アルムナイ採用の導入 人員の量・質確保に好影響

学校の卒業生・同窓生という本来の意味から転じ、企業の離職者・退職者という意味で使われることで、人事領域で定着しはじめている「アルムナイ」。かつてのネガティブな印象はすっかり拭い去られ、前向きな採用の手法として関心は高まるばかりだ。

リクルートが30人以上規模企業の人事担当者2761人の回答を集計した調査で、現在実施する採用手法を尋ねると「ハローワーク」が51.1%で最も多い。以下、「自社採用サイト」が46.3%、「人材紹介」が41.2%、「求人広告メディア」が37.6%で続き、「アルムナイネットワークからの採用」は12.3%にとどまる。


現段階では一部の企業での実施にとどまるが、アルムナイネットワークの活用と直近1~2年の採用状況の関係を示したのが下図だ。まず人員数に関して、アルムナイ採用未実施企業の4.3%が「十分に」、27.3%が「ある程度」と合計31.6%が「採用できている」と回答したのに対し、実施企業は11.3㌽上回る合計42.9%が量の確保を示唆した。


一定の人材レベルが採用できている割合も未実施企業が24.6%で、実施企業が34.5%と9.9㌽上回る。人材の量はもちろん、質についてもアルムナイ採用実施企業のほうが、確保できていることが鮮明になった。

■対象者に「退職理由」問うルールも

実際に、ここにきて多くの企業がアルムナイ採用に着手。特に人手不足業界で顕著で、運輸・交通業では競うように導入が始まっている。

南海電気鉄道(大阪府大阪市)は9月、新たに「カムバック採用」を開始。同社の退職者であって、勤続年数1年以上や就業規則上の定年年齢に達していないこと、選択定年・懲戒解雇での退職でないことなどの要件を全て満たす者に、事前に必要な情報をシステムに登録してもらう。人員募集時に求人情報を案内し、エントリーした者に対し書類選考・面接選考を実施し、採用に至る流れを想定している。

東京地下鉄(東京都台東区)は10月1日、「カムバック制度」を導入。同社の元社員で、育児・介護の理由による退職者のほか、転職などの自己都合退職者で勤務経験3年以上の社員も対象として認める。採用ホームページから再雇用希望を登録・採用し、入社は毎年4月1日の1回に限る。


JR九州(福岡県福岡市)は10月2日、「ハッピーターン採用」の通年エントリーを開始した。再就職希望の退職者で、60歳未満であればエントリーが可能。他社で培った強みを会社の成長に繋げる狙いで、入社時期は原則として4月と10月の年2回としている。

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