【今週のサンモニ】ジャニー喜多川氏へお墨付きを与えてきたテレビ局|藤原かずえ 『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。統一教会問題とジャニーズ問題の報じ方は、ブーメランになっているようです。

統一教会との接点は問題なのか

2023年10月22日の『サンデーモーニング』で、番組を含めてTBSテレビに強い欺瞞を感じたのは、旧統一教会の解散命令請求に関する話題です。今回は、スタジオ・トークにおける安田菜津紀氏のコメントに着目します。

安田菜津紀氏:政治と教団の結びつきに対する検証は非常に中途半端で、安倍元総理に関してもそうであるし、自民党としても調査ではなく、「点検なんだ」という内輪のアンケートで終わらせようとしていった。細田衆議院議長は退任したが、説明責任から逃げ回っただけで、最終的には教団関連の会合出席は問題がないと開き直ってしまう。このお墨付きを与えてきた側の責任が宙吊りのまま解散命令請求が出されても都合のいい掌返しに見えてしまう。寧ろ請求を機に誰が逃げ切りを図っているのかに光を当て直していく必要があるし、宗教二世の支援はどうしていくのか、法整備はどうしていくのか、積み残された課題も置き去りにしてはならない。

統一教会問題における根本的な疑問は、安倍晋三総理および与党自民党と統一教会に接点があったところで何が問題なのかという点です。

安倍総理も与党自民党も、通常の政治活動である投票の呼びかけのために統一教会と接点があったものの、霊感商法に関与した証拠はなく、むしろ霊感商法に対しては政治的に厳しく対峙したと言えます。

安倍政権と与党自民党は、統一教会に忖度することなく、2018年に消費者契約法の一部を改正する法律を成立させ、実証困難な霊感商法を「不当な勧誘行為」に追加しました。統一協会の霊感商法の被害件数も安倍政権の発足とともに激減しました。

安倍総理も与党自民党も、統一教会が霊感商法を行うにあたって極めて不都合な存在であったのです。安倍政権や自民党議員が旧統一協会に対して、実効的な利益を供与した証拠も事実もありません。

それにもかかわらず、テレビの情報番組やワイドショーは、テロリズムに斃れた安倍総理を統一教会と協働する悪の権化のように貶め、「自業自得」「殺されても当然」「因果応報」などと山上容疑者を擁護する世論の形成に貢献しました。

テレビ局とジャニーズ事務所の関係に置き換えてみると……

そもそも、安倍総理も与党自民党も、神社本庁や創価学会など多数の宗教団体と関係を持っていて、統一教会を宗教団体として特別視してきたわけではありません。一宗教団体である統一教会から会合に招待されれば、他の宗教団体に接するのと同様、国民政党として政策を説明して投票を呼び掛ける機会にしてきたわけです。

政治家の宗教団体の会合への出席をもって「お墨付き」を与えたとするのは、安倍総理を殺害したテロリストと同様、あまりにも短絡的で乱暴な考え方です。

また自民党は、少なくとも、情報番組やワイドショーなどのテレビ側の要求に応じて、教団との接点を具体的に調査して公表することで説明責任を果たしています。政治活動において、教団と接点を持つことは違法行為ではありません。

もし自民党が統一教会に対して政治的便宜(法律や政令)を与えたというのであれば、その立証責任はテレビ側にあります。

さて、ここで注目したいのは、先に示した安田氏のコメントは、面白いように、テレビ局とジャニーズ事務所の関係に置き換えることができます。

テレビ局ジャニーズ事務所の結びつきに対する検証は非常に中途半端で、歴代テレビ局経営者に関してもそうであるし、テレビ局としても外部調査ではなく、検証可能性のない内部調査で終わらせようとしていった。誰も退任せず、説明責任から逃げ回っただけで、最終的にはジャニーズ所属タレントの番組起用は問題がないと開き直ってしまう。このお墨付きを与えてきた側の責任が宙吊りのまま再発防止策の要望が出されても都合のいい掌返しに見えてしまう。寧ろ要望を機に誰が逃げ切りを図っているのかに光を当て直していく必要があるし、性被害者の支援はどうしていくのか、番組基準はどうしていくのか、積み残された課題も置き去りにしてはならない。

テレビ局は、ジャニー喜多川氏が性加害を恒常的に行うための必要条件と寄与条件を作ったと言えます。

テレビ局はジャニーズ事務所のみに忖度し、ジャニー喜多川氏の性加害や不祥事を報道しなかったと同時に、同業他社のタレントをテレビ番組から排除することで、ジャニー喜多川氏に認められなければ男性アイドルのスターになれない環境を構築しました。

