工学院大が市民講座「鉄道カレッジ」を12月開講 特別講座では曽根教授が戦後60年の鉄道技術を回顧(東京都新宿区)

特別講座で講演する曽根教授

鉄道事業者や研究者、鉄道業界を志望する学生、そして一般の鉄道愛好家などが一つのテーブルで意見を交わす「工学院大学鉄道カレッジ」が、コロナ禍による約4年間の中断を経て、2023年12月から再開される。

プレイベントとして、2023年10月22日にはJR新宿駅に近い新宿キャンパスで、工学院大の曽根悟客員教授・非常勤特任教授(東京大学名誉教授)による特別講座が開かれ、東海道新幹線開業前夜から現在にいたる、戦後60年の鉄道技術の歩みを回顧した。

東京・新宿と八王子にキャンパスを置く、工学院大は鉄道工学が得意分野。2000年には、東京大学を定年退官した曽根教授を工学部電気工学科に迎え入れた。曽根教授は東京大学工学部で、長年にわたり鉄道人材を育成。マスコミに鉄道コメンテーターとして登場するほか、鉄道趣味誌にも多くの原稿やコラムを寄稿してきた。

再開後の鉄道カレッジで曽根教授の後を継ぐのが、同じ工学部の高木亮教授。マスコミも含めて幅広く活躍する。

鉄道カレッジは有料、無料に分かれ、有料講座は原則、オンラインのリモートで開講する。一方で、タイムリーな話題を取り上げるイベント的な特別講座は、年1回程度のペースで実開催する。

プレイベントの特別講座で講師を務めた曽根客員教授は2023年7月、著書「鉄道技術との60年ー民鉄技術の活用と世界への貢献ー」(A5・184ページ・成山堂書店)を刊行したばかり。鉄道ピクトリアル誌での2021年1月~2022年8月の連載に加筆した書籍は、戦後鉄道技術の通史といえる興味深い内容だ。

本文には、小田急が1960年代に試作した強制車体傾斜装置付き(振り子式)電車など珍しい写真が多数。裏表紙は、JR北海道が2014年に試作したものの、諸事情で未試験のまま解体された幻の特急形気動車・キハ285系の編成写真だ。

特別講演では、著書のサブタイトル「民鉄技術の活用として」の実例として、阪神電気鉄道などが一部駅で実施する降車ホームと乗車ホームを分ける輸送サービス向上策が、海外にも展開可能な有効事例として報告された。

曽根教授は、鉄道のネットワーク充実にも言及。「日本の鉄道は、最高時速260キロ以上の新幹線と、130キロ程度の一般鉄道(在来線)に分かれるが、その中間の160~200キロ程度の中速鉄道にも目を向けるべきだ」と提起した。

記事:上里夏生

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