秋田県クマ駆除への抗議電話は「通常の業務できない」ほど 佐竹知事の毅然対応“乱暴な電話にはガチャン”が職員の励みに

※こちらはイメージです

「10月23日現在で46件53名のクマによる人身被害が報告されており、捕獲頭数も1030頭と今年度の捕獲上限に近づいています。冬眠前ということもあってか、10月は前月を大幅に上回るペースで被害が急増。農作業や草刈り、散歩など日常生活を送るなかで襲われたケースが相次いで報告されており、秋田県民にとっては深刻な問題となっています」(全国紙記者)

過去最悪の“クマ被害”が喫緊の課題となっている秋田県。10月23日、佐竹敬久知事(75)が定例記者会見で改めて県民に注意を呼び掛けた。

また来月1日から約3カ月間にわたってクマの狩猟期間に入ることを踏まえ、駆除を担う猟友会が使用する弾丸の購入費用などを県が負担する考えも表明。その上で「まずは数は関係なく」「バンバンやれというわけではないが、見つけたらすぐやる(撃つ)」と、積極的に駆除する方針を語った。

いっぽう、秋田県ではクマの駆除に対する抗議も波紋を呼んだばかり。

今月4日に美郷町で野生のツキノワグマ3頭が作業小屋に立てこもり、地元の猟友会が駆除したと報じられた。すると秋田県庁や美郷町役場に、「クマがかわいそう」「なぜ殺すんだ」と抗議の電話が殺到したというのだ。

記者会見では報道陣から、「職員らに暴言を吐くなどカスタマーハラスメントのような抗議に対してどう対応すべきと考えているか」との質問も上がった。

佐竹知事は「はい、すぐ切ります」と即答し、「当然メールもいっぱいあります。電話は自分の名前を名乗らず、ほとんど何にも言わずにガチャって切られるから。(寄せられた)メールや手紙は当然見ますんで」とコメント。続けて、「電話は一番乱暴なんでよ。ほとんど『わー』(一方的にまくし立てられる)でしょ。これに付き合ってますと、仕事ができません。これ業務妨害です」と私見を述べた。

また報道陣から「切ってもいい電話と話を聞く電話の違い」について問われると、「それは現場の判断です」としつつも「相手が乱暴でなく、しっかり名乗って、どういう用件なのかを伝えてもらえれば、話を聞きますよ。ですが最初から乱暴な態度でこられたら、これは『ガチャン』ですよ」と電話を切るポーズを見せていた。

■佐竹知事の毅然とした発言に、職員たちは「心強かった」

本誌が秋田県庁・総務部広報広聴課にクマの駆除に対する抗議状況について聞くと、「美郷町でクマを駆除した報道があった時には、ほぼ朝から晩まで電話が鳴り止まない状態で対応いたしました」とのこと。

担当者は抗議電話の内容について「動物愛護の気持ちをお持ちの方がほとんどで、『なぜ殺したんだ』というようなご意見が大部分でした」と明かし、「ほとんどが名前を名乗りませんし、総合案内から私どもの方に電話が転送されてくるので相手の電話番号もわかりません。ほとんどがそういったケースでした」と語った。

職員も電話の対応に追われ、「通常の業務ができない状況が続きました」という。

いっぽうで佐竹知事は“乱暴な電話はガチャっと切るべき”と会見で言及したが、担当者は「通常の問い合わせでもこちらから電話を切るといったことはしませんので、まずは意見を聞くという体制で臨んでおりました」と語った。最近では抗議の電話も少なくなってきたこともあり、「今後も一方的に切るといった対応をするつもりはございません」と謙虚な姿勢を示していた。

ただ、佐竹知事の毅然としたコメントは職員たちにとって「心強かった」という。

また抗議の電話が殺到しているとニュースで報じられた直後には、励ましの声もあったという。担当者は「逆に『頑張ってください』や『気にしなくて大丈夫ですよ』といった電話も頂いて、心強かったですし、嬉しかったです。みんな必死に対応していましたが、そうした励ましの声もあって乗り切ることができたと思っています」と、振り返っていた。

秋田県では24日にも新たに4名がクマに襲われ、被害状況は過去最多に。日常生活が脅かされている地元住民のためにも、駆除はやむを得ない判断であると理解すべきだろう。

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