衆院長崎4区補選 「激戦」予想も、金子氏7000票差で勝利 末次氏は“法則”クリアできず

初当選から一夜明けた早朝、街頭でお礼の気持ちを伝える金子氏=佐世保市八幡町

 22日投開票された衆院長崎4区補選は、自民新人の金子容三氏(40)が、立憲民主前職の末次精一氏(60)に勝利した。事前の情勢調査では「横一線」「激戦」とされたが、結果は約7千票差。両陣営からは「思った以上に差がついた」との声が多い。本紙の出口調査や両陣営の見方を交え、分析した。
 「戦略を立てて戦う中で、想定の範囲内だった」。一夜明けた23日、金子氏は佐世保市の得票を中心に、こう感想を述べた。陣営では同市は末次氏に及ばないとみて、その「負け方」に注目していた。

 「4千票、いや3千票以内なら他市町の貯金で何とか上に行ける」。そう読んだ陣営は終盤、佐世保市の保守票固めに注力する。結果は856票(1.4ポイント)差の負け。本紙の出口調査でも両者はほぼ同数で並んだ。
 「佐世保で何とか持ちこたえられたから、あの笑顔がある」。22日夜、万歳に沸く選挙事務所の隅で佐世保市議の一人は言った。
 結果が開いた要因には、平戸市の「大健闘」(佐世保市議)もあった。金子氏にとっては祖父、父の代から続く強固な地盤。ただ選挙戦では低迷する内閣支持率などを背景に「せいぜい金子6割、末次4割」との見方もあった。平戸をダブルスコアで勝てたことが金子氏初当選の原動力になった。
 選挙戦を終え、末次氏の総括も低投票率と両市の結果にそそがれる。「佐世保で取れず、平戸で差がつきすぎた」
 では政党の視点で見た場合、末次氏に勝機はなかったのか。出口調査を分析する際、考え方の一つとして引用される「3対6対9の法則」に照らすと、金子氏に追いつき、追い越せなかった理由がうっすらと見えてくる。
 この法則は野党候補が自民候補に勝つ場合、与党支持層の3割、無党派層の6割、野党支持層の9割を固めれば勝てる-との戦略。
 出口調査では、無党派層の6割強が末次氏に投票したと回答。立民、社民、共産層も9割以上を固めた。ただ、協力態勢を敷いた国民民主層からは7割強の支持にとどまり、自民層からは2割強、公明層からは1割に満たない取り込みに終わった。法則に照らすと、末次氏は条件のすべてをクリアすることはできなかった。
 野党協力の「詰めの甘さ」と、過去の選挙のしこりで割れる自民にもう一歩付け入ることができなかったのが勝敗の分水嶺(れい)となった。

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