激動の米国生きた画家 国吉康雄展、24日開幕 茨城県近代美術館 水戸

国吉康雄の作品を解説する才士真司さん=水戸市千波町の県近代美術館

明治期の岡山県に生まれ、米国を代表する画家の一人となった国吉康雄(1889~1953年)の展覧会「国吉康雄展~安眠を妨げる夢」が24日、茨城県水戸市千波町の県近代美術館で開幕する。国吉は、アジア系移民の排斥運動や太平洋戦争など激動の時代の中で、反戦や民主主義への思いを込めて絵筆を握った。憂いを帯びた女性像など約170点が展示され、最新の研究成果を交えて画業の全貌に迫っている。

国吉は、16歳で労働移民として米国西海岸に渡った。夜間高校で美術の才能を見いだされ、米ニューヨークに移住。働きながら美術学校に通った。初期は米国開拓時代を思わせる幻想的な作品を描くが、渡仏と生涯一度の帰国などを経て、画風は変化していく。米国でのアジア系移民の排斥運動や大恐慌、二つの世界大戦という激動の時代を生き、制作活動を続けた。米国では現在、美術家としてだけでなく、社会活動家としても再評価する動きがある。

国吉の作品が体系的に紹介されるのは、県内では今回が初めて。代表作を所蔵する福武財団(香川県)と出身地の岡山県立美術館のコレクションを中心に、憂いに満ちた女性やサーカスの道化師を描いた作品などが一堂に集められた。

県近代美術館で23日、内覧会が開かれた。本展を監修した岡山大准教授の才士真司さんは「国吉の絵は、激動期の米国の中で生まれたことを感じてもらいたい。彼が向き合った問題は、今も道続きにあることを知ってほしい」と呼びかけた。

会期は12月24日まで。

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