岸田首相の孤立ぶり深刻、参院大敗で不信拡大「2敗なら『投げやり解散』だったかも」

岸田文雄首相(資料写真)

 岸田文雄首相は衆院長崎4区と参院徳島・高知選挙区の国政2補選から一夜明けた23日、国会で所信表明演説を行った。衆院辛勝で全敗を逃れ「岸田おろし」の誘発は防げたものの、参院での大敗には政権内にも「減税のサプライズ演出が無駄だった」(自民関係者)との不信が広がっている。周囲に本音を明かさない岸田首相の深刻な孤立ぶりが浮き彫りとなってきた。

 「2敗だったら『投げやり解散』だったかもしれない」(自民の閣僚経験者)。23日朝の与党関係者の間にはほっとしたムードが漂った。岸田首相も官邸入りの際に「緊迫する国際情勢や物価高から国民生活を守り安心や豊かさを次世代に引き継いでいく。そのために先送りできない課題に向き合うことに専念すべき時だ」と説明。年内の衆院解散を否定した。しかし、苦境に陥るたびに解散権を持ち出す岸田首相の言葉の説得力は乏しいようだ。臨時国会内の解散説はくすぶり続けている。

 選挙直前の21日には全勝戦略の一環として唐突に所得税の減税を表明。18日に麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長に加え、森山裕総務会長ら残る自民四役を含めた初の役員6者会合を開いて説明したが、首相以外のほとんどの参加者が戸惑っていたという。自民幹部は「『1年ほどは年貢をまけてやる。その後は永遠に多く取り立てる』とはまるで悪代官」とし、「徳島・高知の敗北を決定的にし長崎をさらなる苦戦に追い込んだ」と断じる。

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