挙戦は順風ではなかった。低迷する内閣支持率。分裂した過去の選挙のしこりを引きずる党内。そして何より、相手陣営から世襲批判にさらされ続けた。
 「父は父、自分は自分。大事なのはこれから自分が県北のため、日本のためにどれだけ働けるかだ」。自身は揺るぎなくそう思っていても、執拗(しつよう)な批判にいら立ったこともあった。
 「会ったことも、しゃべったこともない人から『世襲のぼんぼん』って。そんなこと言われる筋合いはない」。選挙戦最後の演説会ではこう吐露した。
 投票日。金子さんは平戸市の家畜市場にいた。畜産農家が育てた子牛の価格は需要の低迷で下落の一途。選挙前から農家の苦境の声を聞き続けてきた。
 金子さんは言う。「1秒でも早く物価高対策を進め、皆さんのお役に立ちたい」。もう会社員ではなく、1人の政治家の姿がそこにはあった。

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