障害者の夢、歌に 茨城・日立で29日「ピッピコンサート」 仲間や亡き友へ届け

「ピッピコンサート」の本番に向けて練習に励むメンバーら=日立市千石町

心身にハンディのある人やその家族のメッセージを歌にして伝えてきた茨城県日立市の「ピッピコンサート」のアコースティックライブが29日、同市千石町の多賀市民会館で開かれる。共生社会の実現に向けて1985年から続く手作りの音楽会。障害者と健常者が一緒にステージをつくり上げ、当事者のリアルな思いを届ける。

同コンサートは障害者やその家族の「夢や希望」をメロディーに乗せて伝えようと市民有志が集まってスタート。県内の障害者や家族から詩を募集し、厳選した作品にスタッフが曲を付けて発表してきた。これまでに誕生した歌は120曲を超える。

コンサートは聴く人の心に「ピッピ」と届くよう名付けられ、演奏や歌などを担うのは全員ボランティア。数年に1回の大規模コンサートをはじめ、学校や地域でミニ音楽会を実施してきた。今回は同コンサートのテーマソング「鳥になって」など6曲を披露する。

主催する「ピッピスタッフの会」には現在、市内外から約20人が参加。障害者と家族のほか、中高生からシニア世代まで幅広い層で構成する。メンバーは本番に向けて7月から月に2回程度、平日夜に同館で練習を重ねてきた。

脳性まひで車いす生活を送る野口広二さん(42)は、これまで作詞が中心だったが今回は歌い手として参加。「みんなに会うと元気がもらえる」と同県水戸市から電車で練習に通い、本番では「話せない仲間の分まで一生懸命歌う」。

視覚障害があり盲導犬と暮らす佐藤由紀子さん(59)は、今春亡くなった仲間が作詞した「『幸せ』って…」を発表曲に推した。「『選べる』ことの尊さを歌った曲に共感している」といい、約20年ぶりに披露して亡き友にささげる。

ピアノ伴奏の中山泰志さん(67)は30年以上所属し、作曲も手がける。コンサートは「温かく、優しい気持ちをみんなで共有できる場所」という。手話通訳でステージに立つ根本教子さん(44)は「表現者のように気持ちを込めて」歌詞を伝えるつもりだ。

コンサートはコロナ禍の中断を経て昨年から再開。29日は午後2時開演、入場無料。同会代表の鈴木雅明さん(51)は「障害者が暮らしやすい社会について理解が広がる一歩になれば」と願う。

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