WENDY「みんなの居場所になれたら」まるでマンガのような若きロックスターたちの物語──夢のウェンブリー・スタジアムに向けて

平均年齢18.5歳の若き4人組バンドでありながら、70'sや80'sのルーツロックやハードロックを基盤としたロックの今日に至るまでの歴史を純粋無垢に再構築。それを体現するに相応しいロックスター然とした風貌や佇まいも併せ持つニューカマー・WENDYが今夏、待望のメジャーデビューアルバム『Don't waste my YOUTH』をリリースし、本作を携えたワンマンライブを渋谷CLUB QUATTROにて開催した。

<WENDYが結成されるまでの奇跡のロックストーリー>

私が初めてWENDYの4人に出逢ったのは、2022年の春。渋谷でのイベントライブだった。そこで披露された楽曲は全英語詞で、音楽性はレッド・ツェッペリンやザ・ローリング・ストーンズ、エアロスミス、KISS、ブラック・クロウズ、ボン・ジョヴィなど世界中を熱狂させてきたレジェンド級のバンドたちを彷彿とさせるルーツロックやハードロック。それを2020年代を生きる彼らの感性で純粋無垢に再構築したものだった。もちろん驚いた。今の日本のロックシーンにおいてこの音楽性で勝負している若手はおらず、あの時代の熱狂を今一度思い出させてくれる楽曲に歌声や演奏が鳴り響いていたから。

その興奮に包まれたままの状態で終演後の4人と出逢い、彼らにとって人生初となるインタビューをさせて頂く機会に恵まれた。話を聞くと、4人とも前述したバンドたちの音楽をサブスクなどを通して純粋に好きになり、WENDYを結成する前から、もっと言えば4人が出逢う前から愛聴していたという。2020年代に10代の少年たちがあの時代のロックを好きであることだけでも珍しいのに、その稀有なリスナー同士が偶然巡り会ったのは奇跡以外の何物でもないだろう。しかし、それ以上に驚いたのはその巡り会ったきっかけである。

かつて彼らは揃いも揃って世田谷でやんちゃしていた悪ガキで、Skye(vo,g)とSena(dr)、Paul(g)とJohnny(b)、この2組はそれぞれ別のチームでつるんでいたという。以下、その話を初めて聞いたときのインタビューから抜粋。

Skye:俺らは世田谷に住んでいるんですけど、JohnnyとPaulは同じ学校に通っていて……ここからはちょっと説明が難しんですけど(笑)、俺とSenaがいるチームと、JohnnyとPaulがいるチームでちょっと揉め事があって。

Johnny:Johnny&Paul 対 Skye&Senaみたいな。

Skye:殺しに来ようとしていました(笑)。

Johnny:「デカい外国人がいるぞ」という情報が入ってきて、そしたらPaulが血走った目で「その外国人から殺しに行く」みたいな(笑)。

Paul:「一筋縄ではいかない奴がいる」って聞いていたんで、そいつさえ倒してしまえば勝ちだと思ったんです(笑)。

Skye:ただ、俺らのチームの中にJohnnyの知り合いがいたので、ケンカにならないように話し合う流れになって。それで、Johnnyがひとりでやってきて……

Johnny:仲介しに行ったんですよ。

Skye:そしたら、KISSのTシャツを着ていたから「おっ!」と思って。最近はバンドのことを知らずにKISSやAC/DCのTシャツ着ている連中が多いじゃないですか。でも、JohnnyはKISSのツアーTシャツを着ていたから「え、KISS好きなの?」って聞いたら……

Johnny:「大好き。去年、ドーム観に行きました」みたいな(笑)。

Skye:で、仲良くなっちゃったんですよ(笑)。

Johnny:そしたら「バンドやってるんだよね。これ、俺たちの曲」って聴かされて「マジか! すげぇ!」と思って。

Skye:その曲が「HOME」ですね。

--ライブでは必ず披露している曲ですね。

Johnny:それで「ボーカル&ギターとドラムだけでやってるから、今、ベース探してるんだよね」って聞いて、俺はちょっとベースかじってたから「一緒にやりたい」と思ったんですけど、そのときは言い出せなかったんですよ。

