【NOAH武田有弘取締役インタビュー】<前編>大激動の2023年舞台裏、新たなチャレンジの狙いとは?

株式会社CyberFight武田有弘取締役にプロレスリング・ノアの今年これまでの動きから今後についてプロレスTODAYが独占インタビューを行った。

大激動の2023年、ジェイク・リー参戦からGHC王座戴冠、武藤敬司引退後のNOAHの変化、中嶋勝彦の突然の退団、これまでのNOAHのエピソードを振り返り、新たな興奮が詰まった白GHC復活や新企画「MONDAY MAGIC」のプロジェクトの舞台裏についても聞いてみた。

NOAHの今後の方向性を明らかにする、第1弾インタビュー。

今回は全2回のインタビュー<前編>をお届け。

①GHCヘビー級王者ジェイク・リーについて

©NOAH

――GHC王者ジェイク・リー選手が参戦してからいろいろな波及効果もあると思います。リング上では「外敵の侵略」という部分もあるかもしれませんが、ファンにとっては新鮮な顔ぶれが期待できて非常にリングが活性化してきたと思いますが、武田取締役から見たジェイク・リー選手についての感想を教えてください。

ジェイク選手がいるといないとでは全く違う風景だっただろうと思います。ジェイク選手がいなかったら、全く違ったNOAHになっていたと思います。ただ、皆さんが勘違いしているのは、ジェイク・リーも年間契約選手なんです。基本的にプロレス団体の規模感というのは所属選手の数でランキングが決まると個人的に考えておりまして、思いますが、例えば1位はWWEで所属選手が一番多い、2位は新日本かAEWという感じで、契約選手がたくさんいればいるほどいいと僕は思っています。規模感も出るし、選手の競争も生まれますし。ですからジェイク選手がNOAHと年間契約をしてくれたことで非常に厚みも出て競争も生まれました。ただ、外敵と言われるのはどういう意味で言われているのか分かりませんが、おそらく全日本所属だったからという解釈なのかなと思っています。日本語は難しくて、「所属選手、所属選手じゃない」と言いますけれども、基本全員が年間契約選手なので、全員がある意味個人事業主でフリーですし、ある意味契約しているから所属ですし。中嶋選手の退団についてもそうですが、これは難しいですよね。

――入団というワードを使っていないだけで、契約選手としては皆さんと同じような形でやっているんですね。

そうです。

©NOAH

――なるほど。そう聞くと、外敵という言葉は当てはまらない感じもしますね。

「全日本から来た」という意味での外敵なんでしょうかね。

――ジェイク選手が加わったことによって、マット上の彩りというのは1枚加わるだけで、あれだけ対戦カードが広がるというのはファンにとっても刺激的で、選手にとっても違う意味での新鮮さを保てた要因になったのではないかと思います。

NOAH側に厚みが増しているのでジェイク選手1人が来ただけでバリエーションが増えました。これがNOAH側に所属が全然いなくてスカスカであれば、ジェイク選手が来たところで対戦相手もいないわけですから。いろいろなバリエーションができました。

――丸藤選手も「ジェイクが来てくれて良かった」というような発言もされていますし、選手からしても戦いの幅が広がって楽しみに繋がったというのは良い効果が現れていると思いました。

②武藤引退後、武田取締役が感じるNOAHの変化とは

©NOAH

――次は武藤選手が引退してから武田取締役が感じるNOAHの変化というのはいかがですか。

やはり武藤さんが来てからの変化というのは一つありますが、最初に来てタイトルマッチもやってベルトに絡んでいきなり第一線でやっていたその頃と今を比べると、コロナ中とコロナ後ということもあって業績的には変わらないか、今の方がいいかもしれないです。武藤さんがいなくなって一番業績的に変わるのは引退ロードのカウントダウン大会分です。引退ロードはすごかったです。横浜アリーナ、ムタVS SHINSUKE、東京ドーム。前期と今期の差があるとしたらこの3大会分は大きいです。この1月2月の引退興行3大会が凄まじすぎたので、しばらくはあまり大きい事をやっても響かないだろうなという思いもあってビッグマッチは控えていました。来年1月2日に有明アリーナでやるので、そこでまた武藤さんフィーバー以上のものを何か作らなくてはと思っています。

――その隠し玉は何個かご用意はされていると?

必要だと思います。

――これはプロレスファンの皆さんにとっては吉報ですね。非常に楽しみなものになります。やはり本当に武藤効果というのはマット界を潤す要因にもなりましたし、話題も含めてプロレス界の起爆剤に繋がったことは間違いないなと思います。

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③ABEMAアンバサダーの武藤氏へ期待する事

――また、去ってからもABEMAアンバサダーという形で武藤さんがプロレスを含めていろいろな形で活動をしてプロレスの広報大使にも繋がっていると思いますが、ABEMAアンバサダーとして武藤さんに期待することは?

