新潟コシヒカリ、あきたこまちの新米が続々等級落ち…値上げ祭りの中、安くて美味しい「二等米」が家計の救世主!

例年以上に猛暑だったこの夏の気候でブランド米が大苦戦(写真:masa44/アフロイメージマート)

記録的な猛暑の影響が、新米にも大きく影響している。10月13日、農林水産省は2023年産の米の作柄について、米どころの新潟県や秋田県など6県が「やや不良」と発表した。

ブランド米「コシヒカリ」の産地である新潟県は、鳥取県と並んで全国で生育状態が最も低いという、予期せぬ事態も起こっている。

お米のスペシャリスト、5ツ星お米マイスターで米屋「米処結米屋」を営む澁谷梨絵さんは、今年の新米の状況を次のように話す。

「この夏は全国的にとにかく暑く、水不足にも悩まされました。とくに新潟県は、1か月以上もほとんど雨が降らない時期があり、8月の最高気温が全国で最も高くなった日が多かったため、影響も大きかった。

お米は昼と夜の温度差が大きいほど美味しく育ちますが、今年は熱帯夜が続いた地域が多く、作柄の悪さが目立ちます」

JA全農にいがたによれば、県産コシヒカリの米の品質を評価する等級は、最高品質の一等米比率が今年は2.6%で、昨年度の75%を大幅に下回り過去最低だという。秋田県の主力品種であるあきたこまちも、二等米や三等米が多くなっている状態だ。

「農家からも、こんなに高温の影響を受けたのは初めてという声を多く聞きます。コシヒカリやあきたこまちは古い品種なので、高温に強くありません。そのため、高温障害といって透明感のない乳白色の米が育ってしまい、見た目が悪くなるため等級が下がっている状態です」(澁谷さん、以下同)

ブランド米の等級が軒並み二等米に格下げられている事態だが、消費者にとってはメリットがあるという。

「等級検査は、米粒の色や斑点米と呼ばれる黒いヤケ、大きさ、欠けなど見た目のみで判断されるので、食味に大きな影響はありません。二等米は比較的安価に出回るため、美味しいブランド米がお得に食べられるとも言えるんです」

しかし、農林水産省が10月17日に発表した2023年産米の9月平均価格は、昨年に比べて10%値上がりしている。秋田のあきたこまちは9%、新潟のコシヒカリは1%の値上がり幅だ。

「実は、燃料費や肥料代、米袋に至るまで生産コストが高騰している関係で、15%から20%以上の値上げが予想されていたんです。それを考えると安いと感じますし、品種によっては昨年より安く出回っているものも。新潟の魚沼産コシヒカリは1%程度安くなっています」

地域差が大きいという今年の新米。安くて美味しい新米を選ぶコツを澁谷さんに教えてもらった。

「米どころを狙うより、地産品種米を選ぶのがおすすめです。その土地に合うように品種改良されていて、この夏の異常気象の影響を受けにくく、味も安定して美味しい。しかも地元の流通に乗るため、値段も安くなっているのが特徴です」

千葉県の『ふさこがね』、富山県の『富富富』、佐賀県の『さがびより』など、あまりなじみのない地産品種ほどコスパの高い可能性大。

では、新米の等級を見分けるにはどうすればよいのだろうか。

「米袋に等級は書いてないため、見た目で判断するしかありません。乳白色が少なく、透明度の高い米が多いものを選ぶといいです」

ただし、安い二等米だからといって味は変わらないないので、工夫次第で充分美味しく食べられるという。

「乳白色の米が多いと柔らかく炊き上がりやすい特徴があります。新米でも年間を通して水加減は同じで良いのですが、今年に限っては、1合に対して大さじ1杯分の水を減らし、浸水時間を1時間未満に設定すると美味しく炊けます」

吸水が良いため、水分量を変えずに炊飯器の「早炊きモード」を使うのもおすすめ。加熱量が強いため、水分をしっかり飛ばしてくれる。

保管にも注意が必要だという。

「乳白色が多い新米は水分を含みやすく、割れやすいので、湿度と乾燥により気を付ける必要があります。ジッパー付き袋や空のペットボトルなど密閉できる容器で、冷蔵庫の野菜室に保管するのがベストです」

この秋は、安くて美味しい等級落ち新米を狙って、上手に節約しよう!

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