クマ目撃114件、過去5年で最多 県内4~9月、前年比32件増 11月まで警戒必要

 栃木県内でクマの目撃が増えている。県自然環境課が4~9月に把握したクマの目撃情報は前年同期比32件増の114件で、過去5年で最多だったことが23日までに、同課のまとめで分かった。市町別では日光市が20件増の79件で件数を押し上げ、奥日光での目撃が目立った。奥日光はミズナラが凶作だった。温泉街でごみをあさった形跡も見られ、同市は宿泊施設や観光客らに適切なごみの処理を呼びかけた。専門家はクマが冬眠に入る「11月ごろまで警戒が必要」としている。

◇とちぎのクマ目撃情報

 同課によると、過去5年間の県内の目撃件数(4~9月)は、今年の114件に次いで19年の96件が多い。20年は68件、21年は44件と減少し、22年は82件に増えた。今年の市町別では日光市が圧倒的に多く、那須塩原市15件、那須町6件、佐野5件、栃木3件など、計9市町に及ぶ。けが人は出ていない。

 クマの餌となるミズナラやコナラ、クリなどを含め、県全体のドングリの結実は、おおむね良好という。同課の担当者は「ドングリの生育はそこまで悪くない」と話す。一方、目撃が多い奥日光は、ミズナラの結実が凶作だった。

 日光では特に湯元や中宮祠で目撃が多い。山道や山林で見かける一方、8月~10月頭まで湯元の温泉街で複数の目撃があり、8月下旬には中宮祠の宿泊施設に侵入したケースもあった。

 同市日光行政センターによると、温泉街にごみをあさりに来るクマもいた。担当者は「今年は観光客が増え、ごみの処理が追いつかないほど。ポイ捨てをしないよう、観光客にも呼びかけている」。環境省と県、同市は9月、湯元の旅館などに出向き、適切なごみの処理方法を指導した。

 クマの生態を研究している東京農業大地域環境科学部森林総合科学科の山崎晃司(やまざきこうじ)教授(62)は、全国的な傾向として「市街地付近まで森が回復しその中で頭数が増え、分布が広がっているのではないか」と推測。奥日光でミズナラが凶作だった中、クマが餌を求めて移動せずに止まっている可能性も指摘した。「(冬眠を始める)11月ごろまで警戒が必要」と注意を促した。

宿泊施設内の通路を歩くクマ。防犯カメラ映像に映っていた=8月20日夜、日光市中宮祠(経営者の男性提供)

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