【NOAH武田有弘取締役インタビュー】<後編>人材獲得、団体交流、年末年始に向けた展望を語る

株式会社CyberFight武田有弘取締役にプロレスリング・ノアの今年これまでの動きから今後についてプロレスTODAYが独占インタビューを行った。

全2回のインタビュー前編では、大激動の2023年、ジェイク・リー参戦からGHC王座戴冠、武藤敬司引退後のNOAHの変化、中嶋勝彦の突然の退団、これまでのNOAHのエピソードを振り返り、新たな興奮が詰まった白GHC復活や新企画「MONDAY MAGIC」のプロジェクトの舞台裏について聞いてみた。

そして今回の後編では、稲村愛輝の海外遠征、女子選手の今後の起用や女子王座の新設、今後の団体交流、年末から来年に向けての施策を伺った。

NOAHの今後の方向性を明らかにする、第2弾インタビュー。

今回は全2回のインタビュー<後編>をお届け。

▼前編はこちら
【NOAH武田有弘取締役インタビュー】<前編>大激動の2023年舞台裏、新たなチャレンジの狙いとは?
https://proresu-today.com/archives/229307/

稲村愛輝の海外遠征に期待する事

©NOAH

――そして稲村選手はいよいよ海外遠征ですけれども。どのような期待を込めていらっしゃいますか。

本人も海外志向が強かったので。本来はコロナがなければもっと早く海外遠征に行って、下手したら既に帰って来ているような時期かもしれないですけれども、2年ぐらい遅くなってしまいました。イギリスでは「試合数こなせるかな?」と思っていましたが、現地のプロモーターが結構試合を入れてくれています。試合数をやればやるほど経験になると思いますので、イギリスに限らず、アメリカでもドイツでもどこでも試合をしてもらっていいと思っています。

――期間的にはわりと長いスタンスを考えていますか?

長いと思います。

――短いとどうしても変わりきらないこともありますけど、長いスタンスであれば大化けも期待できそうですね。

そうですね。

――稲村選手については業界内でものすごく期待されていますが、武田取締役としてはどんな風な期待を込めていらっしゃいますか。

もちろんトップ選手になって帰って来てほしいです。NOAH旗揚げから23年経つんですけれども。他の団体のような成功パターンがまだありません。例えば、新日本プロレスさんを例にするとデビューして海外に行って帰ってきてトップ戦線になるということの繰り返しで、その選手がベテランになって引退してもどんどん新しいスターが生まれる。そういうビジネスの仕組みを作りたいとは思っています。ただその手前の新人選手がたくさん入ってくるというのがなかなかハードルが高くて、拳王選手がYouTubeで(新人オーディション)やってますけれども。我々ももっと力を入れてやらなければいけないと思っています。

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――スカウトはいかがですか?

スカウトもやっていますが、やはりアマレスに偏ってしまいます。

――やはりプロレスというとどうしてもアマレスとの繋がりが強いので、そっち方向にいってしまいがちですね。

そうですね。あとは道場に入ったところでデビューできるまで残るというのがまたさらにハードルが高いですね。ひっそりと道場には何人か入っているんですけれども、残らないですね。そこも少し考え方を変えていかなければいけないとは思います。

――道場改革論みたいな部分ですよね。

そうですね。

――NOAHさんの場合はデビューまでのハードルが高くて厳しい。

練習で厳しい部分は今まで通りでいいと思っているのですが、今どきの若い子は生活面ですよね。みんな相部屋で自由がなく外出もできず、朝から晩までずっと部屋か道場にいるような、制約の多い生活。そんな生活が嫌になってしまうのかもしれないですね。

――感覚的にはそういう感じですよね。今どきの若い子は本当にライトな感覚でルールも緩くしてあげないと続かないんですよね。

そのくらいじゃないとダメなのかなと思いますけれども。

――お笑いの吉本興業でも師匠制度、住み込みとかありましたけれども、NSCという吉本の学校ができてから一気に若い子の芽が開きました。その人たちが活躍できる場所として大阪心斎橋の2丁目劇場を用意したというのがありますので、おそらく今のプロレス界は昔からの慣習を引きずりすぎて若い芽が育っていない最大の要因はそこなのではないかという感じはありますね。

確かにありますね。ある程度、半年、1年近く我慢できればもうそこからは伸びるんですけれども、最初の1カ月ぐらいなんです。極論を言えば最初の1週間ぐらいです。やはりみんなそこを耐えられないですね。

――10年前、20年前と違いますよね。普通のデスクワークをする会社の社員採用ですら今はもう昔とはセクハラ、パワハラの認識も完全に違っていますので。そこがプロレス界だけが時計の針が止まっていて、それがいいという人も業界の中に多くいます。

デビューしてスターになった人は「あの時があるから自分がある」と言いますけれども、難しいところですよね。

――そうなんです。やはりダウンタウンのように今頂点をとっている人がそういう育成の仕方で育っていると業界の発信力もガラッと変わると思います。まだそういう制度からスターになってトップを取っている人がいないのでまだ古いままだと思います。

おっしゃる通りです。

――新人発掘、育成は大変かと思いますが応援しております。

➡次ページ(女子選手の今後の起用や、女子王座の新設について)へ続く

女子選手の今後の起用や、女子王座の新設について

※1月22日横浜アリーナ

――最近、少しずつ枠が広がっている女子選手の今後の起用や女子王座の新設について、いかがでしょうか?

