小さな赤い実を豊かに実らせる野バラは晩秋を象徴する植物|霜降【二十四節気 暦のレシピ】

明日10月24日から二十四節気は霜降(そうこう)です。

秋の最後の節です。山間には霜が降りはじめました。晩秋を迎える植物は見ているだけで楽しいもの。一年の間に蔦ものは伸びに伸びて野性的な姿となり、実ものは可愛らしく色づきました。

赤や茶、黒など、色も形も個性的な実ものがたくさんありますが、枝ぶりもよく、小さな赤い実を豊かに実らせる野バラは、この季節を象徴する植物です。フレッシュでも、ドライでも、アレンジメントに入れるとぐっと秋らしさが増すので、花材としてもよく使います。

小さな赤い実を豊かに実らせる野バラ

野バラはバラ科バラ属。ノイバラともいわれ、北海道から九州まで広い地域で自生しています。園芸品種のバラをもたらした原種であり、5月から6月に咲く一重咲きの白い花は、いわゆるバラのイメージとはまったく違って素朴で可愛らしい。そしてこの時季になるとラグビーボール形の1センチ弱の小さな赤い実を結実させます。園芸用に品種改良されたバラは実をつけませんが、原種に近いバラは実をつけます。いわゆるローズヒップです。

ローズヒップというとハーブティーが思い浮かびますが、お茶として利用されるローズヒップはカニナバラ (別名はイヌバラ)という品種で日本には自生していません。ヨーロッパ、北西アフリカ、西アジアの原産で、野バラと同じような一重の白や淡いピンク色の花が咲きます。野バラより少し大きい実をつけますが、こちらがローズヒップティーの原料。ビタミンCの宝庫であり、その量はレモンの20〜40倍ともいわれています。抗酸化作用の高いビタミンCの供給源として、風邪予防や肌荒れの炎症を落ち着かせるなど、健康や美容維持に役立つハーブ。穏やかな酸味は、とても飲みやすく、はじめて口にする方でも抵抗なく飲むことができます。

実の中の種子を絞った植物油はローズヒップオイル。肌のハリや弾力など、組織の損傷を回復してくれる必須脂肪酸を多く含み、美容分野で大変重宝されています。

日本に自生している野バラの実はハーブティーではなく、営実(えいじつ)という名の生薬として利用されています。薬効としては利尿、瀉下 (しゃげ・下痢)。効能が強いため使用量には注意が必要です。

東京都調布市にある神代植物公園には、豪華絢爛に咲き誇る園芸種のバラ園の隣に野生種のバラを集めたオールドローズ園があります。ちょうど実のなる時季に訪れたのですが、少しずつ異なる色や形のバラの実の愛らしいことといったら。隣では秋咲きのバラが艶やかに咲いていたのですが、すっかりバラの実の魅力に心奪われてしまいました。花の盛りの時期にはまだ行ったことがないので、次は野生種ならではの花比べをするのが楽しみです。

<暮らしのアイデア>いつものハチミツにハーブで色味と酸味を

ローズヒップとハイビスカスのドライハーブを使ったハチミツ漬けです。ヨーグルトやパン、お茶に入れて、ハーブも丸ごと食べられます。

作り方は、①ハチミツ100㎖、ローズヒップとハイビスカス各小さじ1 1/2 を煮沸消毒した耐熱容器に入れる。②かき混ぜながら50℃の温度で15分湯煎する。③粗熱を取って完成。1週間以内に食べ切りましょう。ハーブを濾したハチミツは1か月保存可能です。
*ハチミツは60℃以上で成分が壊れるので温度が上がりすぎないよう注意しましょう。

【書誌情報】 『二十四節気 暦のレシピ』 猪飼牧子・清水美由紀 著

古くから季節を表す言葉「二十四節気 七十二候」をテーマに、季節の移り変わりを花や植物で感じながら、ものづくりの楽しみを提案。小さな変化を繰り返しながら、季節とともに四季をたどっていく植物。その時季の植物をアレンジメントや料理やおやつに生かしたり、心と体を健やかするハーブやアロマを活用したり、ちょっとしたおもてなしの小物をつくったり。二十四節気を植物とものづくりで体感できるアイデアとレシピ120を紹介します。

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