【MLB】 プレーオフ史上最強投手? データで見るフィリーズ・ウィーラーの無双の秘密

写真:プレーオフでの活躍は歴代屈指。フィリーズ・ウィーラー

日本時間22日に行われたナリーグチャンピオンシップシリーズ第5戦、敵地で2連敗していたフィリーズを救ったのはエースのザック・ウィーラーだった。7回1失点8奪三振という完璧なパフォーマンスで、ウィーラーはシリーズ王手となる3勝目をフィリーズにもたらした。

ウィーラーはここまで今年のプレーオフは4戦3勝、防御率2.08という圧倒的な投球でフィリーズを牽引してきた。単なるエースの活躍というだけにとどまらず、ウィーラーのプレーオフでの無双劇は伝説的な段階へと足を踏み入れつつある。

通算10回のプレーオフでの先発で、ウィーラーの通算防御率は2.48。WHIP0.73は10先発と50イニング以上のスパンの中では歴代最高。そしてプレーオフで60イニング以上投じ、防御率2.50とWHIP1.00を下回っている投手はウィーラーの他に殿堂入り右腕のボブ・ギブソンしかいない。

もちろんウィーラーはレギュラーシーズンに置いても球界を代表する好投手の1人だ。しかし、2022年からの2年間でレギュラーシーズンでは防御率3.26なのに対し、プレーオフでは2.48と一段と強力な投手へと変貌している。その要因は何なのだろうか?『MLB.com』がその要因を分析している。

1つ目の鍵がウィーラーの速球にある。速球(4シームとシンカー)はウィーラーにとって最大の武器となる球種だ。ウィーラーは過去2年間、プレーオフではレギュラーシーズン比で4.2ポイント増の64.8%の割合で速球を投げている。そして、球速はおよそ1.12キロアップのおよそ155キロにギアを上げ、被打率はレギュラーシーズンの.218から.169に改善している。

つまり、ウィーラーは最大の武器である速球の割合を増やし、さらに球速を上げている。先発投手の早めの交代が珍しくないプレーオフだからこそ飛ばしているという見方もできるが、ウィーラーは全10先発で5イニング以上投げ、2巡以下の対戦で降板したことはない。

2つ目の鍵がストライク先行の果敢な投球だ。ウィーラーの初球ストライク率は、レギュラーシーズンの63.9%から、プレーオフでは70.7%にまで上がる。

3つ目の鍵が今年から投げ始めた新球種スイーパーだ。今年から投げ始めたというこのスイーパーは、レギュラーシーズン中は空振り率39.2%という全球種中最高の数字を残していながらも、12.2%の割合でしか投じられていなかった。しかし、プレーオフではスイーパーの割合は19.6%に増え、空振り率は51.5%にまで上昇している。

打者としてはほとんどノーマークだったスイーパーが、突如としてウィーラーの必殺の決め球と化している形。横方向の変化量もレギュラーシーズンからおよそボール1個分弱増えており、対応するのは至難の業だろう。

ギアを上げた速球をたくさん投じること、ストライク先行の投球をすること、曲がりを増やしたスイーパーを決め球にすること。これらの要素がウィーラーの無双を支えているのかもしれない。

注)データは『ベースボール・サーヴァント』参照

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