頂上決戦は史上初の「2年前100敗対決」に ワールドシリーズ展望

2年前の2021年シーズン、100敗以上を喫したチームは4つあった。ダイヤモンドバックスとオリオールズが最多の110敗を喫し、レンジャーズは102敗、パイレーツも101敗。しかし今季、パイレーツを除く3チームがプレーオフ進出を果たし、ダイヤモンドバックスとレンジャーズは史上最速タイとなる「100敗シーズンから2年後のワールドシリーズ進出」を達成した。100敗から2年後に頂上決戦までたどり着いたチームはダイヤモンドバックスとレンジャーズを含めて6チーム存在するが、直接対決は史上初めてのことである。

第5シードから勝ち上がってきたレンジャーズと第6シードから勝ち上がってきたダイヤモンドバックスによるワールドシリーズでは、どのような戦いが繰り広げられるのか。まずはプレーオフの両チームの主要スタッツを見てみよう。

◆レンジャーズ
・12試合で9勝3敗(本拠地1勝3敗/敵地8勝0敗)
・1試合平均5.92得点/3.75失点
・打率.265/出塁率.344/長打率.481/OPS.825
・防御率3.67(先発3.62/救援3.72)

◆ダイヤモンドバックス
・12試合で9勝3敗(本拠地3勝1敗/敵地6勝2敗)
・1試合平均4.25得点/3.42失点
・打率.247/出塁率.317/長打率.424/OPS.741
・防御率3.23(先発3.63/救援2.94)

レンジャーズはリーグ優勝決定シリーズで4試合連続アーチを記録するなど史上最多の15打点を叩き出してMVPに輝いたアドリス・ガルシアを中心に、打線が好調を維持。リードオフマンのマーカス・セミエンの不振は気になるが、コリー・シーガー、ミッチ・ガーバーといった主力打者に加え、エバン・カーターとジョシュ・ヤングの新人コンビも持ち味を発揮して打線に厚みを加えている。

一方、ダイヤモンドバックスの打線は「プレーオフ初出場から16試合連続安打」というメジャー新記録を樹立したケテル・マルテの好調さが目立つくらいで、あとは盗塁や送りバントといった小技も絡めながら、打線全体で得点を奪っていくスタイル。大ベテランのエバン・ロンゴリアを除けば、極端な不振に陥っている打者も見当たらず、レンジャーズのような爆発力こそないものの、決して層の薄くない打線になっている。

レンジャーズの先発投手陣は「2本柱とその他大勢」という状況。3番手を担うマックス・シャーザーを「その他大勢」に含めるのは失礼かもしれないが、故障から復帰してロースター入りしたリーグ優勝決定シリーズでは2度の先発で合計6回2/3を投げ、防御率9.45に終わった。実績は十分だが、現状は計算できる先発投手とは言い難い。ジョーダン・モンゴメリーとネイサン・イオバルディの2本柱は素晴らしい働きを見せているが、3番手以降のシャーザー、アンドリュー・ヒーニー、デーン・ダニングらには不安が残る。

ダイヤモンドバックスもレギュラーシーズンではザック・ギャレンとメリル・ケリーの2本柱以外は計算できなかったが、プレーオフに入ってから新人ブランドン・ファートが3番手に定着。ここまで4試合に先発して勝利投手にはなっていないものの、合計16回2/3で防御率2.70(奪三振22/与四球3)と安定した投球を見せている。4番手が不在のため、ブルペンゲームで戦わざるを得ない状況だが、ある程度計算できる先発投手が3人いるのは大きい。

レンジャーズのブルペンはジョシュ・スボーツ、アロルディス・チャップマン、ホセ・レクラークの3人に負担が偏っている。スボーツは8試合で防御率1.04、WHIP0.69という素晴らしい働きを見せているが、10試合に登板しているクローザーのレクラークには疲労が見え始めており、チャップマンは防御率1.42を記録しているものの、WHIP1.42と防御率ほどの安定感はない。これまでの戦いと同様に、ヒーニー、ダニング、マーティン・ペレス、ジョン・グレイといった本来は先発を担う投手たちをリリーフで起用しながら凌いでいくことになりそうだ。

ダイヤモンドバックスはセットアッパーのケビン・ギンケルとクローザーのポール・シーウォルドがともに8試合で防御率0.00と安定感抜群。8試合で防御率2.57のライアン・トンプソンも含め、右腕3人は計算できる。シーガー、ナサニエル・ロウ、カーターといったレンジャーズの左打者を封じるためには、ともに防御率5点台のアンドリュー・サールフランクとジョー・マンティプライの両左腕の復調が必要だろう。

レンジャーズのブルース・ボウチー監督がワールドシリーズ制覇3度の実績を誇るのに対し、ダイヤモンドバックスのトーリ・ロブロ監督は就任1年目の2017年以来6年ぶり2度目のプレーオフ進出であり、ワールドシリーズの舞台はもちろん初めて。経験値では圧倒的な差があるものの、日本球界でのプレーを経験し、状況に合わせて機動力や小技を駆使していくロブロ監督の采配も侮れない。両チームのあいだにそれほど大きな実力差があるわけではなく、両監督の手腕も含め、拮抗した面白いシリーズになる可能性も十分にありそうだ。

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