ジェネリック大手の沢井製薬に8年間もの品質検査不正発覚、医薬品不足が加速か

 後発医薬品(ジェネリック)大手の沢井製薬は23日、九州工場(福岡県飯塚市)で製造した胃炎・胃潰瘍治療薬「テプレノンカプセル50ミリグラム(サワイ)」の品質検査で不正があったと発表した。法で定められている販売後数年経った際の品質をチェックする検査のさい、薬剤を別の生産直後のカプセルに詰め替える手口で不正にクリアしていたという。

2010年から複数回正規の検査法で不合格も、不正で合格を「ねつ造」

 この日会見した沢井製薬によると、今年4月に九州工場の品質保証担当者が不正な方法で検査を通過していたことを発見。担当者の報告を受け、同社は外部弁護士らによる特別調査委員会を設置し調査を依頼していた。

 その報告書によると、法で定められた販売後の品質保証の要件に、製造1年後から4年後までの1年ごとにサンプルを用意しておき品質を検査することになっている。2010 年、2013 年及び 2014 年に定められた条件で検査したところ、カプセルの品質に問題があり不合格の結果が出ていたという。しかし、報告を受けた製造管理者、品質管理・保証の担当部署も不合格の結果が出た際に求められる対応を行わず、製造直後の問題ないカプセルに薬剤を詰め替えて検査をやり直すことを指示し合格の結果を出していた。そして幹部層に不合格が出ている旨の報告がなされることはなく、現場もカプセルを詰め替えて検査することの悪質さを自覚することなく、今年4月に着任して半年の担当者が気付いて報告するまで漫然と不正な検査が続けられていたという。その期間は、少なくとも8年もの長期間にわたる。

 この背景には、そもそもこの薬剤の品質保証期限が製造後3年だったことも多分にあると思われるが、そうであったとしても不正な検査を長年続ける理由にはなっておらず、あまりにも無責任な対応だったと非難されても仕方がない状況だ。

 同社では現在この事態を受け、現在市場に出ている品質保証期限内の薬剤について回収を進めているとしている。なおこれまで健康被害の報告は来ていないという。

 同社は後発医薬品(ジェネリック)でトップシェアを争う大手。近年相次いで発覚した小林化工、日医工といった同業他社の不祥事によって医薬品全体の供給不安が広がるなか、業界全体の信頼を担う立場にあった。この不祥事を受け当局は処分をせざるを得ず、現場でも新型コロナやインフルエンザの流行で医薬品不足が叫ばれている中、状況がさらに悪化することが懸念される。

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