吉富多美 & 土居裕子 企画「紀伊國屋書店 提携公演 EntertainmentHumanTheater ハッピーバースデー ~命の唄~」開幕

原作の「ハッピーバースデー」は児童書としては異例の累計150万部。フジテレビ開局50周年記念としてドラマ化、またアニメ化もされ話題となり、小中学生に愛読された。原作者 吉富多美と、ミュージカル俳優の土居裕子が企画、オリジナルコメディーに拘り製作し続けた水木英昭プロデュースとタッグを組み舞台化、25日開幕。
軸となる子どもたちのキャスティングは、夏休みの全国オーディションにて選出、イジメや虐待という難しくもあり、教育的、もはや社会的テーマである題材を、高い音楽性とエンターテイメント性豊かな作品に。 音楽を担うのは、水木英昭プロデュースの音楽を長年創り続けている髙木茂治。そして、テーマ音楽を作曲するのは主演の亜季緒。
軸になるのは1組の家族。長男、長女、父母。父は仕事に邁進、子供のことは妻に任せきり。妻は息子は可愛がるが娘に対しては冷淡な態度をとる。息子・直人(川口調)にはケーキを買ってくるのに、娘の誕生日すら忘れている。さらに「あすかは何をやらせてもだめ」「産まなきゃよかった」と言い放つ。「ママ、ひどいよ、怖いよ」とあすか。それからあすかに異変が。言葉が出なくなってしまったのだった。

子供に対して辛く当たる母・静代、あすかは祖父母のところに行き、そこで療養。2人のあすかを想う気持ち、あすかも少しずつ、心が癒されていく。心優しく繊細なあすかは成長する。あすかが出会う人々、学校のクラスメイト、担任の先生、養護学校に通う重度の障害を抱えためぐみ、クラスメイトたち。学校でイジメにあっている金澤順子、辛くて自殺も考えるがあすかの説得により、思いとどまる。

また、後半で母・静代がなぜ、あすかに辛く当たってしまうのか、そのバックボーンも明かされる。そしてあすかの父・裕治(富田 翔)もまた、あすかのことは二の次な考え。銀行員で単身赴任、妻には”上から目線”、静代は会社でもストレスフル、女性上司・なつき(佃井皆美)はきつい言葉で静代に接する、まさに”負の連鎖”。だが、その真逆な”プラスの連鎖”も。あすかが休み時間に養護学校に顔を見せるようになり、2人は親友になり、そこからの愛の輪。

心に抱えた闇、隠していても、それは態度や言動に現れる。それが、誰かを傷つけ、同時に自分自身をも傷つける。だが、そこにとどまっていては、先に進めない。大人もまた、成長し気づきを得る。そして命、あすかがいなかったら順子はどうなっていたのだろうか、と考えると胸が痛む。また、命いくばくもないめぐみ、彼女の存在は周囲に命の尊さを気づかせる。クラスメイトをいじめていた生徒も、自分の行為がいかに愚かだったことを知る。

命、虐待、イジメ、トラウマ、重いテーマ、内容だが、歌を交えながら、湿っぽくならずに進行、音楽は生演奏、時折、白い服を着た人物が登場し、見守る。オーデションで選ばれた子供達、その演技に思わず引き込まれる。歌唱シーン、ミュージカルで活躍する土居裕子の本領発揮、そして芸達者な面々がしっかりとドラマを紡ぐ。ラストは思わず、口角が緩んでしまう。

タイトルの「ハッピーバースデー」、誕生日を祝うこと、それは「生まれてきてくれてハッピー」というメッセージ。いつまでも誕生日を祝えるように、そして生きることの意義、皆、幸せになるために生まれてきたはず。だから「ハッピーバースデー」。公演は29日まで、紀伊國屋ホールにて。

▶STORY
小学生のあすか(上野彩喜/矢野沙羅)は母、静代(亜季緒)から日々言葉の暴力を受けていた。
静代は出来の良いあすかの兄、直人(川口調)と比べ要領の悪い娘のあすかを上手く愛せずにいたのだ。
それでも母に愛されたいと思うあすか…
あすかが11歳の誕生日に兄、直人からも暴言を吐かれる。
そしてその直後、母からも非情な言葉が「ああ、あすかなんて本当に産まなきゃよかった」
そのショックから声を失ってしまう事に…
なぜ静代はあすかに辛くあたるのか。なぜ、あすかを真正面から愛せないのか…。
ついに生まれてこない方がよかったと思うほど追い詰められるあすか。
しかし静養先の祖父母(螢 雪次朗、土居裕子)から受ける無償の愛により、少しずつ心の傷を癒し、そこから出会う人々から多くを学び、別れを経験し成長してゆく。
その姿を目の当たりにする母そして家族達。
そして迎えた翌年のあすかの誕生日…
母と家族は、あすかの為に「ハッピーバースデー」を歌うことができるのか…

概要
日程・会場:2023年10月25日(水)~10月29日(日) 紀伊國屋ホール
出演
亜季緒
富田 翔
田中稔彦
河原田巧也
杉本有美
佃井皆美
石賀和輝
関口満紀枝
原 育美
村田 充
螢 雪次朗
土居裕子 他
原作:青木和雄・吉富多美(金の星社)
構成・脚本・演出:水木英昭
音楽:髙木茂治
テーマ曲作曲:亜季緒
振付:南流石
映像製作:新上博巳(ACファクトリー)
照明:葛生英之(Kiesselbach)
音響:余田崇徳(SOUND MAP)
小道具:髙出裕介
舞台監督:大河原敦
制作:水木英昭プロデュース/原育美
制作協力:鈴木庸子(スーパー・エキセントリック・シアター)
企画:葛川幸恵(神奈川県横浜市立義務教育学校緑園学園後期課程教諭、元横浜市立領家中学校副校長)、吉富多美(「ハッピーバースデー」原作者、 認定NPO法人神奈川子ども未来ファンド副理事長)、土居裕子(俳優)、水木英昭(脚本・演出家・俳優)
主催・製作:合同会社Canossa

公式サイト:https://www.mizu-pro.com/2023happy-bd.html

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