“増税メガネ”岸田首相が目論む新たな増税――「主婦年金廃止」で年15万円負担増

(写真:時事通信)

“増税メガネ”と揶揄される岸田文雄首相(66)。そんな首相が目論むのは、私たち主婦の年金の狙い撃ちだ。さらに“悲しい円安”も家計を直撃してーー。

「(第3号被保険者について)抜本的に制度を変えないといけない」

“増税メガネ”が、暴走宣言か。10月5日、東京都内の視察先でこう述べた岸田文雄首相(66)。年金博士こと社会保険労務士の北村庄吾さんが解説する。

「第3号被保険者(以下、第3号)は、専業主婦の“無年金”を解消するため1986年に始まった制度です。厚生年金に加入している会社員や公務員の配偶者は第3号となり、“年収の壁”を越えなければ、保険料を払わなくても、将来、基礎年金を受給できる制度です。男性が働き、女性は家事、育児、介護を担うことを前提として作られた仕組みでした」

これが、第3号が「主婦の年金」といわれてきた理由だ。しかし、専業主婦世帯は年々減少し、1990年代半ばには共働き世帯が上回るようになった。厚生労働省によると、現在第3号は763万人いるという。

「国は人口減少による人手不足の解消に、専業主婦やパート主婦の労働力を利用したいと考えています。第3号をなくしたいのが本音なのです。しかし、以前は男女であからさまな就業差別はありました。だいぶ改善されたにせよ、今もその傾向は続いています。また、育児や介護で働きたくても外に出られない女性も多くいます。

そんな声は無視して、政府は“女性の社会進出”と耳ざわりのいいことを言って、働かない主婦は“悪”という風潮を作ってきました。『専業主婦優遇』『不公平』を旗印に、岸田首相は’25年に行われる年金制度改正で第3号の廃止に突き進んでいます」(北村さん)

岸田首相が前のめりになれるのは、今年5月に日本最大の労働組合の全国組織「日本労働組合総連合会(連合)」の芳野友子会長(57)が、第3号制度の廃止要請を検討していると発言したことも大きいという。全国紙記者が語る。

「連合の組合員の妻にも、第3号制度の恩恵を受けている専業主婦はたくさんいます。連合は、これまで第3号の廃止を声高に言うようなことはしてきませんでした。しかし、10月6日に2期目の続投が決まった芳野会長は、明らかに第3号を目の敵にしています。

芳野会長は自民党との距離が近く、岸田首相と制度の廃止を画策していると思われてしかたありません。政府としては連合の要請を根拠に、労働者の理解は得られたと宣伝するつもりなのでしょう」

仮に、第3号が廃止されると、サラリーマンの妻は、国民年金の保険料を月1万6520円、年間で約20万円払う必要が生じる。妻に収入がない場合は、夫が妻の保険料を払うことになる。

ただし、保険料は「社会保険料控除」の対象となるので、夫の所得税や住民税の支払額が減るため、実質的な家計での負担額は年間約20万円より少なくなる。しかし、それでも年収400万円世帯で16万8240円、年収600万円の世帯では15万8240円も負担が増えてしまうのだ。

「本来は保険料を支払わなくても受け取れたのに、保険料を負担せねばならず、なおかつ将来受け取る年金額も多少増えるぐらい。何より、この先の見えない物価高の時代に、年16万円も手取りが目減りするインパクトは大きいでしょう」(北村さん)

■男女の賃金格差や待遇差の改善が先

第3号の廃止が抜本的な社会保障対策ならまだわかるが……。

「企業側の人手不足に対応するための経済対策にすぎず、その実態は単なる専業主婦いじめです」

そう語るのは経済アナリストの森永卓郎さんだ。

「そもそも国は第3号は専業主婦優遇ではありません。ところが、『配偶者控除』を縮小するなど“専業主婦いじめ”を繰り返し、無理やり女性を、低賃金で待遇の悪い非正規雇用という労働市場に引っ張り出してきました。そのうえで、国は、正当な賃金を払ってもらえない、適切に処遇されないという女性の声を今まで放置してきたのです」

第3号にとどまるための「働き控え」の対策として、政府は“年収の壁”のひとつである106万円を超えたパート主婦の手取り収入が減少しないよう、10月から企業に助成金を支給する制度などを導入しているが……。

「夫婦がどのような労働分担をするかは、それぞれの家庭が判断すべきです。専業主婦に過重な負担を課すことで、政府が家庭のライフスタイルに介入すべきではありません」(森永さん)

今後は、さらに“主婦いじめ”が加速しそうだと、森永さんが指摘する。

「社会保険料の収入を増やしたい岸田首相にとって、763万人いる第3号が月額1万6520円の保険料を払うことになれば、年約1兆5千億円も社会保険料が増える。岸田首相にとって抜本的な改革とは、専業主婦からの増税。吸い上げられるところから吸い上げようというだけです」

「女性の社会進出」や「不平等の解消」という建て前の向こうに、“増税メガネ”の本音が透けて見えるようだーー。

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