「東京ドラマアウォード2023」グランプリは「ブラッシュアップライフ」。川口春奈、目黒蓮、夏帆は「silent」で個人賞受賞

作品の質の高さだけではなく、“市場性”“商業性”にスポットを当て、世界水準で海外に売れる可能性が高い優秀なテレビドラマおよび、その出演者やスタッフを表彰する「東京ドラマアウォード2023」授賞式が開催。小栗旬、川口春奈、目黒蓮、夏帆、バカリズム、木南晴夏、永尾柚乃、上坂樹里らが登壇した。

最初は個人賞の表彰で、助演女優賞は「silent」(フジテレビ系)の夏帆が受賞した。司会の石坂浩二から「演じる役ごとに別人に見える」と言われた夏帆は、「本当ですか? それはすごくうれしいです。自分の目指すところでもあるので」と素直に喜びを表現。「お芝居をする時に心掛けていることは?」と聞かれると、「“ちゃんと役として生きる”ということは、常に意識して心掛けています」と答えた。

助演男優賞には、同じく「silent」の目黒。石坂から「難しい役でしたね」と投げ掛けられると、「そうですね。でも佐倉想くんという役を演じていて、気持ちが重なる部分がすごくありました」と応じ、さらに「特に1話のラストシーンが素晴らしかった」と褒められると、「うれしいです。ありがとうございます」と丁寧に頭を下げた。

そして、主演女優賞は同じく「silent」の川口が受賞。ここまで3連続で「silent」のキャストということで、作品の強さを印象づけた。ヒロイン・青羽紬を演じた川口は「演じる上で、何か計算はされましたか?」と聞かれ、「いや、自分は不器用なので、皆さんのお芝居を受けて、感じるがままに、思うがままに演じさせていただきました」と話した。「(相手役の)目黒蓮さんのお芝居はどうでしたか?」との問いには、「すごくパワフルで、受け取るものがものすごく大きくて、紬という自分のキャラクターも引き出してもらいました。本当に皆さんの熱量がものすごい撮影現場でした」と充実した撮影の日々を振り返った。

主演男優賞には、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(NHK総合ほか)の小栗が輝いた。演じた北条義時について「最初は翻弄(ほんろう)される若者でしたが、そこから源頼朝(大泉洋)亡き後、ひたすら鎌倉のことを背負って生きていくという役でした」と回顧し、1979年の大河ドラマ「草燃える」で頼朝を演じた石坂に対して「石坂さんと同じ時代を生きさせていただきました」と笑顔を見せた。「後半から声を変えませんでしたか?」と聞かれると、「そうです。少し年をとってから。それは最初からずっと考えながらやっていました。演じた期間が長かったですが、いろんなことにチャレンジできて楽しかったです」と声を弾ませた。

主題歌賞は、Official髭男dism「Subtitle」で、またも「silent」関連の受賞だ。本人たちは欠席だったため、手紙が読み上げられた。「このたびは素晴らしい賞をいただき、大変光栄に思っております。『Subtitle』を制作してから1年がたち、自分たちも大切に歌ってきましたが、この楽曲に思いを重ねてくださる方々がたくさんいらっしゃることに感謝が増すばかりです。『silent』という素晴らしいドラマにこの楽曲を書き下ろすことができたことも、バンドとして大きな思い出、そして誇りとなりました」とメッセージを寄せた。

続いて、脚本賞は「ブラッシュアップライフ」(日本テレビ系)のバカリズムが受賞。登壇すると満面の笑みでトロフィーを掲げ、報道陣による撮影に応じた。石坂から「このドラマ、びっくりしました。死ぬのは1回だと思っていたから…」と感想を告げられると、「あぁ、こんなに何回も繰り返すとはね」と笑顔に。

