【連載コラム】第35回:レンジャーズとDバックスがリーグ優勝 ワールドシリーズは「2年前100敗対決」に

写真:リーグ優勝決定シリーズではMVPに輝いたガルシア

今年のリーグ優勝決定シリーズは両リーグとも第7戦までもつれる熱戦となり、ア・リーグは惜しくも地区優勝を逃して第5シードに回ったレンジャーズ、ナ・リーグは第6シードでポストシーズンに滑り込んだダイヤモンドバックスがリーグ優勝を果たしました。ともに昨季のリーグ王者(アストロズとフィリーズ)を撃破し、ワールドシリーズへ進出。2023年シーズンが始まる前にこの展開を予想できた人は1人もいないのではないでしょうか(もちろん私も全く予想していませんでした)。

ア・リーグ王者のレンジャーズは地区優勝した2016年を最後にポストシーズンの舞台から遠ざかり、2年前の2021年には実に48年ぶりとなるシーズン100敗以上(102敗)を記録しました。しかし、2021年オフにコリー・シーガー、マーカス・セミエン、ジョン・グレイ、2022年オフにジェイコブ・デグロム、ネイサン・イオバルディ、アンドリュー・ヒーニーを獲得するなど積極的な補強を展開し、今夏にはマックス・シャーザーもトレードで獲得。そこにジョシュ・ヤングやエバン・カーターといった若手、そして名将ブルース・ボウチーも加わり、第5シードでポストシーズンに進出すると、レイズを2勝0敗、オリオールズを3勝0敗、アストロズを4勝3敗で次々に撃破し、2011年以来12年ぶり3度目となるリーグ優勝を成し遂げました。

一方、ナ・リーグ王者のダイヤモンドバックスはワイルドカードを獲得した2017年を最後にポストシーズンに進出できず、2021年には球団ワースト記録にあと1と迫る110敗を喫しました。しかし、ヘラルド・ペルドモ、アレック・トーマス、ブランドン・ファート、コービン・キャロルといった若手の台頭で戦力を向上させ、ドールトン・バーショをブルージェイズへ放出してガブリエル・モレノとルルデス・グリエルJr.を獲得したトレードも大成功。今夏にマリナーズからポール・シーウォルドを獲得したトレードでブルペンの強化にも成功し、日本球界でのプレーを経験したトーリ・ロブロ監督(元ヤクルト)のもとで機動力や小技も駆使しながら第6シードでポストシーズンに進出すると、ブリュワーズを2勝0敗、ドジャースを3勝0敗、フィリーズを4勝3敗で次々に破り、球団創設4年目でワールドシリーズ制覇を成し遂げた2001年以来22年ぶり2度目となるリーグ優勝を果たしました。

ワイルドカード同士が対戦するワールドシリーズは、2002年(エンゼルス対ジャイアンツ)、2014年(ロイヤルズ対ジャイアンツ)に続いて今回が3度目。2002年はエンゼルスが球団史上初のワールドシリーズ制覇を成し遂げ、2014年はボウチー監督率いるジャイアンツが5年間で3度目となるワールドシリーズ制覇を果たしました。ボウチー監督は、今回はレンジャーズの監督として、球団史上初のワールドシリーズ制覇を目指すことになります。

ちなみに、100敗以上を喫したシーズンの2年後にワールドシリーズ進出を果たすのは、メジャー史上最短タイ記録。これまでに1914年ブレーブス、1967年レッドソックス、1969年メッツ、2008年レイズが達成しており、レンジャーズとダイヤモンドバックスは史上5チーム目と6チーム目ということになります。もちろん、100敗の2年後にワールドシリーズ進出を果たした2チームによる直接対決は今回が初めてです。

下位から浮上してきたチーム同士によるワールドシリーズといえば、「前年最下位対決」となった1991年のワールドシリーズ(ツインズ対ブレーブス)を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。MLB公式サイトによると、前年の合計勝率は1991年のワールドシリーズが最も低く(.429)、今年はそれに次ぐ歴代2位(.438)だそうです。1991年のワールドシリーズは第7戦までもつれた末に、ツインズ先発のジャック・モリスが10回無失点、10回裏にジーン・ラーキンのタイムリーでツインズがサヨナラ勝ちという劇的なエンディングを迎えました。予想外の「2年前100敗対決」となった今年のワールドシリーズも1991年と同様の熱い戦いを期待したいと思います。

文=MLB.jp 編集長 村田洋輔

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