建設業界の3Kに3つの変革 国交省大臣官房参事官が語る「かっこいい仕事」

先進的なテクノロジーとインフラ整備に関するセミナー「3次元空間情報基盤によるインフラモニタリングの最前線」が23日、東京・日本橋で開かれた。国土交通省大臣官房参事官の森下博之氏は招待講演で、建設業界には変革が必要だとして「デジタル技術とデータの力でインフラを変え、国土を変え、社会を変える」とDX(デジタル・トランスフォーメーション)に注力する方針を語った。

国土交通省大臣官房参事官の森下博之氏=23日、東京・日本橋

「建設業界の3K(きつい、汚い、危険)を給与がいい、休暇が取れる、希望が持てるという新3Kにする」

森下氏が言葉に力を込めたが、その背景には担い手不足への強い危機感がある。国交省と総務省の調べによると建設業就業者数は1997年度の685万人をピークに減少が続いており、昨年度は97年度の3割減にあたる479万人だった。

多くの業界に共通することだが、建設業界の悩みは特に深い。増加する自然災害への対応や、高度経済成長期に整備されたインフラ設備の老朽化など国民生活の質の低下に直結しかねない問題と向き合っているためだ。しかも作業現場が屋外であることや、大量生産ではなく「一品生産」であることからICT化しにくく、省人化による労働生産性向上が難しい業界だとされてきた。

そこで、国交省がDXの取り組みとして掲げたのが「インフラの作り方」「インフラの使い方」「データの活かし方」の変革だ。

「インフラの作り方」については、従来のICT化の施策「i-Construction(アイコンストラクション)」や、計画・調査・設計の段階から3Dモデルを導入して管理や情報共有を効率化する「BIM/CIM(ビム/シム)」などのデジタル技術をさらに活用して、難しいとされてきた省人化を進めるていく。森下氏は、将来的に遠隔地のオペレーターが現場の重機を管理するシステムを実現したいと話した。すでに岐阜県の新丸山ダムの工事では重機の自動運転などの技術が導入されているという。

「インフラの使い方」では既存のインフラを効率的に利用することを提案した。例えば、ダムの貯水量と降雨の予測情報を組み合わせることで放流する水の量をコントロールして、治水機能の強化と水力発電の促進を図る「ハイブリッドダム」に官民連携で取り組むという。

また「データの活かし方」に関しては、仮想空間に現実世界を再現するデジタルツインの社会実装プロジェクト「Project PLATEAU(プラトー)」や、国交省が蓄積したデータをAPI連携という仕組みで民間事業者が利用しやすくする仕組みなどを用いてイノベーションの創出を促すとした。

これら3つの柱を軸に変革を進める上で、他の業界とのつながりや産学官連携を視野に入れた「組織横断的」な取り組みと、インフラ分野全般でDXを推進するための「分野網羅的」な取り組みが必要だと森下氏は指摘。「国交省は今年を躍進の年に位置づけている。建築産業の新3Kに『かっこいい』を加えて魅力のある4Kの仕事にしていきたい」と語った。

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