今回の作品作りについ、バカリズムは「自分も20年以上コントを作っていますので、(脚本作りには)その経験がかなり生きていると思います。今回もコントの延長線上で書きました。最初に『人生を何回も繰り返す』という設定がありまして。で、タイムリープものって、割と『人生の途中からやり直す』ってパターンが多かったけれど、これを『生まれたところから毎回やり直さなきゃいけない』となったら結構面倒くさいなって(笑)。これを成立させるのは大変ですけど、逆に『じゃあ、やってみよう』となりました。『意識がある状態で新生児からやり直すと、結構気付くこともあるんだろうな』『ただただそこで寝てなきゃいけなかったりするんだろうな』というところから想像を膨らませて書かせてもらいました」と明かした。

演出賞には「silent」の風間太樹氏が選ばれ、「今回の演出は3人で担当しました。シナリオを作る過程で一緒に協議し合ったり、できるだけ自分の撮影じゃない現場にも行くようにしたりして、コミュニケーションは頻繁に取っていたと思います。1話の演出は僕ですが、各キャラクターの背景など、1話から共通認識を持って撮影に挑みました。まず魅力的な本があり、魅力的な俳優がいて、彼らから生まれ出てくるものを空気ごと撮ってあげたいという気持ちで撮影していました」とコメントした。

ローカル・ドラマ賞「弁当屋さんのおもてなし」(北海道テレビ放送)の受賞に続いて、作品賞(単発ドラマ部門)の発表へ。優秀賞には「未解決事件 File.09 松本清張と『小説 帝銀事件』」「生理のおじさんとその娘」(ともにNHK総合)、「神の手」(テレビ東京系)、「監察医 朝顔2022スペシャル」(フジテレビ系)の4作品が選ばれ、さらに、グランプリには「TOKYO MER~走る緊急救命室『隅田川ミッション』」(TBS系)が輝いた。

「生理のおじさんとその娘」で、主人公・光橋幸男(原田泰造)の娘・花に扮(ふん)した上坂樹里は、「まずこの作品のテーマを聞いた時、すごく挑戦的な内容だと思いました。撮影前にキャスト、スタッフの皆さんと生理について講習を受けて、全員一丸となって撮影できました。私自身も学ぶところが多い現場でした」と語った。

作品賞(連続ドラマ部門)では、「鎌倉殿の13人」、「星降る夜に」(テレビ朝日系)、「silent」、「エルピス-希望、あるいは災い-」(フジテレビ系=関西テレビ制作)、「フェンス」(WOWOW)の5作品が優秀賞に選ばれた。これによって「silent」は、なんと6冠を制覇。川口、目黒、夏帆のキャスト3人がそろって登場し、喜びを分かち合った。

名作が並ぶ中、「ブラッシュアップライフ」がグランプリとなった。主演を務めた安藤サクラは都合で欠席のため、ビデオメッセージで登場。「このたびは主演させていただいた『ブラッシュアップライフ』で、とんでもなく素晴らしい賞をいただいて、ものすごくうれしいです。まさに自分の人生がとてもブラッシュアップされた出会いだと思います。初めて民放の連ドラで主演させていただいて、すごくドラマが大好きになりました。より視聴者の皆さんとの距離が近くなったことを感じますし、仲間が増えた気分で楽しいです」と喜びを伝える映像が流された。

安藤らしい幸せいっぱいのコメントに続き、ヒロイン・近藤麻美(安藤)の親友・米川美穂役を演じた木南は、「この作品、本当に楽しかったです。安藤サクラちゃん、夏帆ちゃんと私、3人のグループから話が始まっていくんですけど、私たちのセリフが長回しで、本当にず~っとただただ会話しているような…。お芝居とリアルの境界線が分かんなくなる感覚でした。そんなに緊張感もなくて、ず~っとリラックスしていられるような現場でしたね。そのセリフを書いてくださったバカリズムさんは、本当にすごいなと思っています」と撮影中のエピソードを披露した。

この日の授賞式が最高に盛り上がる中、ヒロイン・麻美の子ども時代を演じた永尾が「言い残したことがあったんですけど…」と発言。すかさず石坂がマイクを向けると「主役の安藤サクラです」と大ボケをかまし、オーディエンスは大爆笑に包まれた。

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