Skye:そのときのJohnnyはベースよりラップがメインだったから、俺も声をかけなかったんです。でも「俺らのチームにもハーフがいるんだけど、そいつもめっちゃロック好きだよ」ってPaulを紹介してくれて。そしたら、もうケンカどころじゃなくなって、事が収まっちゃったんですよ(笑)。それで、お互いのチームが合体しちゃったわけです。で、十数人でいつも集まるようになったから、おまわりさんに通報されるようになっちゃって(笑)。

Paul:Johnnyから「(Skyeが)良い曲書いてる」って聞いて、ぶっ潰そうと思っていた相手なのに「え、会ってみたい」みたいな(笑)。で、Johnnyにアポ取ってもらって会ったら、Skyeくんがザ・ローリング・ストーンズの曲を流していて、それで「ストーンズ聴いてるの?」という話からお互いロック好きであることを解り合って……

Johnny:気付いたら、ヴァン・ヘイレンも流れ出して。

Paul:そうそうそう!

Skye:「パナマ」流した(笑)。

Paul:それから仲良くなりました(笑)。

まるで映画やマンガである。潰し合いのケンカをしようとしていた不良同士がたまたまロック好きで、しかも同じバンドが大好きで、そこで聴かされたオリジナル曲に感銘を受け、仲良くなって4人でバンドを組むことになった。「いつの時代のどの国の話なんだよ!?」と思わずツッコんでしまったことを憶えている。

<若きロックスターの才能爆発! 誰もを青春に呼び戻すライブ>

そんな4人のWENDYが純粋に好きなロックを鳴らし、結成からまもなくライブシーンで注目を集めるようになり、インディーズでありながらサマソニをはじめとした大きなフェスやイベントにも呼ばれ、今年の夏に日本を代表するロックバンドが多く在籍するビクターエンタテインメントよりメジャーデビュー(しかも一発目のアルバム『Don't waste my YOUTH』は、ジョン・バティステ『ウィー・アー』でグラミー賞「アルバム・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、ザ・ブラック・キーズのアルバム『Let's Rock』等を手掛けたマーク・ウィットモアをプロデューサーに迎えている)。このストーリーがノンフィクションでなく現実であることに衝撃を受けているし、まだめちゃくちゃ若いバンドではあるが、私は彼らのことを尊敬している。

そんなWENDYのメジャーデビュー後初のワンマンライブには、耳の早いロック好きや音楽業界関係者たちが集結(海外の観客も多く見受けられた)。その期待の眼差しで待つ人々の前へ、Skye(vo,g)、Paul(g)、Johnny(b)、Sena(dr)はロックスター然とした佇まいで登場し、冒頭の4曲(「SCREAM」「Rock n Roll is Back」「Can't stop being BAD」「Addicted」)から会場中を圧倒。そこに響く歌声も演奏もワールドワイド、日本のバンドとは思えない質感と迫力ゆえ当然だ。オーディエンスはもちろん「What's up 渋谷!楽しんでますか!」「最高すぎ! 興奮しすぎてヤバい!」とメンバーも大興奮の面持ちだった。

ライブ中盤では、楽器隊それぞれのソロを披露するくだりもあったのだが、Paulのギターはそれこそ前述した偉大な先人たちのイズムがしっかり反映されており、時にジミー・ペイジ(レッド・ツェッペリン)、時にジョー・ペリー(エアロスミス)といったギタリストたちの顔が見え隠れし、それらを心底楽しそうにアグレッシヴに響かせるものだから聴き手を一切飽きさせない。また、Johnnyのベースはレジェンドロックバンドたちの影響は顕著ながらも、幼い頃にロックと同様に愛聴していたフォークの世界観も内包されているのだろう。その若さからは考えられない妖艶で繊細でダークな音を体言できるプレイが特徴的だった。Senaのドラムに関しては、4人の中でロックに目覚めたのは比較的最近なのだが、それゆえに鳴らす音に自らも高ぶりながら演奏している姿がチャーミングでもあり、とにかくパワフル。そのリズムにバンド全体のテンションが同調していくアンサンブルこそWENDYのライブ最大の魅力とも言えるだろう。

