砺波の私道崩落、県が「救済」 「河川工事用」として復旧

7月の豪雨でのり面が崩落し、通行できなくなった私道=砺波市内

  ●7月豪雨での民家孤立 

 7月の豪雨で砺波市の山あいの民家に通じる「私道」が崩落し、住民が避難を強いられている問題で、富山県が管理する河川の災害復旧工事の一環で、私道が通行可能になる見通しとなった。豪雨災害であっても個人財産への税金投入に理解が得られず、復旧が進まなかった全国でもレアケースの問題は、被災した公共施設の復旧を進める計画の副産物として「救済」される形となり、県は一日も早い復旧を目指す。

 県砺波土木センターによると、崩落で消失したのは砺波市三合新の山本秀雄さん(77)の自宅と県道井栗谷大門線をつなぐ私道約200メートルの一部。7月の豪雨でのり面の泥岩と土砂が幅30~40メートル、斜面の長さ約40メートルの規模で崩れ、高さ約20メートル下の県管理の和田川に流れ込み、一部は川を埋める形で堆積している。崩壊した泥岩と土砂は数千立方メートルとみられる。

 私道の一部欠落で県道と民家をつなぐ唯一の道路が寸断され、山本さん一家は自宅で暮らすことができず、3カ月以上にわたり別の場所で避難を続けている。個人での対応は難しいとして相談を受けた地元や砺波市などが県に河川の復旧工事で対応できないか要望していた。

  ●県砺波土木「公共施設復旧が第一」 

 県が23日に公表した今年度9月補正予算で行う公共事業の箇所付けを受け、県砺波土木センターは和田川に崩落した土砂を撤去し、現場に取り残された不安定土砂を取り除く工事とともにのり面の浸食を防ぐ対策も行う。

 この工事の過程で作業用道路や作業場を確保する必要があり、砂利を敷くことで結果的に山本さん方と県道との行き来が可能になるという。同センターの担当者は「あくまでも個人のために税金を投入することはできない。二次被害を防ぐため、公共施設の復旧を迅速に進めるのが第一目的」と説明する。

 県砺波土木センターは県道側から和田川を挟み、対岸の崩落土砂の排土や斜面対策の工事を行う計画。崩落した土砂や泥岩は水に溶けやすいため、杉林の地権者や所有者から了解を得た段階で速やかに工事に取りかかりたい考えで、担当者は「関係者の了解を得て一日も早く進めたい」と話した。

 山本さん一家は道路の寸断後、家に立ち寄る際に架設の急なはしごを上り下りしており、被災後は車も動かすことができず、そのまま置きっぱなしの状態が続く。県砺波土木センターから説明を受けた山本さんは「冬が来る前に一日も早く通れるようにしてほしい」と要望。その上で、地域の住民が田んぼや畑に行く時などに通っているとして、県側が示した税金を投入できないとの判断に釈然とせず、公共性を伴っているとして、引き続き抜本的な復旧を求めていく考えだ。

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