明けゆく空、着物で表現 藤原さん(青森・十和田市)、全国手織物公募展グランプリ

グランプリを獲得した藤原さんの作品「しののめの」。明けゆく空をグラデーションで表現している(藤原さん提供)
自宅のアトリエで、横浜町の風景を色合いで表現したショールを織る藤原さん

 駒ケ根シルクミュージアム(長野県駒ケ根市)が主催する手織物の全国コンテスト「第16回現代手織物クラフト公募展」で、青森県十和田市の日本刺しゅう・染織作家の藤原史華さん(52)が織った着物「しののめの」がグランプリの長野県知事賞を受賞した。2017年に続く2度目のグランプリで、藤原さんは「昨年は出展できなかったので、今回は知人や関係者への活動報告のつもりで出した。まさかグランプリとは」と話している。

 同公募展には、全国から着物や反物、帯やタペストリーなど計46点が出展された。グランプリを獲得した藤原さんの作品は紫色の縦糸とピンクや黄色などに染め分けした横糸を用い、アクセントとしてラメを挟み込んで、明けていく朝の空を表現した。大きさの異なる四角形で織りなす市松模様が、さらに大きな市松模様の一部となっている幾何学的なデザインが特徴的。

 長年日本刺しゅうに携わっている藤原さんは、刺しゅうに用いる布に思うような柄や色のものがないと感じ、染め物の技術を学ぶため10年に奈良市の和服専門校に入学。カリキュラムの中で手織りに出合い、卒業後も京都の工房で修業を積んだ。同公募展には度々出展し、17年には海辺を表現した着物「波とハナマス」でグランプリに輝いた。19年はたそがれ時をイメージした片身替わりの「憧憬(どうけい)」で準グランプリの駒ケ根市長賞を受賞している。

 藤原さんは、手織りの魅力について「文系的なイメージを持つ人が多いかもしれないが、実は0と1の2進法を用いた数学的な思考で、理路整然と糸の上げ下げを計算しなければならないロジカルな技術。それでいて、人の手によるぼやけ感やゆらぎ感がアジア的・日本的な非対称の美を醸し出す」と語る。

 同公募展は今回で終了するため、藤原さんは最後のグランプリ受賞者となった。「寂しくなるが、今後も別の公募展を探して出展したい。自分で織った布に刺しゅうを施した作品でエントリーしたい」と意気込んでいる。

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