核融合装置 初プラズマ 茨城・那珂の量研機構、生成に成功

初めてプラズマの生成に成功した量子科学技術研究開発機構那珂研究所のJT-60SA=1月13日、那珂市向山

量子科学技術研究開発機構(量研機構)は24日、茨城県那珂市にある世界最大規模の核融合実験装置「JT-60SA」で、次世代エネルギーと期待される核融合に必要なプラズマの生成に初めて成功したと発表した。量研機構は「大きな一歩」と成果を強調。将来の核融合発電に向けた本格実験を加速させる。

核融合は、太陽内部で起こる反応を地上で再現することから「地上の太陽」と呼ばれる。JT-60SAは、膨大なエネルギーの獲得を目指し、日米欧など7カ国・地域がフランスで建設を進めている国際熱核融合実験炉「ITER(イーター)」の補完装置と位置付けられる。

ITERと同様、トカマク方式と呼ばれる核融合の手法。燃料の重水素を加熱し、強力な磁場でドーナツ状の真空容器内に発生させた高温・高密度のプラズマを封じ込めて維持する技術の実証を目指している。

実験装置のある那珂研究所は5月、全システムが設計通り機能するか確認する試験を開始。超伝導コイルの冷却、通電試験などを行った上でプラズマの生成に取り組んでいた。23日午後5時半ごろ、瞬間的に発生した光を磁場内に閉じ込めたプラズマと確認した。

JT-60SAは欧州連合(EU)と協力し、試験装置「JT60」を約650億円かけて大規模改修した。21年3月には電路接続部に不具合が発生。約2年かけて接続部の絶縁などを強化してきた。東島智副所長(56)は「対策を必死に行ってきた結果、プラズマの生成とシステムの連動を確認することができた」と話した。

量研機構はプラズマを解析した上で、12月1日に詳細を公表する。その後、JT-60SAに燃料を加熱する装置を増強。26年ごろからは原子炉の小型化や経済性の追求を目的に高圧プラズマの生成や維持の実験を行うほか、1億度以上のプラズマを制御し、連続100秒の維持を目指す。

核融合発電は、原子同士をぶつけ、発生したエネルギーを電力に変換する。燃料の重水素などは海水から得られるほか、高レベル放射性廃棄物を出さないことなどから、将来の有望なエネルギーの一つとして期待されている。

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