火星の“夜の迷宮”を空から眺めてみよう ESAが探査機のデータで動画を作成

こちらは火星の「Noctis Labyrinthus(ノクティス・ラビリントゥス)」と呼ばれる地域の東部上空からの眺めを視覚化した動画です。“夜の迷宮(迷路)”意味するその名前が示すように、複雑に入り組んだ谷が広がる驚異的な景色をまずはご覧下さい。

【▲ 火星探査機「Mars Express」で取得したデータをもとに視覚化されたノクティス・ラビリントゥスの上空からの眺め】
(Credit: ESA/DLR/FU Berlin & NASA/JPL-Caltech/MSSS)

この動画は欧州宇宙機関(ESA)の火星探査機「Mars Express(マーズ・エクスプレス)」の高解像度ステレオカメラ「HRSC」で取得したデータをもとに作成されました。ノクティス・ラビリントゥスでは幅30km・深さ6kmに達する幾つもの谷が、約1190km(イタリア半島の長さに匹敵)に渡って交差しながら広がっているといいます。

ESAによると、ノクティス・ラビリントゥスの複雑な渓谷が形成されたのは、西側のタルシス(Tarsis)地域で過去に起きた激しい火山活動が原因だと考えられています。火山活動によって広範囲の地殻がアーチ状に持ち上げられ、地殻を伸長する力が働いた結果、地殻の一部が沈み込む地溝が形成されたことで迷路状の地形が形成されたとみられています。渓谷の斜面には大規模な地すべりの痕跡があちこちに残っていたり、風によって砂丘地帯が形成されていたりするといいます。

【▲ 火星探査機「Mars Express」で取得したデータをもとに視覚化されたノクティス・ラビリントゥスの上空からの眺め(動画の一場面)(Credit: ESA/DLR/FU Berlin & NASA/JPL-Caltech/MSSS)】

2003年6月3日に打ち上げられたMars Expressのミッションは、当初予定されていた火星の1年間(地球の約687日)を大きく上回り、2023年で開始から20周年を迎えました。2023年6月には20周年の記念画像も公開されています。ESAによればMars Expressのミッションは少なくとも2026年末まで延長されていて、今後も美しく知見に富んだ火星の画像を得られると期待されています。

関連:ESAが火星探査機マーズ・エクスプレスのミッション20周年記念画像を公開(2023年6月15日)

冒頭の動画はESAから2023年10月10日付で公開されています。

【▲ マリネリス渓谷を中心とした火星の画像。ノクティス・ラビリントゥス(矢印の先)では複雑に入り組んだ谷が広がっている(Credit: ESA/DLR/FU Berlin/G. Michael、矢印は編集部が追加)】

Source

  • ESA \- Fly across Mars’s ‘labyrinth of night’ with Mars Express

文/sorae編集部

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