クロダイ古座川をさかのぼる 中流域で捕獲相次ぐ、おとりアユにも被害か、和歌山

火振り漁の網に掛かったクロダイ(和歌山県古座川町川口で)

 和歌山県古座川町を流れる古座川で、海水魚のクロダイ(チヌ)が河口をさかのぼり、河口から15キロ以上ある中流域の同町洞尾などで目撃されたり、捕獲されたりする事例が増えている。古座川漁協の関係者は「(河口から約5キロの)月野瀬では見かけたことはあるが、ここまで上がってきているとは知らなかった」と驚いている。

 チヌは沿岸域に生息し、河口の汽水域にも入ってくる。雑食性で、小魚や甲殻類、貝類、海藻類などさまざまなものを食べる。

 古座川は七川ダム(古座川町佐田)以外に川を遮る構造物がなく、県が2016年に行った調査では下流域でボラが見つかっている。

 同町洞尾のおとり店によると、過去にはギンガメアジも川を遡上(そじょう)していた例があるという。チヌは9月に入ってから目撃することが増え、アユの友釣りをしていた客が洞尾の川で体長45センチのチヌを釣り上げた。友釣り中にアユのおとりがかまれたり、針を折られたりしたこともあり、チヌによるものとみている。

 このほか、ウナギを捕るための「はえ縄」やアユの火振り漁の網にチヌが掛かっていた。

 チヌがなぜ中流域まで遡上しているのかは不明だが、「今年は今までになく潮が上がってきている」と漁協の組合員は話す。潮がより上流へと上ってくることに伴い、川の環境も変化しているとみられている。

 漁協の大屋敏治組合長は「汽水域がかなり上まで来ている。当面は今のまま河川の環境を維持し、様子を見たい」と話している。

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