「売り手市場」で企業必死 和歌山で高校生の就活本格化、求人倍率過去10年で最高

合同企業説明会で生徒にPRする事業所の担当者(中央奥)=17日、和歌山県田辺市新屋敷町の紀南文化会館で

 来年3月に和歌山県内の高校を卒業する生徒の就職活動が本格化している。和歌山労働局によると、8月末時点の求人倍率は2.67倍で、過去10年間で最高を記録した。一方、人手不足の事業所側からは「なかなか思うように応募が集まらない」と嘆く声が聞かれる。

 高校生の就職を巡っては、事業所の選考や内定は9月16日が解禁日。紀南の複数の高校によると、今年は例年より求人が多い。「既に就職希望者の9割が内定を得た」という学校もある。

 和歌山労働局の統計によると、ここ数年は求人数が求職者数を大きく上回っている。新型コロナウイルスの影響が大きかった2020年8月末でも、求人倍率は1.67倍あった。この傾向の背景には、進学する生徒が増えていることや、そもそも子どもの数が減っていることがある。

 和歌山労働局や県経営者協会などは、今月16日に和歌山市で、17日には田辺市新屋敷町の紀南文化会館で、合同企業説明会を開催した。2日間で延べ64事業所が参加したが、生徒の参加は計38人だった。一方、両会場とも事業所の参加希望が多く、キャンセル待ちもあったという。

 田辺会場では17事業所が区画を設けた。各担当者が業務内容や労働条件、福利厚生の内容を紹介。「いつでも見学に来て」と呼びかける光景も見られた。今春に高卒で採用した職員を同席させた事業所もあった。3校の12人が来場した。

 1事業所につき30秒のあいさつの時間が冒頭にあり、「人がいなくてかわいそうだと思ったら、ぜひうちの区画へ来てください」「この10年で入社した10人は誰も辞めていません。名前は売れていないが、充実しています」と自虐的にPRする事業所もあった。

 田辺会場で採用について事業所側に尋ねると「厳しい」「難しい」という答えが多かった。田辺金属工業(田辺市鮎川)は「いろんなところへアプローチしているが、なかなか目に留めてもらえない」。熊野御坊南海バス(新宮市)は「公共交通を維持するためにも手を尽くさないと」と話した。

和歌山の高校新卒者の求人倍率の推移

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