武藤さんは基本、僕のお願いはあまり聞いてくれないので(笑)NOAHに関しては今まで通りやってもらえたら(笑)他では例えば、ABEMAが最近WWEを始めたのでWWEに関しては結構ABEMAがうまく使っていますよね。新日本プロレスも初めてABEMA独占で両国国技館大会(10月9日)の中継をやっていましたよね。あちらで入場したり、ベルト授与をしていたのでABEMAとの相性はいいんじゃないですか。

――そうなんですね(笑)

おかしいなと思ったんです。新日本プロレスの会場でテーマ曲を流して入場していたので。「あれ?NOAHでお願いしてもやってくれないのに…」と思いました。我々がお願いしてもやらないですよ、あれは。

――しかし10.23新宿FACEで行われる「MONDAY MAGIC ep.2」でグレート・ムタが登場されるということで、それも皆さんにとって非常に楽しみな告知に繋がったと思います。

そうですね。本当に来るのかどうかは僕もわからないですけれども。

――これも当日のお楽しみということですね。

そうですね。チケットは完売したようなので。

――さすがですね。

ステージを作り座席設定を少なくしていますので。

――それでもやはり「完売」というワードはプロレス界にとっては響きが非常に良いワードになるので。大箱で少ないよりも狭い方でも完売になっていくのが興行の人気に火がつきやすいポイントだと思いますので楽しみですね。

武藤さんはNOAHに関しては引退興行で最高に貢献してくれたので、しばらくは好きなことをやってもらいたいと思います。

④中嶋勝彦の退団について

――そして中嶋勝彦選手の退団について武田取締役の見解をお話しいただければと思います。

毎年契約更改というのがあってその場で聞いたんですけれども。退団する理由というのはもちろんあると思うんですけれども、具体的な何かがあって「退団します」と言われたわけではありません。そういう状況になったのは本人が何かやりたいということプラス、こちらに引き止められる力がなかったとは思うので、こちらがいろいろ考えなければいけない部分があります。

――話し合いは結構長くやられたんですか?

そうですね。先日武藤さんとお会いした時に「どうして辞めるんだ?」と聞かれたのですが、「いや、分からないですね。特に具体的な不満があるわけじゃないと思いますけど」と答えたら、「不満がなくて辞めるわけねーだろ。不満があるからやめるんだろ」と言われました。今後、人気選手やスター選手が不満は誰にもあると思いますが不安なく残ってくれるような団体にしなければいけないと思っています。

――中嶋選手から「レスラー人生20年目の節目に勝負したい」と言う言葉も出てきました。

ステップアップという部分ではいいと思います。NOAHを退団し新日本プロレスに移籍したり我々だけではなくて、国内一位の新日本プロレスさんでも過去にありえていたことですから。退団してWWEに行ったりAEWに行ったり。

――これからの中嶋選手の動きはまだ分かりませんが、フリーという立場についての意見はいかがですか?

ただ、難しいですよ。あくまで我々の団体の方針なので。フリーになっても、上がってくださいというパターンも団体によってはなきにしもあらずと思うんですけれども、我々は基本それをやっていないので。所属選手、年間契約選手で大会をやるというのが基本ですので。もちろんフリー選手もスポットでいますけれども、やはり大きな軸としては今まで所属だった契約していた選手が辞めます、フリーになります…今までと違ってフリーとしてNOAHで試合をするというのは我々はやらないということです。

➡次ページ(白GHCが「GHCハードコア選手権」として復活、新企画『MONDAY MAGIC』)へ続く

⑤白GHCが「GHCハードコア選手権」として復活の理由とは?

©NOAH

――NOSAWA論外さんが白GHCを「GHCハードコア選手権」に名称変更し復活を宣言という発表がありましたけれども、これはどういう理由なんでしょうか。

これはちょっと僕は分からないです。

――これは武田取締役はタッチされていないんですか。

タッチしていないです。

――NOSAWA論外さんがぶち上げたと?

はい。

――今、世界的にもハードコアという部分では皆さん注目される試合形式ですが、ノアブランドなんだけれども新しい領域を出していこうというような、そういう流れなんでしょうか。

多分、僕も同じですけれども、NOSAWAアシスタントディレクターもあまり今までのNOAHということにこだわっていないので、今が面白ければいいんじゃないでしょうか。

――NOAHらしさには皆さんあまりこだわりを持っていないんですね。

こだわりがないというよりもNOAHらしさが何なのか経験がなく正しくわからないので中途半端にNOAHらしくやっても成功しないんではないかと思っています。

――これが今後どのような流れを見せるのかというのは我々にとっても非常に楽しみだなと思います。

⑥新企画『MONDAY MAGIC』への期待度

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――そして新企画について『MONDAY MAGIC』への期待度というのはいかがでしょうか?

第1回を見て非常に面白かったですね。これは第1回もそうですが、第2回もチケットを売ろうと思えばステージ側に椅子を置いて増席できます。ですが、今回のこの大会の趣旨としては、とにかく我々、サイバーファイトという会社にDDTと東京女子とガンプロとNOAHとWRESTLE UNIVERSE(プロレス動画配信・レッスル・ユニバース)も入っているので、仮に我々だけが業績が良くても会社自体が良くならないと意味がありません。

とにかくレッスル・ユニバースの会員を増やすチャレンジとしてやってるので、これはもうチケットが完売しても評価されなくてレッスル・ユニバースの会員が増えなければ何の意味もないというところなんです。普通のNOAHの大会は基本ABEMAでやっているので、レッスル・ユニバースを増やすというNOAHでやれていないので。

レッスル・ユニバース会員を増やすのはDDTと東京女子、ガンプロでやっているという感じなので、NOAHはそこをやれていないことが反省点としてあるので。何かしらABEMAでやらない、通常のNOAHではないものでユニバース会員を増やせないかというチャレンジです。

©NOAH

――開けてビックリ玉手箱みたいなところがあって、新しいチャレンジという部分をすごく感じました。次は何が起こるんだろうというネクストの期待値みたいなのが上がる大会になりそうですね。

そうですね。

インタビュアー:山口義徳(プロレスTODAY総監督)

➡後編はこちら

【NOAH武田有弘取締役インタビュー】<後編>人材獲得、団体交流、年末年始に向けた展望を語る

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