就任初年度昇格「青森での28年のおかげ」 J2町田・黒田監督、熱い思い語る

 22日行われたサッカーJリーグ2部(J2)の第39節で、青森市の青森山田高校サッカー部を28年間率いた黒田剛監督(53)が指揮する首位・町田が熊本を3-0で下し、クラブ史上初となる来季のJ1昇格を決めた。昨季15位に終わった町田の攻守を再構築し就任1年目で最高の結果を出した黒田氏。東奥日報の取材に「町田の歴史を変えられたことに喜びを感じる。青森で28年間、支えてもらった成果があって今がある。感謝している」と青森県への熱い思いを語った。

 黒田氏は1994年、無名だった青森山田高サッカー部コーチに就任し、翌95年、監督に昇格。2005年度の全国高校総体(インターハイ)初制覇を皮切りに、インターハイ優勝2回、選手権優勝3回、クラブユースを含めた高校世代日本一を決めるプレミアリーグファイナル優勝2回と高校サッカー界の常勝軍団をつくり上げた。

 類いまれな手腕、実績が評価され、町田がオファーを出した。プロでの指導経験はなく懐疑的な声も多かったが、黒田氏は監督就任時、「不安を感じられることもあるかもしれない。ただ、長きにわたり培ってきた勝者のメンタリティーはどのカテゴリーであっても失われるものではないと信じている」と言い切った。

 町田で突き詰めたのは「勝利のため細部にこだわるサッカー」。昨季50失点と、もろさを見せた守備の改善に真っ先に手を付けた。外国人ストライカーを含めた全ての選手に球際の強さ、ハードワーク、献身性を植え付け、前線からの守備意識を徹底させた。

 攻撃面では速攻を磨きセットプレーも重視。プロではあまり見られない青森山田高の代名詞ロングスローも取り入れた。黒田氏は戦術について「青森山田がベース」としつつ「プロの洗練された部分を加えたハイブリッドなサッカー」を目指し、チームカラーを一新させた。

 町田は開幕から7戦負けなしの好発進。昨季42試合で51得点50失点だったチームは、今季第38節終了時点で70得点34失点。首位を守り続け、いずれも高校時代の教え子であるDF藤原優大やMF宇野禅斗、シーズン途中で加入したMFバスケス・バイロンは主力として活躍した。

 22日、勝てばJ1昇格が決まる熊本戦ではこの青森山田トリオが先発した。宇野は強烈なミドルシュートで先制点を挙げ、藤原とバスケスはアシストを記録して大事な一戦の得点に3選手が絡んだ。

 来季は国内サッカー最高峰のJ1が戦いの舞台となる。黒田氏は「いつまでも心のふるさとは青森にある。これからも青森県の方々に成長を見届けてほしい」と語った。

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