そして、そんな三者三様の若き才能を率いるフロントマン・Skyeのボーカルは、誰よりもロックスター然としていた。個人的にはエリック・マーティン(MR.BIG)を彷彿とさせる声量と色気あるハスキーボイスの持ち主だと思っているのだが、彼はそれに加えて会場中の人々を青春の真っ只中に呼び戻す、永遠のイノセントさがある。これは単純に若くて蒼いという意味ではなく、例えばインタビューで「ウェンブリー・スタジアムに立つのが目標」と真顔で言ってのけるエモーション。仲間を何よりも大切にする少年性。それらをいくつになっても貫き通したままで夢を叶えんとするヒロイズム。そのすべてが歌声に凝縮されているから、彼のボーカルの前では誰もが青春に舞い戻ってしまうのである。

それを証拠にこの日のライブは、客席にいる誰もがキラキラした眼差しで拳を振り上げ、メジャーデビューアルバム『Don't waste my YOUTH』=“俺たちの青春を無駄にするな”にも通ずる、この瞬間を全身全霊で楽しむ姿勢を一貫していた。

<WENDYがみんなの居場所になれたら──>

ライブ終盤、WENDYの4人が仲良くなるきっかけとなった「HOME」を披露する際、Skyeはこう語った。「バンドを結成してもうすぐ3年、このバンドをやるまでちょっとやんちゃなガキだった。コロナもあって自分たちの居場所を無くして、溜まっていたエネルギーを変なことに使っていた。でも、4人共通して好きなものが音楽で、この4人でバンドを組もうって。家族や今日こうして集まってくれている皆さんが僕らの居場所を作ってくれているし、WENDYがみんなの居場所になれたら。これからもWENDYのライブに来てください!」──こんなにもピュアズムに満ちたロックストーリーがあるだろうか。他者と上手くコミュニケーションが取れないマイノリティだったゆえに荒れくれ、孤立していく中で真の仲間たちとロックをきっかけに巡り会い、ようやく自分たちの居場所を見つけた4人だったからこそ、WENDYをみんなの居場所にしてほしいと心の底から思える。そのアティチュードが最後に届けた未発表曲「Pull me in」に至るまですべての楽曲から滲み出ていた。

WENDYはこの先、多くの一人ぼっちたちと自らが鳴らすロックンロールで共鳴していき、やがて巨大なコミュニティを完成させることだろう。それだけの求心力が彼らの音楽にはある。そして、WENDYのもとに集いし仲間たちとアリーナやドーム、さらにはロックの聖地・ウェンブリー・スタジアムに立ったときに言うのである。無邪気な笑顔で「ほら、俺たちは間違ってなかった。やっぱりロックって凄いでしょ?」と。

取材&テキスト:平賀哲雄

◎ライブ【Don't waste my YOUTH】
2023年8月25日(金)渋谷CLUB QUATTRO セットリスト:
01.SCREAM
02.Rock n Roll is Back
03.Can't stop being BAD
04.Addicted
05.instrumental
06.2 beautiful 4 luv
07.Devil's Kiss
08.Johnny Solo(with Sena)
09.Pretty in pink
10.Hollywood
11.Rock my heart
12.Sena solo
13.Loosen up
14.Paul solo(with Sena & Johnny)
15.Chasing a song
16.HOME
17.When U Played Me
18.Runaway
En1.Pull me in

◎メジャーデビューアルバム『Don't waste my YOUTH』リンク
https://wendy.lnk.to/dontwastemyyouth

◎イベント出演情報
ライブイベント【JAILHOUSE presents「檻の中の野郎たち」】
2023年12月25日(月)名古屋 Live House HUCK FINN
OPEN 18:30 / START 19:00
出演:JOHNNY PANDORA / WENDY
https://eplus.jp/sf/detail/3966980001

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