統一教会の信者が集まる会合に政治家が出席しただけで「お墨付きを与えてきた」とするのであれば、ジャニーズ所属タレントを毎日20番組もテレビ出演させて全国に放映しているテレビ局は、数十年間365日にわたって数千万人の国民に対してジャニー喜多川氏へお墨付きを与えてきた存在と言えます。

テレビ局とジャニーズ事務所の強固な結びつきによる、ジャニーズ所属タレントの起用や同業他社タレントの排除については、独占禁止法に抵触する可能性が指摘されています

紀藤正樹弁護士、ジャニーズ事務所のテレビ局への圧力報道に「もはや公取案件」と独禁法違反の可能性指摘:中日スポーツ・東京中日スポーツ

証言からわかる独禁法違反

実際、TBSテレビの聞き取り調査によると

「怒らせたらダメ。この1年の間にも、ジュリー氏を通じてキャスティングをめぐる圧力が番組にあった」
「編成のジャニーズ担当の中にはマネジャーからの電話に出るために、夜中に家に帰ってビニール袋に携帯を入れて風呂に入っている人もいた」
「気に入らないことがあると『タレントを引き上げるぞ』と言うため、企画がガラッと変わるなど、振り回された」
「なぜ忖度するかというと番組出演をなくされるのを恐れていたから」
「若い頃から、ベテランのプロデューサーが、ジャニーズ事務所に平身低頭で接するのをずっと見てきた。それを見て育ったので、自然に自分もそうなっていく。うまくやれば次のジャニーズの仕事も来る。なぜみんなジャニーズと仕事をしたいかというと、一つは数字をとりやすいから。そして社内の自分の評価が高まるから」

といった証言が得られています。

これらの証言は、ジャニーズ事務所の圧力とテレビ局の忖度の存在を示しており、独占禁止法で禁じられている次に示すような不公正な取引方法に該当する可能性が考えられます。

ジャニーズ事務所ジュリー前社長が圧力との証言、TBS系「報道特集」のなまなましい検証特集にざわつく:中日スポーツ・東京中日スポーツ

抱き合わせ販売等:相手方に対し、不当に、商品又は役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させ、その他自己又は自己の指定する事業者と取引するように強制すること

排他条件付取引:不当に、相手方が競争者と取引しないことを条件として当該相手方と取引し、競争者の取引の機会を減少させるおそれがあること

当然のことながら、公共の電波を独占するテレビ局は、第三者委員会を構成して事の真偽を明らかにする社会的責任があります。

何よりもこのような問題が存在するにもかかわらず、自らを律することができないテレビが、公共の電波を使って、安倍総理や自民党議員を一方的に吊し上げる魔女裁判をいまだに展開していることは欺瞞に他なりません。

ジャニーズタレントの番組出演がV字回復

ちなみに、番組の編成権・制作権・編集権をもつ唯一の存在であるテレビ局は、経済同友会の新浪代表幹事の発言前後に、広告主企業がジャニーズ事務所との広告契約を次々と停止を発表すると、今度は広告主企業に忖度して、ジャニーズ所属タレントの番組出演を急激に減らしました。

しかしながら、ジャニーズ事務所の2回目の会見というイヴェントを通過すると、素知らぬフリしてジャニーズ所属タレントの番組出演を見事にV字回復させました。テレビは、大衆を欺くために反省を口にしただけで、実際には何の反省もしていないことがこの事実から明らかです。

最後にひと花咲かせてください……!

さて、番組の最後は、2023年10月20日に報じられた関口宏氏の番組降板に関する発言でした。

関口宏氏:この『サンデーモーニング』が36年経ちました。そして私も80になりまして、そろそろ世代交代かということになりました。TBSともいろいろ話をしてきましたが、来年の3月一杯で世代交代することに致しました。あとは膳場貴子さんがやって下さいます。また、3月になりましたら詳しいことをお伝えいたします。引退する訳ではございません。

団塊の世代の兄さん的存在の関口宏氏の勇退は、戦後民主主義を洗脳したテレビ報道の終焉を象徴する出来事であると考えます。テレビが押し付けた戦後レジームから日本社会が解放される時代が遂に到来するものと考えます。

10年前にはご自身の意見を強く主張していた関口氏ですが、最近は「私はわかりませんが」を連発する空気のような存在となっていました。あと半年、できれば誰にも遠慮することなく、ご自身の考えの集大成を主張していただきたく思います。興味深く拝聴させていただきます。

藤原かずえ | Hanadaプラス

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