これもあくまでまだチャレンジで、さっきの道場論と一緒で、道場に新人女子選手を入れて育てようというようなところまでは至っていません。今は映像配信の海外ユーザーが4割ぐらいですが、やはりグローバル基準でいくと、「なんであの団体は女性選手がいないんだ?」、WWEのレベルでいくと、「なんで女性のレフリーがいないんだ?」という時代なので、チャレンジでやっている段階です。ただ、やはり女子選手はすごくお客さんを沸かせるなというのを最近思っています。先日も新宿で、通常だと対戦カードを発表してから女子選手を見に来るファンが多いと思いますが、その時は発表せずに女子選手4人が試合をしていました。あの会場はみんなNOAHのファンだったと思いますが、それでも盛り上がっていましたからポテンシャルはありますよね。

――やはり人気、実力も兼ね備えた選手たちがカードに入っているというのもありますし、リング上で魅せるというところで、彼女たちの力がNOAHに新しい風景を創り出してきたような気がします。そういった部分では女子王座の新設というのは、いかがでしょうか?

でも、NOAHという団体の男性レスラーを扱っている理論でいくと、女子王座はできるだけNOAH所属の女子レスラーがいないとなかなか盛り上がらないのではないかなと僕は思います。

――そうですね。やはり自前の所属選手というところがファンの気持ちも一番盛り上がる部分だと思うので、そういったところはまたもしかしたら今後…。

ライセンスアウトで、GHCの名前を貸して何かどこかの団体がやるとか、そういうのはまた別の考え方なんでしょうけど。

――それも面白いですね。

IWGP女子王座はそうじゃないですか。新日本プロレスさんがやっている感はないですよね。

――スターダムでも新日本でも海外でもやるという。そのブランディングのあり方というところでは何か新たな価値感がまた生まれて、新たなファンが出てきてくれたらよりいいですね。

今後の団体交流について

©NOAH

――そして昨今のマット界の状況を鑑みると、新日本プロレス、全日本プロレスを含めていろいろな団体との交流というのが去年から活性化してきていますけれども、これについてはいかがですか。

あまり安易にやるつもりはなくて、ビッグビジネスになるならやってもいいかなという考えです。

――基本は自分たちのみで本当は進めていくというところが基軸なんですね。

はい。苦しいからやるというのはあまりなくて、やるからにはお互いに大きくお金が儲かるビジネスであればやってもいいかなというところです。

――今、新日本から大岩選手も来ていますけれども、それについてはいかがでしょうか。

©NOAH

これはさっき僕が言ったことと変わりますけれども。清宮がG1(G1 CLIMAX)出てという流れなので、フロント側が何か意図したものではなく自然にという感じです。清宮が連れてきて、大岩選手もNOAHで新日本プロレスさんの通常の海外遠征ではなく、国内だけれども海外遠征のような感じでやりたいという。いろいろなパターンがあります。我々が意図してビッグビジネスを作るために交わるパターンもあれば、選手同士の遺恨から自然発生したり、様々なパターンがあります。

――清宮選手と大岩選手のタッグというのは両方の未来も感じられるし、大岩選手が清宮選手から凄く刺激を感じている事も話しているのはいいですね。

そうですね。

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年末から来年に向けての施策

――そしてここからは話せる範囲で、年末から来年に向けての施策という部分で、具体的に何をやるというのは難しいと思いますが、何かこのあたりでファンの皆さんに伝えれるようなメッセージはありますか。

施策というのはないですけれども、先々のスケジュール発表をしている中では1月2日の有明アリーナを大成功させる以外に道はないというところです。

――ここに関しては先ほどもお話が出ましたけれども、隠し玉みたいなものは、もういろいろと?

隠し玉ということはないですけれども、必然的にそこに全てのタイトルマッチの流れが行くだろうなという風には感じています。

――ファンにとってはやはりそこが一番の見せ場、大きなポイントになるので、それに向けて試合を楽しんでくださいという感じですか。

そうですね。もう間違いなくNOAHの年間最大のビッグマッチなので。必然的に一番いいものが提供できるはずです。

――本日は有難うございました。

こちらこそ、これからもNOAHに期待してください。

インタビュアー:山口義徳(プロレスTODAY総監督)

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【NOAH武田有弘取締役インタビュー】<前編>大激動の2023年舞台裏、新たなチャレンジの狙いとは?
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