昭和の食堂車「サシ581」、千葉県移設控え安全祈願祭 青森・八戸市で保管、CFで費用集まる

安全祈願祭の神事の後、食堂車の前でダンスを披露する長坂保育園の園児
食堂車「サシ581-31」の車内
クラウドファンディングが目標額を突破し、千葉県への移設が可能となった食堂車「サシ581ー31」。23日は、雨漏り防止のためかけられていたブルーシートが外された

 高度経済成長時代に日本列島を走った「昭和の食堂車」が保管されてきた青森県八戸市の民有地で23日、車両を鉄道ミュージアム「ポッポの丘」(千葉県いすみ市)に移設する輸送の安全祈願祭が行われた。移設や展示に向けた整備・修繕費調達のため行われたクラウドファンディング(CF)の目標額突破と、食堂車の“第三の人生”への出発を関係者約120人が祝福。鉄道ファンらは食堂車の文化を後世に継承していこうと、気持ちを新たにした。

 食堂車は1972年製造で特急「はつかり」や寝台特急「はくつる」などとして走り、86年に引退した国鉄の特急形寝台電車の食堂車車両「サシ581-31」。現在の所有者は、八戸市根城で障がい者施設「柿の木苑」を運営する社会福祉法人ぶさん会理事長の豊山信子さん(58)。元施設長で旅行好きだった母の故・くにさんが国鉄から取得、隣接する民有地に置き倉庫として使ってきたが、近年、老朽化が進んでいた。

 解体の恐れがあるとの情報を得た「千葉鉄道車両保存会」(大原孝夫会長)が信子さんに車両取得を打診。展示を主導する団体として設立された「583系食堂車保存会」がCFを進めた。CFは6月23日~8月21日の59日間で1264人から2082万3千円が寄せられ、その後も寄付が寄せられているという。

 信子さんは「家族連れが遊ぶポッポの丘で食堂車が慕われる存在になり、楽しく第三の人生を歩んでほしい」と語る。車両は今後、信子さんから583系保存会側に譲渡される。千葉への移設時期について、同会の梅原健一会長(52)=千葉市=は「年内を目指したいが厳しく、来春の方向で調整している」と説明。「CFを通じ、鉄道車両の文化的側面を発信できた。大切に維持し後世へ語り継ぎたい」と語った。

 安全祈願祭では神事の後、三条小1年の時、くにさんが学級担任だったという大島理森元衆院議長がビデオメッセージで「多くの方々の奉仕を頂戴し、(食堂車が)旅立つ。教え子の一人として感謝する」と祝福。豊山家と家族ぐるみで付き合ってきた小林眞前八戸市長が祝辞を述べた。長坂保育園の年長児26人が歌やダンスなどを披露し、盛り上げた。

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