佐藤万璃音組ユナイテッドAS、意地の連勝もタイトルに届かず。アルガルベ・プロが戴冠/ELMS最終戦

 10月22日、ELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズの2023シーズンの最終第6戦『ポルティマオ4時間レース』がポルトガル・ポルティマオ近郊のアルガルベ・インターナショナル・サーキットで行われ、ユナイテッド・オートスポーツ22号車オレカ07・ギブソン(佐藤万璃音/フィル・ハンソン/オリバー・ジャービス)が前々日の第5戦に続き優勝、今シーズン3勝目を飾った。

 LMP2クラスのシーズンタイトルは、このレースを2位でフィニッシュしたアルガルベ・プロ・レーシング25号車オレカのアレックス・リン/ジェームス・アレン/カイフィン・シンプソン組の手に渡っている。

■残り30分、一瞬にして上位勢3台がアクシデントに散る

 2023年のELMSは、イモラ・サーキットの工事遅れにより、当初のカレンダーからスケジュールが変更。最終2戦は変則日程となり、10月20日金曜日に第5戦『アルガルベ4時間レース』が、そして22日日曜日に最終第6戦『ポルティマオ4時間レース』が、いずれもアルガルベ・インターナショナル・サーキットで行われるという、ダブルヘッダーでシーズンを締めくくることとなった。

 第5戦で優勝したユナイテッド22号車の3人はランキング2位に浮上し、20ポイント差でアルガルベ・プロ25号車トリオを追う展開となっていた。

 21日に行われた第6戦予選では、IDECスポール28号車のポール・ループ・シャタンが最速タイムをマークしてポールポジションを獲得。2番手にはジャービスがアタックしたユナイテッド22号車がつけ、パニス・レーシング65号車が3番手、ランキングリーダーのアルガルベ・プロ25号車は4番手スタートとなった。

 4時間の決勝レースは22日13時にスタートが切られる予定だったが、雨と強い風のためスケジュールがディレイ。レースコントロールはスタートを90分遅らせる判断を下した。

 レースはセーフティカー先導の下で開始されたが、雨は依然強く、すぐに赤旗に。約45分間の中断を挟むと暗い雨雲が消え始め、再びセーフティカー先導で再開となり、残り3時間を切ったところでウエットコンディションのなかグリーンフラッグが振られた。

 2番手スタートの22号車ハンソンは、PPの28号車ポール・ラファルグをターン3までにオーバーテイクし、首位に立つ。28号車は濡れた路面に苦戦し、さらに順位を下げていき、代わって一度は2番手に立ったデュケーヌ・チーム30号車もスピンを喫するなど、波乱のスタートとなった。

ウエットコンディションのなか切られた実質的なスタート

 太陽が顔を覗かせ、徐々に路面の水量が少なくなっていくなか、首位ハンソンはリードを拡大。2番手佐藤へとバトンタッチする頃には、2番手にポジションを回復してきたデュケーヌ30号車に対し30秒ほどのマージンを築いていた。

 佐藤のスティントではさらにリードを拡大し、残り1時間半を切ってジャービスにバトンタッチするまでに、パニスとアルガルベ・プロに対して1分以上の差をつける。ここからはスリックタイヤに履き替えての終盤戦となった。

 このあと、残り1時間を迎える前に導入されたセーフティカーにより、ユナイテッド22号車のマージンは消滅。背後にはデュケーヌ30号車、IDECスポール28号車、パニス65号車、そしてリンが乗り込んだアルガルベ・プロ25号車というオーダーとなる。

 しかし残り33分、2番手に上がっていた28号車シャタンがターン8でスピンしグラベルへ。そしてほぼ同時に3番手を争っていた65号車と30号車が接触し、65号車がスピンする波乱の展開となる。

 30号車のニール・ジャニは2番手で走行を続けたものの、この接触によりドライブスルーペナルティを受けたため、一連のアクシデントにより、リンの25号車は5番手から2番手へとポジションを上げることになった。

 最終盤には65号車のヨブ・バン・ウィタートから激しくチャージを受けたリンだったがこれを退け、首位22号車から5.7秒の差でフィニッシュ。25号車は13点差でLMP2クラスの年間タイトルを獲得した。終盤の一連のアクシデントによるポジションアップがなくても、22号車陣営に5ポイント差でタイトルを手にしていたことになる。

 3位はパニス・レーシングの65号車。バン・ウィタートは残り1分となったターン5で2番手リンのインに飛び込んだが、軽い接触の後にスピンし、ポジションアップはならなかった。

アルガルベ恒例となっているプールに飛び込み、タイトル獲得を祝うアルガルベ・プロ・レーシング25号車のアレン、リン、シンプソン

 総合4位は、LMP2プロ/アマクラス優勝のAFコルセ83号車(フランソワ・ペロード/マシュー・バキシビエール/ベン・バーニコート)。彼らは0.6秒差で2位に入ったクール・レーシング37号車を下し、LMP2プロ/アマのタイトルを獲得した。

 LMP3クラスでは、ユーロインターナショナルの11号車リジェJS P320・ニッサン(マシュー・リカルド・ベル/アダム・アリ)がレースを制し、金曜の第5戦でタイトルを決めていたクール・レーシング17号車(エイドリアン・チラ/アレハンドロ・ガルシア/マルコス・シーベルト)が2位に入った。

 LMGTEクラスでは、プロトン・コンペティション16号車ポルシェ911 RSR-19(ライアン・ハードウィック/ザカリー・ロビション/アレッシオ・ピカリエッロ)がポール・トゥ・ウインを飾り、LMGTE時代最後のタイトルを獲得した。

 クラス2位はプロトンの77号車ポルシェ、3位にはスピリット・オブ・レースの55号車フェラーリ488 GTE Evoが続いている。

 木村武史のアタックにより予選2番手を獲得したケッセル・レーシング57号車フェラーリ(木村/スコット・ハファカー/ダニエル・セラ)は、クラス12位で最終戦を終えている。

 2024年のELMSは、全6戦から成るカレンダーがすでに発表されている。シリーズは4月14日、スペイン・バルセロナで開幕を迎える予定だ。

LMGTEクラスを制したプロトン・コンペティションの16号車ポルシェ911 RSR-19
LMP2プロ/アマカテゴリーのタイトルを獲得したAFコルセ83号車オレカ07・ギブソン
土曜日の予選で木村武史が2番手を獲得したケッセル・レーシングの57号車フェラーリ488 GTE Evo

© 株式会社三栄