南極観測隊に地酒寄贈 茨城・つくばの浦里酒造 11年目「息抜きに飲んで」

浦里酒造店の浦里浩司さん(右)に南極観測隊の任務を説明する隊員ら=つくば市吉沼

南極観測隊員の息抜きに飲んでもらおうと、「霧筑波」の銘柄などで知られる「浦里酒造店」(茨城県つくば市吉沼)が、観測隊に地酒の寄贈を続けている。同市出身の隊員派遣を契機に始め、今年で11年目。隊員が訪問するなど交流も続いており、寄贈で隊員の「ほっと一息」に貢献している。

同店が寄贈を始めたきっかけは、2013年の第55次南極観測越冬隊に派遣された同市出身、塚本健二さん(47)。旧知の仲という同店5代目蔵元の浦里浩司さん(62)は、「(塚本さんが)南極に行くと聞いて驚いた」と振り返り、「地元出身の隊員がいるなら」と贈り始めたという。

11月に出発する第65次隊に寄贈したのは「霧筑波 知可良(ちから)」(1.8リットル)や「霧筑波 山廃特別純米酒」(同)など3種類計30本。

寄贈が結ぶ縁で、隊員との交流も続く。今月18日には、いずれも気象庁職員で第65次隊に参加する屋良朝之さん(30)と斎藤樹さん(29)が同店を訪問。屋良さんは磁場やオーロラの観測、斎藤さんは高位気象観測を担当する。

高層気象台(つくば市)に昨年まで勤務していたという斎藤さんは「愛がこもったお酒が楽しみ。無事に次の隊員にバトンタッチしたい」。地磁気観測所(同県石岡市)に勤務中の屋良さんは「隊員がリフレッシュし、交流を深める一助になる」と、極地で交わす杯に思いを巡らせた。

浦里さんは「昭和基地で飲んでくれるなら酒屋冥利(みょうり)に尽きる。気を付けて」と南極での任務を気遣った。

国立極地研究所によると、第65次隊には19社・団体から寄贈があり、このうち県内は4社・団体。南極で使用する物品は予算の範囲内でそろえるため、広く寄贈の募集をかけることはないが、毎回20~30社から寄贈があるという。

現在は物価高の影響もあり、同研究所は「嗜好(しこう)品までは予算が割けないところもある」としている。酒や食料などは調理隊員が現地で管理し、誕生日や交流会など特別な日に振る舞われる予定。

同研究所の担当者は「宣伝目的で使えず、南極での写真も撮って送ることはできない。本当に『お気持ち』で頂いている」と謝意を示した。

第65次隊に寄贈された品々は既に南極観測船「しらせ」に積み込みを始めており、観測船は来月中旬に出発。隊員たちは来月24日に空路でオーストラリアへ向かい、現地で観測船に乗り込み昭和基地へ向かう。帰国は25年3月の予定。

浦里さんは「向こうは寒いと思うので熱かん向きの酒などを贈った。少しでも息抜きになればうれしい」と話した。

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