ついにクラブの悲願であるJ1昇格を成し遂げたFC町田ゼルビア。
黒田剛監督の卓越したチームマネージメントに加え、大胆に敢行してきた大型補強もあり、“夢”を結実させた。
町田の今季の補強において、特に話題となったのが黒田監督にとって青森山田時代の教え子であるバスケス・バイロンの獲得だ。
首位町田、2位東京ヴェルディが、国立競技場で激突する週末に控えたタイミングでの電撃移籍は大きな波紋を呼んだ(※試合は町田が2点を先行するも追いつかれ2-2の引き分け)。
そんなバスケスが、J1昇格を決めた22日、帰ってきたばかりの町田のクラブハウスで取材に応じた。囲みのインタビュー全文をお届け。
――J1昇格おめでとうございます。現在の心境は?
「僕は7月から世間を騒がせた移籍をして、たくさんの批判をもらいながらも…もちろん応援してくれる人もいましたし。そんな中で初めてのシーズン途中の移籍で、正直すごく不安でした。
あくまでも町田が首位に立っているのは僕以外の選手や、今年入ってから携わった選手や監督、町田に携わる本当に皆さんが作ってきたものだったので。言い方はあれですが、僕はヨソから来た他人というか。最初は。その中でやって…もちろん覚悟を持って来たんですけど、正直皆さんにはなかなか言えない不安とか恐怖もありました。
13試合ですかね、今日で僕(※昇格が決まった時点での出場試合数)。13試合が終わって7月から、町田に来た初日から、コーチ陣もそうですし、フロントの人、スタッフみんなが本当に温かく受け入れてくれて、僕のことを。選手もそうです。
そのお陰で苦しくなっても頑張ろうと思えましたし、サッカー的にも正直なところ言えば、ヴェルディとは全く違うサッカー…ヴェルディはポゼッションチームなので、そことは全く違うサッカーでしたけど。今でも馴染んでいるかと言われたら、僕も頑張っているところなのかなとは思っています。
でも明らかに最初の時よりは本当に良くなっていると思いますし、今日もウイングバックで出て。2試合目なんですけど。前半はちょっとチームとしても苦しい展開になりましたが、後半にああやって2点目にも3点目にも絡めたというのは、やっぱりそこは今までになかった良さなのかなというのは思っています。
今日勝って昇格を決めたことには、すごくホッとしています。一番は。ただ『J2優勝』が選手全員の目標なので。今日は喜んで、また次の日曜日に向けて、ホームでシャーレを掲げられるようにやっていきたいと思います。長くなってしまいましたけど(笑)」
――町田に入って最初の試合でアシストを記録。最初から活躍できていたのでは?
「数字的なところだとそうかもしれないですけど、まだまだできると自分の中で思っていますし、まだやらなきゃいけない、もっともっとというのは正直な僕の直感でもありますね、はい」
――高校時代からの恩師、黒田監督には何か今日は言われた?
「まずは『守備から』と声をかけていただいて。まあいつもそうなんですけど、まずはやっぱ『0でいかないと意味がない。だから守備からしっかりやれよ』。攻撃のところはやっぱり『裏に抜けろ』と最近はよく言われています。より高い位置で1対1をしたほうが脅威ですし、ゴールに繋がるのでそこを言われましたね」
――試合後「移籍してきてくれてありがとう」と黒田監督から抱きしめらたりとかはなかった?
「終わった後に監督が横にいたので、『監督、決まりましたね』と言ったら『いや、長かったよー』と言われました(笑)。『大変だったよ』みたいな。
この前の秋田戦の後も上田さん(※上田大貴。昨年まで青森山田中学で監督を務め、今年から町田のアシスタントコーチに就任)とかとちょっと喋っていて。監督が…こんなことを言っていいのか分からないですけど、毎日神社へ行くぐらい『もう寝れない』とずっと言っていたと。
僕からしたら『早く昇格を決めて優勝して楽にさせたい』と思いながらプレーしていましたけど、何かここ最近はちょっと監督がかなり表情もプレッシャーを感じているような表情でした。やっぱり焦りも相当あったのかなとは正直…高校3年間一緒にやっていますし、僕はそう感じてました」
――監督も「毎週高校選手権の決勝が来ているようだ」と言っていた。
「本当ですよね。初めての舞台とも言っていたので、それで昇格できるというのはすごいですけどね。
でも僕もホント、一番移籍の決め手になったのは『黒田監督がいること』でした。正直なところ、こうやって結果に繋がって終わった…とりあえずJ1昇格を決めたのは、僕は黒田監督を信じて良かったなと思います。
高校の時からそうですけど、あの人に僕が裏切られたことは一回もなくて。だからそこの信頼感はなんかやっぱり強くて、どうしても」
――高校時代の監督とプロとしてやる監督で違う?
「良い意味で全く変わらないと思います。やることを徹底させるマネージメント力であったり、選手に伝える言葉であったり。
一つ一つの言葉が本当に選手に多分効くんですよ。ミーティングもそうですけど、青森山田の時から聞いて来た言葉がたまにあります。良い意味で変わらないですし、それが結果に繋がっているのかなと思います」
――嬉しさよりもやっぱりホッとした気持ちが一番?
「そうですね。本当に色々な感情から少し解放されたというか。僕も勝手になんですけど、重圧をちょっと感じていたところもあったので。だからそこはホッとしてます」
――目が赤いので、涙を流したのかなと。
「まあ少し(涙は)出たんですけど…。
でも僕よりも本当、さっきも言いましたけど、僕は7月から入ってまだたった3ヶ月しかいなくて、この町田ゼルビアに。正直なところ僕もそこまで詳しい歴史だったりをまだ学んでいる段階です。僕よりも何年もいる先輩もいますし、それこそ今年の1月にシーズンスタートして、この町田から移籍していった選手も10人近くいると思います。
そして今の選手たちが築いてきたものであって、そこも本当僕は…入ってきたことに対して、みんなも気持ちよく快く受け入れてくれましたし、分からないこともあった中でも常に声を掛けてくれました。本当に感謝の気持ちしかないですね。そこが一番大きいです」
――もしヴェルディもJ1に昇格してくれたら、ちょっと嬉しいとかホッとするみたいな気持ちは?(※東京ヴェルデVは39節終了時点で2位清水と勝ち点2差の4位)
「もちろんヴェルディにいた時もJ1昇格しか目指していなかったので、そこは素直に上がってほしいというのはあります、はい。
こんなことを言ったらまたちょっと…『お前が言うな』と言われてしまうと思うんですが、陰ながらこっそりとちょっと応援します。
まあ僕は伝えているんで。いわきFCもそうですけど、何があってもずっと応援をしています」
町田は今週末、29日(日)14時からツエーゲン金沢と町田GIONスタジアムで対戦。
ホーム最終戦となるこの試合に勝利すれば、町田のJ2初優勝が決まる。
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なお、4位東京ヴェルディはその前日の28日(土)、自動昇格争い生き残りをかけ、3位ジュビロ磐田とのアウェイゲームに臨む。