和歌山県、医師不足解消へ 医療人材紹介会社と協定、オンライン診療も協力

医師の安定的な確保などについて連携協定を結んだ岸本周平知事(手前)と「MRT」の小川智也社長=和歌山県庁で

 和歌山県は、地域や診療科によって医師が不足していることを受け、医療人材の紹介で実績がある「MRT」(東京都渋谷区)と連携して課題の解消に乗り出す。同社のシステムを活用し、医師の安定的な確保や、医療現場へのDX(デジタルによる変革)導入を目指す。

 県によると、県内の医師数は地域や診療科に偏りがあり、新しい感染症の発生時などの対応が課題になっている。同社によると県内の医師の約5割が和歌山市に集中しているという。

 同社は、東京大学医学部付属病院の医師の互助組織をきっかけにできた会社。キャリアアップを目指す医師と、人材を確保したい医療機関をつなげるシステムを運営しており、医師9万人、その他の看護師ら医療従事者29万7千人、1万8千の医療機関が登録している。ミスマッチを起こさず、すぐに勤務できるよう、各医師の経験や技術など細かなデータを保有、医療機関への紹介数は業界トップという。

 同社は、基本的にコンサルタントを介した人材紹介をしてきたが、協定に基づき、直接医師と県が調整できるシステムを実証実験する。そのため、無償で進める予定という。非常勤医師や新しい感染症など発生時の応援医師の確保も図る。

 このほか、オンライン診療などの実現に向け、県内医療機関に無料で助言もする。

 同社社長で医師の小川智也さんが今月、県庁を訪れ、岸本周平知事と協定書に署名した。岸本知事は「地域によっては医師不足で、産科や小児科なども少ない。最先端の知見があり活躍されている御社とタッグを組み、県民の福祉を向上させたい」。小川社長は「医師の偏在は社会問題。県民や今後増加が考えられる観光客にも安心してもらえるよう医師人材を確保し、また自宅でしか療養できない人もオンライン医療で適切な医療を受けられるよう、協力したい」と話した。

 同社は、新型コロナウイルスの健康相談を看護師が受けるコールセンターや、オンライン診療を県から請け負って実施していた。

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