長崎・外海 「ド・ロさまと歩くミュージアム」が本格始動 27日開業、記念イベントも

保存整備が進む大平作業場跡=長崎市西出津町

 明治期に来日し、長崎市外海地区で住民の生活向上に尽くしたフランス人宣教師、ド・ロ神父(1840~1914年)の関連施設を巡り、その精神を体感してもらおうと、同地区出津・大野エリアを中心とした歴史遺産活用プロジェクト「ド・ロさまと歩くミュージアム」が本格始動する。27日には神父が建て、保存修理中だった「大平作業場跡」がオープン。記念イベントも開く。
 プロジェクトは、多くの関連施設を所有するお告げのマリア修道会(同市)が母体の一般社団法人「ISHIZUE」(同市)が企画運営。既に開業している旧出津救助院や今回開業する大平作業場跡など、エリアに点在する神父ゆかりの場所を歩いて巡ることができるよう整備し、宿泊や食などの体験を通して神父の精神や営みを感じる「フィールドミュージアム」化を目指している。
 ド・ロ神父は1879(明治12)年、外海地区に主任司祭として赴任。夫を亡くした女性や母親たちの生計を助けるため、授産場やマカロニ工場などを建設した。17年かけて山林を畑に変え、茶や小麦を栽培・加工して外国人居留地などで売って貧者救済に充てたという。
 今回開業する大平作業場跡は1901年ごろの建築とされ、神父が考案した石積みの技法「ド・ロ壁」が使われている。畑などとともに国の重要文化的景観「長崎市外海の石積集落景観」の構成要素となっており保存修復が進んでいた。今後は茶いりやパン作りなどが体験できる場としても活用する。
 プロジェクト全体の完成は2026年度を予定。ミュージアムの入り口となる建物やゲストハウスなどの整備を順次進め、体験メニューも増やしていく。プロジェクト担当の赤窄須美子シスター(70)は「ド・ロさまの営みは持続可能な生活を模索する今日の私たちにも大きなヒントを与えてくれる。ぜひこの地を訪れ、体感してほしい」と話す。
 オープンイベントは27~29日、大平作業場跡周辺で開催する。軽食を振る舞うほか、28日は竣工(しゅんこう)祝福式や基調講演を実施。29日のお茶いりなどの体験は有料で事前予約が必要となる。外海出津地区の市営駐車場から現地へシャトルバスを運行する。問い合わせは旧出津救助院(電0959.25.1002)。

フィールドミュージアムの全体イメージ

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